失われた肌
現在『太陽のかけら』が公開中のガエル・ガルシア・ベルナル主演作品。こちらはアルゼンチン映画となっています。スペイン語圏は広いのであまりどこの映画なのかに意味があるとも思えないですけども。(笑)ちなみにこちらは『蜘蛛女のキス』のヘクトール・バベンコが監督を務めています。公式サイトが『太陽のかけら』と一まとめになっているように、春のガエルシリーズ第2弾として鑑賞です。
>>『失われた肌』公式サイト
理解できない愛の表現

冒頭いきなり登場するリミニとソフィアの夫妻は共に美男美女。特にガエル・ガルシア・ベルナルは現在公開中の『太陽のかけら』では学生役ということで多少無理があるのですが、本作では30歳という年齢に見合った役柄で職業も翻訳家、スーツが良く似合っています。しかし、スクリーンから漂ってくる華やかさとは裏腹に、実は2人はソフィアの母に離婚の報告に来たのでした。もっとも報告だけで理由に関しては明らかにされません。それは本作を観る上で最後まで引きずるポイントとなります。


さて、本作を通して感じられるたのはソフィアの奇妙な言動。それは2人が離婚のために別居を開始するシーンから既に見られます。今住んでいる家を出て行く夫の住む家を探してきて、嬉しそうに報告するあたりはどう見ても離婚を控えた妻ではありません。いよいよリミニが家を出て行く段になると、今度は2人の写真の整理を持ちかけますが、何故この期に及んでそんな事を言い出すのか…。客観的に見ると、ソフィアは別れたくなかったとしか思えない描写なのですが、離婚の理由が明かされていないので、その辺りがどうにも腑に落ちないのでした。


一方、極普通の別れた夫?リミニは新居に移ってすぐにモデルのベラと知り合い結婚します。お相手のベラ役のモロ・アンギレリは素晴らしいプロポーション!ノーブラで太極拳?とおぼしきエクササイズをするシーンでは、形の良い乳房に目は釘付けでした。ベラは非常に嫉妬深い女性でしたが、リミニにはそんなところをも愛しています。ところが、しつこいほどにリミニに付きまとうソフィアは、ベラに路上で自分とリミニのキスシーンを見せつけます。ショックを受けたベラは道路に飛び出し事故に遭って帰らぬ人に…。
リミニはトラウマで外国語を忘れてしまい、翻訳家としての仕事を失います。しかしこれで終わりではありませんでした。ストーリーが進むにつれ、ソフィアの狂気の度合いは増していく一方です。節目節目でリミニと出会うシーンは、彼女の近況を説明するためでしょうか。特定の恋人の存在を匂わせはしますが、どこからどう見ても幸せには見えないのが痛々しいのでした。そして、その狂気はまたしてもリミニの人生を狂わせます。というより、リミニから全てを奪い去ります。


結局、リミニに残ったのはソフィアだけでした。と同時に私たちの心に残ったのは“何故?”という疑問だけでした。最初に書いた通り、「何故離婚したのか?」この至って素朴な疑問に答えていない事実が本作を理解困難な作品にしてしまっています。原題の“El Pasado”はスペイン語で過去という意味。これはリミニとソフィアの“過去”を意味するのか、あるいは色々あったけども、結局もう一度“過去”(の関係)に戻ることになったことを意味するのか…。
起こった事実を事実のままに受け入れて鑑賞する分には構いませんが、考え始めたら迷宮にはまります。少なくとも私は愛を描くのにこういう逆説的手法は好きではないかな。単純にガエルのかっこ良さを見たい方にはおススメできますが、およそ一般の方には辛い内容でしょう。
個人的おススメ度3.0(『太陽のかけら』のほうが単純にわかり易いです。)
| 固定リンク
最近のコメント