マリア・カラスの真実
主演マリア・カラス。というか完全なるドキュメンタリー作品のため、出てくる映像や写真は本人です。監督・製作・撮影の全てを手がけるのはドキュメンタリー作家のフィリップ・コーリー。マリア・カラスに関しては聞いたことがある程度で全くなんの知識もなかったのですが、たまたま観た予告編でふらりと惹かれてしまったり。という訳で初のユーロスペースに突撃してきました。
>>『マリア・カラスの真実』公式サイト
何とドラマティックな人生か
※ドキュメンタリーのためあらすじはなし
この作品を何故映画館で上映するのかが解りません。完全なドキュメンタリー作品で、マリア・カラスのアーカイブ映像と写真、そして新たに撮影した資料映像で構成され、そこに唯ひたすら淡々としたナレーションがついているだけです。新たに撮影したといってもフィルムではなくビデオで撮られており、映像の質感はテレビと同じ。時折挟まるオペラ座?の舞台にCGでアーカイブ映像をはめ込んだり、マリア・カラスの衣装の物撮りをして、バックをクロマキーで合成したりと手法も殆どテレビのそれです。
簡単に言えば「NHKスペシャル マリア・カラスの真実」といってBS1あたりで放送していたら普通に観てしまいそうな作品なんです。その意味ではかなり出来の良いドキュメンタリー“番組”でした。何しろ実際のマリア・カラスの映像や写真をそのまま観ることができるので、嘘偽りが入り込む余地がありません。もっとも、序盤マリアがオペラ歌手として成功する前は、「よくこんな映像残ってるもんだなぁ。」とそっちのほうに感心してしまいましたが。(苦笑)
この成功前までの時期は正直言ってお勉強タイムです。あまりに素晴らしいその声は時代を先取りしすぎて当時の人々には受け入れられず、不遇の時期を過ごします。大した盛り上がりもなく淡々と過ぎていく時間と、そのナレーションは思わず眠気を誘うものでした。そんな話が一躍面白くなってくるのは、彼女が最初の夫兼エージェントのメネギーニが登場するあたりから。メネギーニ(上写真左)のおかげでマリアは一躍オペラ界の第一人者にまでなりますが、そうなってからのマリアの人生はあまりにもドラマティックでした。
登場人物からしてすごいです。メネギーニと別れて付き合い始めた相手は海運王オナシス(2つ上の右)、そして友人はあのグレース・ケリー(上写真左)、そしてオナシスがマリアを裏切って結婚した相手はジャクリーン・ケネディ(JFKの元奥さん、つまり元ファ-ストレディ。上写真右)です。この人たちって近代史に名前が出てくるレベルですよ!華々しい成功の裏でマリア・カラスは女性としては全く恵まれませんでした。表面上は大金持ちの内縁の妻であり、本人も地位・名声・お金に困ることはなかったものの、結局彼女は誰にも愛されず孤独でした。
本当の意味で真実かどうかは解りませんが、この後、少なくとも事実として起こったことが事細かに語られていきます。(ドキュメンタリーなので細かくは紹介しませんが。)そして映像の合間にはさまれる彼女自身の肉声。ベンジャミンバトンではないですが、こんなに数奇な人生を辿った人間が、こんなにドラマティックな人生を生きた人間がいるのかと、つくづくそう思わされました。作品そのものにエンタテインメント性はありませんが、マリア・カラスの人生そのものがエンタテインメントとだと言えるかもしれません。
個人的オススメ度(好みの作品ですが一般的じゃないかもなぁ…)
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