ハンティング・パーティー
主演はリチャード・ギア。共演のテレンス・ハワードは最近では『アイアンマン』が記憶に新しい。監督・脚本はエミー賞受賞監督のリチャード・シェパード。本作は雑誌「Esqire」に掲載された記事「ひと夏の体験」を原案に制作されたそうだが、基本的にはフィクション。サラエボ紛争を舞台にした作品はアメリカ映画としては珍しい。中東モノは多いんですけどね。(苦笑)
>>『ハンティング・パーティー』公式サイト
どこか漂う楽しげな雰囲気のワケ
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争・・・もちろん聞いたことはあってもあまり日本人には馴染みが薄いのは否めません。かくいう私も良く知らないのですが、しいて言うなら元サッカー日本代表監督のイビツァ・オシム氏はサラエボ出身で、彼の特集をしたドキュメント番組で紛争の様子を実際に現地の人々が語っているのを観た事があるぐらい。
さて、作品の話に戻しましょう。この作品、実話を原案にしただけあって非常にリアリティがあります。いや、正確には“リアリティを感じるシーンが”あります。どういうことか。例えばリチャード・ギア演じるサイモン・ハントがフォックスに殺された恋人を抱き寄せてキスをするシーン。サイモンの姿から、震える様な憤りと悲しみの感情が我々の心に流れ込んでくるかのようです。
また、フォックスに捕まり彼の部下に殺されそうになるシーンでは、我々に「どうなっちゃうんだ?やばくないか?」と真剣に思わせるほどの緊迫感・恐怖感を感じさせてくれます。もちろん殺されてしまったらそこで話が終わっちゃいますんで、冷静に考えればそこで死ぬ訳はないんですけどね。つまり言えるのはそれだけ今回のリチャード・ギアの演技が素晴らしいということですね。
ところが全編を通して観ていると、そうしたリアリティからちょっと外れた、どこか痛快でコミカルな印象が残りました。何故だろう?本作はフォックスと呼ばれる戦争犯罪人をジャーナリスト3人組が捕まえようと追いかける話。劇中でサイモンは自分たちを救出に来てくれた軍の将校にこう言います。「俺たちが2日で見つけた奴を、何故お前たちは5年間も見つけられない?」と。
つまり、本作の最大のテーマは“アメリカへの皮肉”なんです。国連・NATO・CIA、いずれもアメリカ主導の組織ですが、“捕まえられるのにわざと捕まえない”訳です。わざとシュールな笑いを誘ったり、大組織を素人3人が出し抜くことでアメリカを痛烈に皮肉り、楽しげな雰囲気をかもし出すことで悲惨な真実をより際立たせています。
最終的にサイモン達はフォックスを捕まえます。ところがその部分は実にサクッと、まるではしょったかのように描かれています。最初はそれを観て、ちょっと残念に感じました。しかし、大国と国際社会のエゴを痛烈に皮肉ることが目的である以上、彼らがどうやって捕まえたのかはそれほど問題ではない、従って事細かくそのシーンを描き出す必要はない、そういうことなのだと受け止めています。
ちなみにフォックスを捕まえること自体は映画の最終的な結末ではありません。それは作品を実際に観て下さい。(笑)
個人的オススメ度(最近観る映画が当たりまくり♪)
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