スラムドッグ＄ミリオネア

言わずと知れた昨年度アカデミー賞８部門受賞作品。最有力といわれていた『ベンジャミン・バトン　数奇な人生』を退けての受賞当時は日本では公開されていなかったため、「そんなにいいの？」という声も聞かれました。それにしても当初はＤＶＤスルーの可能性があったというのだから驚きです。監督は『２８日後...』や『２８週後...』のダニー・ボイル。主人公のジャマールにはこれが映画デビュー作となるデヴ・パテルが抜擢。
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想い続ける心が美しい

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主人公ジャマールがずっと抱き続けたラティカへの想いに感動させられた作品でした。アカデミー賞８部門受賞というとんでもない記録を引っさげて日本公開となった本作、噂に違わずなかなかの良作でした。まあ実は正直なところをいうと、『ベンジャミン・バトン　数奇な人生』を退けて作品賞を受賞したということで期待しすぎた部分もあったのか、弱冠拍子抜けした感じがしたのも事実ではあるのですが。（苦笑）さて今回はややネタバレ気味に書きます。

「作曲賞」「主題歌賞」を獲っているだけあって、インド風のアップテンポな音楽にのせた冒頭のシーンには問答無用で引き込まれました。少し荒い感じのする映像はこの後もジャマールの回想シーンに共通しているんですが、スラム街を警官から逃げ回る幼い頃のジャマールたちを見事な躍動感で描きだしています。それにしても斬新な映像構成というかカット割りというか…。ただの逃げているだけのシーンなのに、“もっと観ていたい！”そんな気にさせられます。

ジャマールはムンバイのスラム街出身の青年で、今は電話交換会社のお茶汲みをする青年です。そんな彼が人気番組「クイズ＄ミリオネア」に出場し、あと１問で２０００万ルピーを獲得するところまで漕ぎ着けてしまうからさあ大変！「無教養なスラムドッグが答えが解る訳ないだろ！」っとばかりにイカサマの容疑をかけられて警察に捕まってしまうのでした。警察の事情聴取では、何故スラム出身の無教養な彼がクイズの正解を知っていたのかを回想を交えて話します。答えはこれまでの彼の壮絶な人生経験、生きるためなら何でもして来た経験の中にありました。

暴動から逃げる時に偶然目にしたのはクリシュナ神の格好をした子供、その右手に握られていたのは…。また１００ドル札の裏側の肖像画の人物は、昔の孤児の仲間から聞いたものでした。人は多くの経験の中で様々な知識を得ていきます。ジャマールの場合もそれは同じでしたが、彼の場合普通と違ったのは、その知識にまつわる経験に悲しい思い出がついてまわること。警官に話をするとき彼の表情は“知りたくて知ったわけじゃない、むしろそんな経験をせずにすむなら知りたくない。”そう物語っています。

そもそもジャマールが「クイズ＄ミリオネア」に出場しようと思ったきっかけ、それは行方知れずの初恋の人ラティカに会いたい一心からでした。幼い頃に知り合い、ともに恋心を抱きながらも決して一緒に幸せにはなれなかった２人。いつだってラティカはジャマールのことを想い、彼のために自分を犠牲にし彼を助けてくれました。それに対してジャマールは常に無力…。彼に出来ることはずっとラティカを想い続けることだけだったのでした。

釈放され最後の１問に復帰したジャマールは残ったライフライン“テレフォン”を使います。兄のサマールの携帯に電話をかけると、聞こえてきたのはラティカの声！ジャマールの顔には驚きの表情とともに喜びの表情が浮かびます、そして彼はルール通り解答を彼女に聞きます。しかし、いつだって彼を助けてきた彼女が今回ばかりはこういうのでした。「解らないわ。」しかしその顔には笑顔が浮かんでいます。

２０００万ルピーの回答が解らなくても、そんなことは２人には関係ない、お互いの声が聞こえることが、無事である事が最高に嬉しい。そんな気持ちがヒシヒシと伝わってくる中、ジャマールは彼女の助けを借りずに最後の１問に望みます。結果は…観てください。（笑）昔はラティカに助けられても不幸だった、今はラティカに助けてもらえなくても幸せになった。彼女を思い続けたジャマールの気持ちが招いた幸せなラストシーンが心地よい作品でした。

個人的おススメ度3.5（それでも８部門はどうかなぁ･･･）

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