チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
同名のノンフィクション小説を原作に制作された作品。主演はトム・ハンクス。ジュリア・ロバーツはトム・ハンクスが演じる議員の支援者として登場している。トム・ハンクスは好きな俳優の一人でしたが、どうしても都合がつかず劇場はスルー。やっとDVDで鑑賞です。
>>『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』公式サイト
アメリカらしいなぁ・・・
酒好きで、美人秘書軍団“チャーリーズ・エンジェル”を従えるチャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)は、テレビでソ連のアフガニスタン侵攻を知り、アフガニスタンに対する米国の支援金を倍に引き上げた。が、その額はたったの一千万ドル。
一方テキサス州有数のセレブ、ジョアン・ヘリング(ジュリア・ロバーツ)はソ連のアフガニスタン侵攻を、共産主義による信仰の迫害と受け止め、これを何とか撤退させようと考えていた。ジョアンはチャーリーをたき付けて、パキスタンに視察に行かせる。
チャーリーがそこで見たものは、支援物資を奪い合う子供たち、手足を吹き飛ばされた子供たちだった。何としてもソ連をアフガニスタンから追い払う、そのためにはアフガニスタンでソ連と戦っているムジャヒディンに対する支援を拡大しなければならない、チャーリーは心に誓ったのだった。
良くも悪くもアメリカらしい映画です。「9.11の原点を描いた-」という触れ込みですが、それは作品そのものだけ観ても解りません。詳しくは公式サイトを見てもらったほうが良いと思います。
しかし・・・、冷戦そのものを知らない若い世代の人たちにとって、予備知識なしにこの映画の中で語られていることを理解するのは難しいと思いました。今のロシアをみていても当時のソ連の脅威はちょっと想像つかないでしょうしね・・・。CIAのスパイ役でガスト・アヴラコトス(フィリップ・シーモア・ホフマン)というのが出てきますが、いわゆる“007的な”スパイではありません。
この映画でのCIAは戦争の裏に暗躍する組織で、実際により近い描かれ方をしています。そもそも何でアフガニスタンを支援するのにパキスタンが出てくるのか。当時のパキスタンはクーデターでジア政権が出来たばかりで、国情も安定しておらず、その上ソ連の脅威の最前線に晒されていました。同じイスラム教国のアフガニスタンがそのソ連に蹂躙されている・・・。
自国に対するソ連の脅威を取り除くためにもアメリカの力が必要だ、ということになります。逆にアメリカからすれば、ソ連つまり共産主義の南進を止めるためにもパキスタンに、あるいは本作のようにパキスタンを通じてアフガニスタンのムジャヒディンを支援する必要があった訳です。
最終的にソ連はアフガニスタンから撤退し、その後冷戦は終結します。チャーリーは戦後のアフガニスタンに学校を建設しようとしますが、そのための予算は認められませんでした。これをもって最後の字幕で「最後にしくじった」と出ていますが、それはどうかなと思います。そもそも最初からしくじってるんですよね。
チャーリーはアフガニスタンの国民はアメリカが支援していたことを知らないと言っていますが、常識的に考えてありえないでしょう。(笑)本作中でもアメリカは武器を支援すると民衆を前に演説するシーンが出てきます。そもそもムジャヒディンとはいっても要はゲリラです。彼らはアメリカからの支援を当然知っています。それを全く他人に話さないほどかん口令しかれていたとは思えません。
逆に学校を建てていたとしても情勢は変わらなかったと思います。その時のゲリラが、今度はアメリカの敵に回っているんですから。
とまあこのように、凄く政治的なメッセージが含まれた映画で、娯楽として“楽しむ”作品ではないと思います。コトが政治的な話になってしまうと人によって意見は多種多様。議論してもきりがないですから。願わくば、次回作は映画の中身について“あそこがよかった、あそこがだめだ、いやそんなことないよ”と議論できるような作品を制作して欲しいと思います。
個人的オススメ度(予告編のイメージとは大違いw)
| 固定リンク
最近のコメント