ザ・フォール/落下の王国
『ザ・セル』のターセム・シン監督が送り出す2作目の長編映画。主演はリー・ペイスという俳優さんで『グッド・シェパード』に出演していたらしいですが全く記憶にないです。共演のカティンカ・ウンタルーはこれがデビュー作。衣装デザインをこれまた日本人の石岡瑛子さんが務めています。コピーの「君にささげる、世界にたったひとつの作り話。」に引かれて鑑賞してみることに。
>>『落下の王国/The fall』公式サイト
思わず見とれる斬新な映像美
非常に美しい映像のオンパレードで、観ているだけでも引き込まれます。世界24ヵ国以上でロケしたとのことですが、あまりに現実離れした風景に妙な違和感すら感じました。元々の風景に力があるのは勿論ですが、撮り方のセンスが素晴らしい。というより風景を活かすためにロングや広い絵を多用しています。通常こんな撮り方をした絵は、登場人物が埋没してしまうため、使いどころが難しいのですが、この作品は登場人物の衣装でそれを補っています。
原色系の色使いを基本とし、一風変わったデザインの衣装は日本人のオスカーデザイナー・石岡瑛子さんによるもの。この衣装のおかげで広い絵の中でも登場人物は埋没するどころか、ともすれば単調になりがちな風景にアクセントを与え、観る者を飽きさせません。衣装と言えば、メインの勇者たちだけでなく、黒山賊の結婚式シーンで踊っている人たちの衣装なども何とも不思議な雰囲気を醸し出していました。(公式サイトの表紙に使われています。)
さて、本作がデビュー作となるカティンカ・ウンタルーですが、これまた映像の不思議さにぴったりフィットするような不思議な子役です。劇中にぽっこりお腹を披露してくれるのですが、ちょっとぽっちゃりした前歯のない女の子で、最初観たときはお世辞にも可愛いとは思えなかったのですが、話が進むにつれて何故か愛おしいと思える存在へと変わって行きました。
腕の怪我で入院していた彼女はロイの作り話に夢中になり、話しの続きが聞きたいがために、彼のために薬を盗んできます。何かに夢中になると周りが見えなくなりがちな子供らしい振る舞いに、観ている私たちはハラハラさせられるのですが、それは知らず知らずのうちに保護者目線になっているのかもしれません。いずれにしても、今後も役者を続けていくんでしょうか?次があるならみてみたい子役でした。
この作品、作り話部分のストーリーの方が全体のストーリーより解り易かったりします。元々作り話部分はロイがアレクサンドリアを操るためにでっち上げた話という設定ですから何でもアリ。むしろちょっと“変”な感じだからこそ面白いです。ところが、全体のストーリーは、スタントマンのロイが飛び降りスタントで怪我をしてしまったということと、恋人に振られたということ、そんなこんなでロイが自殺願望を抱いているということ、これぐらいしか解りませんでした。もっとも、この作品はストーリー展開を楽しむものではないのかもしれません。
アレクサンドリアはロイのせいで、また怪我を負うことになるのですが、具体的な記述はここでは避けます。ただ、私程度のアバウトな理解でも結末はちゃんと納得出来る物でしたからご心配なく。美しい映像、特徴的な撮り方、登場人物たちの妙な衣装と性格、引き込まれる要素が沢山ある作品でした。
個人的オススメ度(ちょっともう一回観てみよう。ブルーレイで…)
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