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2008年12月30日 (火)

砂時計

Photo 子供時代の杏を夏帆が、大人になった杏を松下奈緒が演じるダブル主演。相手役の大吾も子供時代を池松壮亮、大人を井坂俊哉が演じている。元々は同名の漫画原作だが、先にTBSの昼ドラで放送、その後本作が制作された。主題歌「帰りたくなったよ」があまりにも良いのでそれにつられての鑑賞です。

>>『砂時計』公式サイト


ドラマの重厚さはどこへ?

両親が離婚し、母・美和子(戸田菜穂)に連れられて、美和子の故郷の村に帰ってきた杏(夏帆)。最初は戸惑いを覚えながらも、大吾(池松壮亮)や藤(塚田健太)、椎香(岡本杏理)らと友達になることで次第に村にも馴染んでいく。しかしある夜、美和子は杏を残し自殺してしまった。深く傷ついた杏の心を癒してくれたのは大吾だった。2人はやがて付き合うようになるが、ある日東京から杏の父親が迎えに来る。悩んだ末に東京に戻る決意を固める杏。杏は大吾に母の形見の砂時計を託しで東京に戻っていった。夏休み、田舎で大吾と久しぶりの再会を果たすも、離れていた時間と距離は2人の心に微妙な擦れ違いをもたらし始めていた。

10年後杏(松下奈緒)は婚約者を伴い田舎の祖母を訪れる。同窓会で大吾(井坂俊哉)と再会し、大吾は杏が東京に戻る時に託された砂時計を返す。何故あんな別れ方をしてしまったんだろう・・・、自問自答する杏。東京から大吾に会いに来た10年前、杏は自分の存在が大吾を押しつぶしてしまうと思い、突然別れを切り出したのだった。今もその時の大吾が自分を呼ぶ声ははっきりと覚えていた。

東京に戻り婚約者と結婚式の準備をする毎日。しかし杏の心はどこか晴れない。そんな杏の気持ちに気付く婚約者。遂には婚約を破棄されてしまう。また幸せは遠ざかってしまった・・・。杏の足が自然に向いたのは母と訪れたあの砂浜だった-。

ドラマは30分枠とはいえ全60回。それと同じ内容を2時間の映画に求めるのは無理があるにせよ、あまりにも薄っぺらなストーリー展開にはちょっとウンザリ。そもそもストーリー自体は初恋をずっと心に抱き続けた2人の物語なので、細かい出来事、大人になっていく過程での気持ちの変化、或いは他の男性、女性とのかかわり等をしっかりと描かないと単なる“よくある話”になってしまうと思います。本作はとにもかくにもラストの

「今度は俺を幸せにしてよ。」
「誰が?」
「お前名前は?」
「水瀬杏。」
「じゃあ杏が。」

このシーンにたどり着くために、途中を組み立てているといってもいいかも知れません。この会話はかなりのキーポイントで、杏と大吾の出会いのシーンでも使われています。要は最初から“出会い”と“結末”この2点だけが確立していて、間は要所要所のエピソードを抜き出しただけだと思われます。重要なのは過程なのに、そこをはしょってしまったんで、正直言って杏のことを「何この女?バカじゃねぇの?勝手なことばっかり言いやがって。」と思ってしまう自分がいたり。

本作の場合、時間の経過で環境が大きく変わるのは杏の方なのですが、残念ながらその間の気持ちの変化を演じるには夏帆ではやや力不足。しかも、大吾に対する気持ちの変化の部分を、気を失っている間の夢で表現してしまっては、観客を納得させられないと思います。まあこれは脚本の問題なので、夏帆が悪い訳ではないんですが。

対して大吾役の池松壮亮は非常に良い演技をしていました。局面ごとの杏との心のつながり、或いは彼なりの悩みが観ている側に伝わってきます。余談ですが、彼は本作の後『DIVE!!』で主演をつとめています。ちょっと観ようか迷っていた作品でしたが、改めて鑑賞してみたいと思います。

大人の杏・松下奈緒と大吾・井坂俊哉ですが、今回はどちらかといえば子供時代の話がメインなのでどうしても子供時代を演じた俳優に合わせる必要があったのではないかと思われます。その点、井坂俊哉は上手く合わせていましたね。松下奈緒は・・・、大人を意識しすぎたように感じました。

いずれにしても、この薄っぺらな話では感情移入も何もありません。感動で涙どころか観終わったあとには徒労感の残る作品でした。

個人的オススメ度Photo(『ちいさな恋ものがたり』とチラシの構図が似すぎ!)

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