スイート・スイート・ビレッジ
『英国王 給仕人に乾杯』のイジー・メンツェル監督作品。1988年のチェコ映画です。下高井戸シネマでイジー・メンツェル3作品連続公開ということで鑑賞してきました。まだDVD化の予定がないそうですので貴重な機会かもしれません。ちなみに残りの2作品は『英国王 給仕人に乾杯』と『厳重に監視された列車』ですが、こちらも時間があれば観て来たいと思います。
>>『スイート・スイート・ビレッジ』VarietyJapan
チェコは良いとこ1度はおいで!
あらすじへ
←クリックお願いします

『英国王 給仕人に乾杯』を観てその面白い作風に惹かれたイジー・メンツェル監督。チェコの映画を観る機会など中々ないのですが、地元の下高井戸シネマ、ミニシアターならではの小回りを利かせてくれます。21時15分からというレイトショーにも関わらず座席の半分ぐらいは埋まっていました。そんな劇場では上映中あちこちから「クスクス」笑い声が頻繁に起こる、そう、何だか観客が妙に一体感を覚えるような楽しい105分間でした。余談ですが字幕は戸田奈津子さん。さすが大御所、色んな作品やってますね。


さて、本作の舞台はチェコの田舎。一応オチクという知的障害を持った男性とでデブで殆どスーパーマリオとしか思えないパヴェクという2人の男を中心に、小さな村の人々にが巻き起こす日常をユーモラスに描いた作品です。オチクは菓子パンとハトを飼うのが好きな青年で、パヴェクのことが大好き。どのぐらい好きかというと、朝仕事に出かけるときに一緒に歩いて行くのですが、必ずパヴェクの足の出し方に自分も揃える程。仕事でドジばかりし、パヴェクから助手をクビにするといわれると、大切にしていたハトを潰してまでご機嫌をとります。要はホントに子供のように、というか子供なんですね。


この2人に続いて登場するのが村の唯一の医者・ドクトル。この医者が実は本作の中のキーマンだったりします。殆どの登場人物と関わりを持つのは彼だけなんですね。この田舎の風景をこよなく愛す彼は、車を運転しながら風景に見とれて道路脇に突っ込むなんてご愛嬌、しまいにはブレーキが壊れた車の下敷きにまでなります。まあ、すぐに治ってしまうんですが、その辺は言葉で書くより観てもらったほうが断然面白いです。(笑)ドクトルの言う「この場所は国じゃない、庭園だ。」という言葉には、メンツェル監督の祖国に対する深い愛情が見て取れるのでした。


パヴェクとオチクの関係がギクシャクしている間にも村人の生活はそれとは関係なく進んでいます。この構成がまた面白い。村人たちの群像劇とでも言うのでしょうか。パヴェクの息子は妹の学校の新任女教師に恋心をよせますが、その女教師は旅の画家と懇意に。また集団農場に勤めているヤナは同じ職場でプラハからやってきているカシュパルと不倫関係に。本人たちはばれていないつもりですが、そこは小さな村のこと、すぐに村長の知るところとなります。他にも集団農場に登場するおかしな人物たちのおかしな言動は、観ていてホントに楽しくなってきます。


ところでチェコといえば“ビール”。本作にも頻繁にビールを飲むシーンが登場します。彼らは農業ですから早朝から働いて、午後早くにはもう家にいるんですね。パヴェクは地下室の階段にビールを保管していて、“階段の7段目”に置くのが一番良いと言います。6段目だとぬるすぎで8段目だと冷えすぎなんだそうで。これがまた実に美味そう!自家製のソーセージを食べつつビールを飲む、何は無くともこれで幸せ!そう語らなくともそう観えてしまうから不思議です。私は基本的に飲めないですが、流石に今日はちょっと飲みたくなりました。というかこれ観てそうならない人はいないと思いますけど。(笑)
ユーモラスな村人を通じて、或いはプラハから来た公団理事長といった権力者をからかうような描き方をすることで、祖国の本当の良さがどこにあり、何が人にとって幸せなのかを率直に提示してくれた、そんな“楽しい”作品でした。まだDVDになっていない作品です。興味のある方は下高井戸シネマに足を運んでみてください。今レイトショー中です。
個人的オススメ度3.5
今日の一言:“階段の7段目のビール”って有名なんですね。
| 固定リンク
最近のコメント