昴 -スバル-
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黒木メイサはすばるになれたのか |
冒頭に書いた通り妻にせがまれたというのもあるのですが、ネット上で酷評が目立つ本作、それならば実際に自分の目で確かめてみようとも思い出かけてみました。で、どうだったのか…。そうですね、そこそこ原作のポイントを押さえた作品ではあったと思います。主人公すばるは類希なダンスの素質をもつも、周りとうまく合わせられず、ストリートダンスでそのコツをつかむという下りは実際に原作でも読んだ覚えがあります。

私はバレエに関しては疎いので、黒木メイサのダンスがどの程度のレベルかはわからないです。ただお世辞にも上手だとは言えないように感じました。原作でのすばるは、荒削りだけどもそのダンスで人をグイグイと引っ張っていく力を持っていました。すばるに引っ張られて一緒に踊る人間も普段以上の力を出せる、それが彼女の魅力と凄さです。本作ではそれをサラッとセリフで表現してしまいました。そこを映像でどう表現するかが勝負なのに。ただ、一瞬を切り取ると「本物」が感じられた部分があったのも事実。黒木メイサはプロのバレエダンサーではないですからそれでも十分よくやっていると言えるのかもしれませんが、すばるにはなりきれてなかったということでしょう。


ところで黒木メイサは美しいのですが、どちらかというと遠巻きに観る方が良いですね。すらっと伸びた手足、均整のとれたプロポーションは日本人離れしていて、アンタッチャブルな趣を放っていました。レオタードでの練習シーンでは『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のケイト・ブランシェットを思い出しましたが、さすがに比べたら可哀想ですね。あの神々しいまでに美しくそしてエロティックな雰囲気を出すにはまだ修行が必要でしょう。(笑)全体的に言えるのは、バレエを描いた作品の割りに、彼女が踊っているシーンが少ないこと。ストリートダンスもいいですが、本線をもっとしっかり観せて欲しかったです。


さて、何気に良い演技をしていたのは、ライバルの呉羽真奈を演じる佐野光来(みく)。まだ随所に未熟な部分は見受けられるものの、すばるのライバルでありながら彼女の親友であるという難しい役柄をなかなか上手く演じていました。愛憎合わせ持った複雑な気持ちを抱いた少女、彼女の微妙な表情からそれはしっかり伝わってきます。まだ18歳ですから今後が楽しみな女優さんですね。


逆に残念だったのがリズ・パーク役のAra。彼女はすでにプロのダンサーという設定なのに何故コンクールに参加したんでしょうか?また彼女は一流ダンサーという設定ですが、それならば彼女だけをフィーチャーするシーンを1度はもうけても良かったのではないでしょうか。いくらセリフで説明されても、実際に彼女が踊っているのはほんの少しだけ。これでは観ている側は納得出来ません。どうにも中途半端な存在になってしまっていたのがもったいないです。
ところで観終わってから気づいたのですが、本作のポスター、コピーがちょっとがっかりでした。「トップアーティスト 奇跡のコラボレーション!」確かに倖田來未が主題歌を東方神起がメインテーマを歌い、更に東方神起は劇中にも登場しています。でも、それは別に映画そのものの内容とは関係ないですから。いくら宣伝のためとはいえ、作品そのものの良い点を自信をもってコピーに出来ないようでは、自らを否定しているようなものです。
バレエの映画だと思って観た妻も拍子抜けしたようで、そこに期待感をもって観ると外されますのでご注意あれ。
個人的オススメ度(筧さんてああいう役が似合います。笑)
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