告発のとき
イラク戦争の現実を元に構成された作品。主演はアカデミー賞俳優のトミー・リー・ジョーンズ。監督・脚本はアカデミー作品賞、脚本賞受賞のポール・ハギス。トミー・リー・ジョーンズは『ノーカントリー』以来ですが、日本では缶コーヒーのCMで毎日のようにお目にかかっているので、そんなに久しぶりの感じがしなかったり。(笑)
>>『告発のとき』allcinema
トミーの演技力がもたらす見応えあるドラマ
ストーリー自体は実話を元に構成されたとはいえ、「そんなことがあったのか!」と驚くような内容ではありませんでした。今もって続いている(私は終わったと思っていません。)イラク戦争で起こった数々の悲惨な出来事、(それはイラク国内でのことでもあり、また本作のようにイラク帰還兵士のことでもありますが。)はこれだけの情報化社会の中では既にテレビ・ネット等で数多く報告されています。
ハンクは昔は軍警察の軍曹で、いわゆる古い世代の軍人。彼は今のイラクで起こっている出来事を息子が撮った携帯の動画で知りショックをうけます。彼がエミリーに向って「共に戦った仲間が殺すはずがない。」と訴えるシーンがありますが、平常時であれば今の軍でも言えることなのでしょう。しかしイラクから帰還した兵士たちにこの考えは通じなかった。いかにイラク戦争が異常な事態であり、そこから帰還した兵士たちの心に深い傷跡を残したのかを物語るシーンです。
本作は表向きのテーマはイラク戦争に従軍した兵士の現実ですが、実は親子の愛情ドラマでもあります。マイクがイラクから父親・ハンクに送ってきたもの、それは戦友と共に撮った写真とボロボロのアメリカ国旗でした。それを見たハンクは、親として息子を失った悲しみと、元軍人として今も昔と同じ価値観が存在していることへの安堵感を感じているように見えました。
それにしても、トミー・リー・ジョーンズの重厚な演技力は素晴らしい!『ノーカントリー』の時にも感じましたが、“寡黙にして雄弁”な彼の演技は、息子を失った悲しみをもつ父親と、一方で国のために戦う軍人というある意味相反する複雑な二面性を見事に演じきっていました。
当ブログはイラク戦争の是非を論じるばではないですが、今までにいくつも報道されてきたイラク戦争のドキュメントとともに、本作は観ておいたほうが良い作品だと思います。
個人的オススメ度(保安官事務所の壁にあるブッシュの顔写真が象徴的・・・)
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