つぐない
昨年のアカデミー賞7部門ノミネートし作曲賞を受賞した作品。様々なレビューでも非常に高評価を得ていました。出演はジェームズ・マカヴォイとキーラ・ナイトレイ。ジェームズ・マカヴォイの最新作は当ブログでも紹介した『ウォンテッド』です。本年一発目の鑑賞&レビュー、よろしくお願いします。
>>『つぐない』goo映画
例え子供でも許されないことがある
政府官僚の娘・ブライオニー・タリス(シアーシャ・ローナン)は姉・セシーリア(キーラ・ナイトレイ)と家の使用人の息子ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)が庭で言い争いをしているのを目撃する。ただならぬ雰囲気に、幼いブライオニーはロビーの行動を怪しむようになる。ある日、ロビーはタリス家の会食に招かれるが、その時に庭での言い争いをセシーリアに謝ろうと手紙を書いて持っていき、ブライオニーに渡してくれるように頼んだ。しかし、誤って自身の妄想をつづった手紙を渡してしまったことが後々彼の首を絞めることになる。
会食の前、セシーリアに手紙の件を詫びるロビー。しかし実はセシーリアとロビーは互いに惹かれあっていたのだった。その事実に気付いた2人は図書室で関係を結ぶ。それを目撃してしまうブライオニー。庭での言い争い、妄想をつづった手紙、そして図書室での出来事。ブライオニーは姉が襲われていたのだと思い込む。そんな折、タリす家の敷地内で少女がレイプされる事件が起こった。そして、ブライオニーは現場で見た人物をロビーだったと証言する。ロビーは逮捕され刑務所に送られた。
5年後、ロビーは戦場に、そしてセシーリアとブライオニーは看護婦になっていた。ブライオニーはあの時に見た人物がロビーではなかったことに気付くが時既に遅し。ブライオニーによって引き裂かれた2人の仲は、今は戦争によって引き裂かれていた。意を決したブライオニーは姉の元を訪れる・・・。
噂にたがわぬ良作。非常に深い話でした。ブライオニーの証言は結果として“嘘”になるのですが、子供特有の思い込み、そして姉と自分を同じように扱って欲しいという“背伸び”、そしてこれが一番重要だと思うのですが、ブライオニーがロビーのことを好きだったということ、つまり姉に対する無意識の嫉妬が悲劇の発端となる訳です。
子供のたった一言が、他人の人生をめちゃくちゃにしてしまうこともある。劇中のブライオニーは確かに表現力豊かな女の子として描かれていますが、別に特別変わった子ではなく、極普通の言うなれば“おませな”女の子です。つまり、洋の東西を問わず現実として起こりそうだという点が非常に怖く感じました。もちろん、そう簡単にたった一人の子供の証言と妄想をつづった手紙程度ではで刑務所送りにはならないでしょうが、『それでも僕はやってない』的な事実もありますしね。
演出的には結果を先に見せて後にその結果に到るまでの過程を描くという形が何度か使われています。もっともこれはそれほど珍しい手法ではないですが。ただ、それがなんでそういう手法になったのか、ネタばらしになりますが、実は死を目前にしたブライオニーが2人に対する“つぐない”として書いた小説を映画にしたという・・・、いや正確には映像で観せたという設定だったから、だから先述よのような観せ方になった、これには少し虚を突かれました。
観客の側は当然ロビーが犯人でないことは解っています。私などは“このガキふざけんな、だから子供はきらいなんだ!あぁ、ムカツク!”と思って観ていた位です。人によって程度の差こそあれ抱いたであろうその気持ちを、作品の最後で見事に晴らしてくれています。ロビーもセシーリアもブライオニーのことを許しません。ロビーに到っては「首をへし折るか、ここ(アパート)から突き落とすか、どっちで殺してやろうか-」というようなことまで言っています。
ところが最後のブライオニーの告白では、彼女はセシーリアのアパートには行けなかった。だからその部分は創作したと語っているではないですか。彼女はそう言われても仕方ないと思っていた訳です。つまりその位じぶんの犯した罪の重さを認識していたということです。やられました。やられたというのは、“そうくるか”という意味ではなく、正直「ムカツク女だ、殺されちまえ!」と思っていた自分の気持ちを全て劇中のブライオニーに見透かされた上で「やっぱりあなたもそう思うわよね。」というストーリーが展開されたこと、すなわち本作の手のひらで見事に転がされていたということです。
しかしブライオニーの“つぐない”は自分を許さないことにある訳ではありません。彼女が劇中で語った「I gave them the happydays.」(贈られたのは幸せな日々です。)これが本当の“つぐない”なのですが、それが何なのかはご自分でご覧になることをお勧めします。
個人的お勧め度(ブライオニー役の3人はほんとに良く似てます。笑)
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