ニセ札/特集レポ 舞台挨拶〜キム兄の涙の訳〜付き
キム兄こと木村祐一の長編初監督作品。主演は倍賞美津子、他にも段田安則、板倉俊之、村上淳、そして木村祐一本人も出演している。で、全く知らないで鑑賞に行ったその回の後に舞台挨拶がありますと受付でいわれ、ハシゴ予定だったんで時間をずらす訳にもいかず、仕方なく500円追加で舞台挨拶まで参加してきたのでした。(苦笑)今回はその時の様子も込みでのレビューです。
>>『ニセ札』公式サイト
キム兄は俳優がいいね!

うーん、俳優としてのキム兄は実に味があって好きなんです。事実本作中ではメインキャラクターではあるものの、中心人物とまではいかない立位置でありながら、話を回していく中心キャラクターを務める板倉さんとは比較にならないほど存在感がありました。しかし、作品そのものはと言うと、拍子抜けしたと言うのが正直なところです。どうせなら監督・主演にしてしまえばまた変わったんではないかと残念。


何にも聞かされないでこの作品を観た人は、出演以外にキムが兄関わっているとは解らないと思います。特にキム兄独特の笑いのセンスがあるわけでもなく、かといってストーリー的に深みがあるのかというと特に何もなく…うすーい作品になってしまっていました。具体的にいうと、登場人物がそれぞれがニセ札を作る過程で、どんな力を発揮しどれだけ苦労したのかが見えてこないのです。解ったのは佐田と大津の資金集めのエピソードだけでした。
キム兄の花村と小笠原はお札を感光?させてたみたいですが、それって何をしてたの?とか、すかしには白と黒があって…は解るけど、そもそもすかしってどうやってすいてるの?とか、原盤作るのに何をどうしたんですか?とか…一体全体彼らは何をしてるのか、実際に具体的に観せてもらっていないので、大変なことをしているという感覚を共有できないんですね。


そこをはしょられてしまっているのもだから、ニセ札が完成して、小さなミスが発覚した時、やり直すのかそのまま使うのかという極めて重要な選択をするシーンにリアリティが無く納得も出来ません。小笠原は紙の湿気が乾く際に聖徳太子の絵ががゆがんだとか言ってましたが、それで作戦自体をなんで最初からやり直しになるのか。コレは結構重要なことで、解らないままストーリーが進んでしまったため、本物のお札を作りたい小笠原と、このままで良いと主張するかげ子たちとの対立するシーンでは何でそんなに両者間に温度差があるのかがピンときません。私は「あれ?ちゃっちゃって作り直せないの?」と思いましたから。(苦笑)
言いたいことは「お金は神か、紙切れか。」で「紙切れです。」ということなんでしょうけども、そのたかが紙切れに多大な資金と情熱をそそいだ人間がそれを言って初めて説得力があるのではないでしょうか。いや、そそいだんでしょうね、ただそれが観ている側に伝わってこないのです。残念ながらラストのかげ子のセリフ、お金中心の世の中を痛烈に批判する重要なセリフですが、これすらも通り一遍のきれいごとにしか聞こえませんでした。


キム兄を前面に押し出しながら、肝心のキム兄風味は何もなかった残念な作品でしたが、本作にかけた情熱はむしろこの上映後行われた舞台挨拶でのほうが強く感じられたというのが皮肉でした。さて、もし興味のある方はこの後の特別レポ「『ニセ札』舞台挨拶 〜キム兄の涙の訳〜」を読んでください。ただし、かな〜りざっくばらんに書いてあります。人によっては不快に思うかもしれないのでご了承くださいませ。(笑)
個人的オススメ度2.5(キム兄の舞台挨拶で+0.5)
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