ジェネラル・ルージュの凱旋

『チーム・バチスタの栄光』に続く田口センセと白鳥調査官シリーズ第２弾。主演は前作と変わらず竹内結子と阿部寛。今回はメインの登場人物、タイトルにもなっている“ジェネラル・ルージュ”を堺雅人が演じます。監督はこれまた前作と変わらず中村義洋。原作小説がベストセラーだけに、前作では作品の評価が大きく分かれましたが私はまあ許容範囲で楽しめたと記憶しています。本作は如何に！？
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前作との差は原作との差

前作も今回も原作を読んでの鑑賞でした。今回は予告の段階から原作にはない殺人事件が織り込まれていたりしたため、映画版ならではどういう展開を観せてくれるのか不安とともに楽しみにしていたのですが、私にとってはちょっと残念な結果でした。前作は割と原作に忠実な作りでしたが今回は大きく変わっています。この差が私には受け入れにくい差になってしまったようです。

別に主人公が女性でも、本来殆ど登場しない白鳥が出ていてもそれは映画のオリジナル設定として許容範囲内です。残念だったのは、原作が訴えたかったテーマがとても軽く扱われていたこと。この作品のメインテーマは救急救命医療の抱える問題提起です。（原作ではそれだけでなく小児科や死亡時画像病理診断などを含めた、採算性の合わない医療行為全般に関してでした。）にも関わらず、劇中ではその問題点の描写がとても薄いのです。何だか時間に追われてエピソードをぱっぱぱっぱと飛ばした印象を持ちました。

業者との癒着を告発された速水医師が、倫理委員会の席上で弁明するシーンで救急救命医療の現状を訴えていますが、そこに到るまでに速水のチームが置かれている現状を丁寧に観せてくれなければ、それはただの演説にしか過ぎません。とはいいつつも、堺雅人の個性と迫真の名演技は素晴らしく、迫力を伴ったシーンでした。それだけに作品の構成に難点があるとしか言いようがないです。ただそれにしても、堺雅人の速水役はかなりハマってますね。（堺雅人でスピンオフとか作ってくれないでしょうか。笑）

さて、そのシーンの直後に起こった大事故で、病院内は緊急事態になります。ロビーまでも解放して救急患者を受け入れますが、そこで速水は部下の佐藤にトリアージを任せます。病院を辞めるつもりの速水としては、次期ジェネラルに、患者の選別という重い重い役目を託したのでした。またここでジェネラル･ルージュの名前の由来も明らかになります。緊迫感漂うこのシーン、現場の雰囲気が良く出ていました。相変わらずなんだかムスっとした顔をして手伝いにくる垣谷医師こと佐野史郎も頼もしく見えます。（笑）

この直後、私がどうしても納得いかないシーン、それは予告編にも使われていましたが、田口の「取材のヘリは飛ぶのに、どうしてドクターヘリは飛ばないの！」と絶叫するシーンが来ます。原作ではこれは速水のセリフでした。申し訳ないですが、田口にあのセリフを言う資格はないです。あの病院であのセリフを言っていいのは速水とそのスタッフだけのはずです。ドクターヘリの導入がずっと叶わず、それでも必死で救急救命センターを支え、その為に利益供与まで受けていた速水が言うからこそ説得力をもつはずで、他の設定をいくら変えても、そこだけは変えてはいけなかったと思うのですが。

更に言うと、原作のファンとしては、白鳥を話しに割り込ませるための無理やりな殺人事件はやっぱり余分でした。それを入れるぐらいなら、貫地谷しほり扮する如月翔子や羽田美智子の花房看護師長らのICU勤務の看護師たちのエピソードをもっと丁寧に描くなりして欲しかった。とくに如月看護師は原作では速水を守るために事実を探るスパイ的な役割を果たします。本作では割愛されてしまいましたが、せっかく貫地谷しほりといういい女優さんを配しているのですからあれだけではもったいないです。

ところで一緒に観に行った連れと話しながら帰ってきたのですが、フジテレビはまたドラマ化するんでしょうか？（笑）ドラマベースならば時間もたっぷりあるのでまた違った描き方、あるいは原作に忠実な描き方も出来るのではないかと思います。ちょこっと期待してたり…。

個人的オススメ度（原作ファンとしては★２つです。）

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