« チェ 28歳の革命 | トップページ | きつねと私の12か月 »

2009年1月12日 (月)

禅 ZEN

Zen曹洞宗の開祖・道元の一生を描いた作品。主演は本作が映画初主演となる中村勘太郎、更に道元を支える3人の僧・寂円をテイ龍進、俊了を高良健吾、懐奘を村上淳が演じている。中村勘太郎は言うまでもないが、弟子役3人も地味なれど実力派。ポイントが溜まったので久々に横浜遠征での鑑賞でした。
>>公式サイト

正統派、中村勘太郎の演技はさすが

道元(中村勘太郎)は仏道の正師を求めて宋の国を旅していた。しかし、出会った高僧はいずれも俗物ばかり、失望した道元は旅の途中で一人の若い僧と出会う。彼の名は寂円(テイ龍進)、後に日本で道元を助け仏道を打ち立てるのだが、今の道元にそんなことは知る由もない。寂円に連れられて天童山に登った道元は、そこで如浄禅師と出会う。遂に見えた正師、如浄禅師の元で修行を積んだ道元は遂に悟りを得るのだった。

帰国した道元は建仁寺に身を寄せ、彼の姿勢に共感した僧たちが徐々に彼の元に集まり始めるのだった。その中に俊了(高良健吾)や元達磨宗の懐奘(村上淳)、そして如浄禅師が入滅した後、宋からやってきた寂円もいた。道元の元に僧が集まるにつれ、既存の仏教勢力、特に比叡山の僧からは恨みを買い、遂に道元たちは建仁寺を後にすることになる。

安養院に移った道元たちの下には、益々多くの僧が集まり始めるが、その中には遊女のおりん(内田有紀)もいた。道元たちがこの地で仏道を打ち立てることに成功したかに思えた矢先、またしても比叡山の僧兵によって、今度は寺ごと全て焼き払われてしまう。波多野義重(勝村政信)のすすめで越前に移った道元たちはその地で後の永平寺を建立する。こうして道元は更に多くの弟子たちに如浄禅師の教えを伝えるべく励むのだった・・・。

道元が宋を旅して俗物の高僧と出会うところから物語は始まるのですが、その高僧役が西村雅彦だった時はズッコケそうになりました・・・もっとこう、重い作品を想像していたので、こりゃ最後までもつかなと不安になったんですね。更に出会う中国人役はみんな日本人。学生時代に中国語を専攻していた私としては、彼らのどうしようもなくつたない中国語に中国人を感じることは不可能な訳で・・・。

まあ、中国語に関しては私だけの問題なので仕方ないのですが、いずれにしてもこれらの不安はある部分的中し、ある部分裏切られました。裏切られたのは中村勘太郎と、道元の弟子役3人の演技の素晴らしさです。特に中村勘太郎、流石は歌舞伎役者ですね。正統派の彼の演技には非常に力があります。道元の実直さに彼はピッタリはまっていました。

3人の弟子役はそれぞれ“中国から来た親友でかつ右腕”、“道元に心酔する若い僧”、“元達磨宗で後の曹洞宗二代目”という位置づけ。それぞれのキャラクターに見合った演技を観る事ができました。中村勘太郎だけではともすれば突出してしまいがちなバランスを3人の演技が上手く調整していたように感じます。つまり、この3人がいるからこそ、中村勘太郎の演技が引き立ち、ひいては道元の存在がより印象深いものになっています。

それだけに残念だったのは、素晴らしい演技を打ち消すような安っぽいCGでの演出でした。道元が蓮の花に乗って天空に上っていくだとか、怨霊が飛び回って執権・北条時頼の心の悩みを表現するだとか・・・。こんなチープな演出一つで作品全体が非常に安っぽくなってしまいました。どうして中村勘太郎の演技力に任せないのか、昨日『チェ 28歳の革命』を観た後だけに、余計そう感じました。

チェ・ゲバラよりははるかに歴史上の人物とはいえ、実在した人物には変わりなく、それならそれで素直に俳優の演技力と映像の力で勝負すればいいものを・・・。もっと名作になる可能性を秘めていると思うだけに残念でなりません。

個人的オススメ度Photo(老いた道元を見るとお父さんそっくりです。笑)

↓ポチッと一押お願いします♪
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

|

« チェ 28歳の革命 | トップページ | きつねと私の12か月 »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 禅 ZEN:

» 『禅 ZEN』 (2009)/日本 [NiceOne!!]
監督:高橋伴明原作:大谷哲夫出演:中村勘太郎、内田有紀、藤原竜也、村上淳、哀川翔、勝村政信、笹野高史、西村雅彦、高橋惠子試写会場 : フジテレビ マルチメディアシアター[2009年1月10日公開]公式サイトはこちら。<Story>混迷を極める現在、禅ZENが世界に...... [続きを読む]

受信: 2009年1月12日 (月) 09時29分

» 禅 ZEN [だらだら無気力ブログ]
日本曹洞宗の開祖であり、永平寺を開いた鎌倉時代の禅僧・道元の生涯を 描いた伝記ドラマ。鎌倉時代、仏道を求めて宋国に留学した道元。しかし会う高僧はみな世俗に まみれており失望する道元だったが、やがて天童山の如浄禅師に出会い、 禅師のもとで修業を積む。やがて修..... [続きを読む]

受信: 2009年1月12日 (月) 19時43分

» 禅 ZEN [悠雅的生活]
春は花 夏ほととぎす 秋は月冬雪さえて すずしかりけり [続きを読む]

受信: 2009年1月16日 (金) 00時24分

» 禅 ZEN [ネタバレ映画館]
小浜饅頭もいいけど、やっぱり“すりこぎ饅頭”。今年は福井県がアツい! [続きを読む]

受信: 2009年1月17日 (土) 12時50分

» 禅 ZEN [利用価値のない日々の雑学]
仏教が日本に伝来したのは6世紀半ば(代表的な552年、538年以外にも諸説ある)であるが、筆者の持論として民衆にこの教えが啓蒙され信仰・支持されたのはやはり鎌倉仏教の影響が大きい。無論、奈良時代には東大寺の大仏や、全国に国分寺・国分尼寺が建立されたがこれは国策の域に過ぎなかった。唐から高僧を招聘したが、それは政治を支える手段であったが、平安時代に入り、最澄と空海が中国から持ち帰った密教の影響は大きかった。特に天台は教学として日本で始めてというべきオリジナルな学問として、仏教を目指すものにとって比... [続きを読む]

受信: 2009年1月18日 (日) 14時49分

» 「禅 - ZEN」みた。 [たいむのひとりごと]
「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり」 ・・・あるがままに生きられれば現世こそが浄土。ほぼ無信心で無宗教な私でも、なんだか心が洗われるようだった。曹洞宗の開祖・道元禅師の伝記映画... [続きを読む]

受信: 2009年1月20日 (火) 07時44分

» 只管打坐・道元~「禅 ZEN」 [ひょうたんからこまッ・Part2]
『禅 ZEN』 (2009年・日本/128分) 公式サイト 只管打坐(しかんたざ) あるがまま、自然の流れに身を任せ、ただ座るのみ。 悟りは知識を詰め込んだからとて得られるものではない、 ただひたすら心を空にして座す... [続きを読む]

受信: 2009年1月20日 (火) 23時22分

» 禅 ZEN [映画君の毎日]
■ストーリー■「只管打坐(しかんたざ)」の考えに目覚め、大宋国での修行より帰国した道元禅師(中村勘太郎)。勢力入り乱れる鎌倉時代、道元は禅の教えを広めようとしていた。困窮する人々にも権力者にもわけ隔てなく、出会った人々に真の教えを説いていく。(シネマトゥデイ... [続きを読む]

受信: 2009年1月22日 (木) 20時11分

» 映画『禅 ZEN』公開の日に当たって [つらつら日暮らし]
今日から、道元禅師の映画『禅 ZEN』が公開されます。それに因んで一言申し上げます。 [続きを読む]

受信: 2009年1月22日 (木) 23時28分

» 「禅 ZEN」自分と深く静かに対面することは難しい [soramove]
「禅 ZEN」★★★ 中村勘太郎 出演 高橋伴明 監督、2008年、128分 「観客の年齢層がいつもと違う劇場で、 ひたすら座り続けることで、 ”さとり”を見出そうとする ひとりの僧侶の一生を見た」 冒頭での母と子の印象的な会話 「死んで極楽へ行くより、 生きている今こそ極楽でないと」 鎌倉時代の庶民の生活は楽ではなく、 その分、死後の世界に 極楽を求めたのだろう。 しかし、必死に祈っても、 この世で幸せを約束してくれないなら、 無意味な気がし... [続きを読む]

受信: 2009年1月24日 (土) 11時02分

» 2009-09『禅 ZEN』を鑑賞しました。 [はっしぃの映画三昧!]
#63704;映画を鑑賞しました。#63893; 2009-09『禅 ZEN』(更新:2009/01/12) * 評価:★★★★☆ 一ヶ月フリーパスポートで鑑賞の16本目。 良い映画でしたよ。 福井県にある禅寺で有名な永平寺の僧侶・道元禅師の生涯の物語です。 欲に..... [続きを読む]

受信: 2009年1月25日 (日) 16時57分

» 禅 ZEN 道元禅師の心 [ネット社会、その光と影を追うー]
〇春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて 冷しか [続きを読む]

受信: 2009年2月 7日 (土) 12時56分

» 禅 ZEN [とりあえず、コメントです]
鎌倉時代の僧、道元禅師の生涯を描いたドラマです。 一人の僧が悟りをひらき、それを広めていく姿は、激動の人生の中にあっても 静かで力強く感じられました。 幼くして母を亡くした道元(中村勘太郎)は、青年になると宋へ渡って修行の旅に出た。 だが高名な僧に会っても、本当の徳を感じられる人物にはなかなか出会えない。 師と仰ぐ僧はいないかと悩んでいたところ、戦いで命を落とした武士の親友とそっくりな僧とすれ違う。 思わず亡き友の名を呼びかけてしまい、僧・寂円(テイ龍進)に詫びると共に悩みを打ち明けた道元は その... [続きを読む]

受信: 2009年3月11日 (水) 12時40分

» ≪禅 ZEN≫ [日々のつぶやき]
監督:高橋伴明 出演:中村勘太郎、内田有紀、藤原竜也、高橋恵子、高良健吾、哀川翔、笹野高史     喜びも苦しみも涙も・・・。あるがままに。 「日本曹洞宗の開祖・道元 幼くして母と死に別れた道元は、母の言葉から宋に渡り仏門の修行をする。 その後... [続きを読む]

受信: 2009年8月 1日 (土) 11時39分

» 「禅ーZENー」 [ひきばっちの映画でどうだ!!]
                              「禅ーZENー」 とても素敵な作品でした(^^♪。 曹洞宗の開祖である、道元の生涯を描いたものであります。 道元の母、伊子(高橋恵子)は1207年、道元が八つの時に亡くなります。 「この世の中で、何故、人々は争い、病の苦しみ、死の苦しみからのがれられないのでしょう・・・そなたが、これらの苦しみから抜け出す道を探し出してくれるのを、母はずっとここで待っています・・・」と言い残して・・。 まぁ、詳しいストーリーは省きますが(といって、後... [続きを読む]

受信: 2009年9月30日 (水) 22時28分

» 映画評「禅 ZEN」 [プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]]
☆☆☆(6点/10点満点中) 2008年日本映画 監督・高橋伴明 ネタバレあり [続きを読む]

受信: 2010年6月20日 (日) 16時37分

« チェ 28歳の革命 | トップページ | きつねと私の12か月 »