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2009年5月 7日 (木)

ベルサイユの子

Photo 主演は2008年10月に37歳の若さで急逝したギョーム・ドパルデュー。余談ですがシネスイッチ銀座にはギョームを偲んで彼へのメッセージボードが設置されていました。また、タイトルの“ベルサイユの子”を演じたのはマックス・ベセット・ドゥ・マルグレーヴ。そして監督は長編デビューのピエール・ショレール。ベルサイユ宮殿のある森でホームレスが生活?そんな意外性に惹かれての鑑賞です。
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幼い子供の目に映った大人の姿

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ベルサイユ宮殿を囲む森にホームレスが住み着いている、そんな話は初耳な方が多いのではないでしょうか。かくいう私も初めて聞きました。その森の中、「働く気はない。」と公言するホームレス・ダミアンの前に、23歳のシングルマザー・ニーナとその息子エンゾが現れたのは全くの偶然から。予告編を見ると、いきなり母親のニーナがエンゾを捨てたかのように見えるのですが実はそうではありません。物語が始まって暫くの間はニーナとエンゾ母子の地味ながらも睦まじい姿が描写されています。しかしニーナが新聞の広告をみて就職しようと思うところから運命の歯車は狂いだすのでした。

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そもそも女性は子供を産むと母親になると言います。そして子供を捨てたいと思う母親など普通いません。(と言い切れない昨今の世情が悲しいのですが。)しかし子供を連れていることが負担になっている様子は、この時のニーナの表情から見て取れます。母親としての愛情が辛うじてその気持ちを抑えているようでした。ところが、ダミアンのところにエンゾを残してニーナは姿を消します。思い当たるのは前夜、ダミアンとニーナが男女の関係になったこと。辛うじて抑えていた気持ち、それがダミアンとのSEXで一時だけ女に戻ったニーナのなかで弾けてしまった、だからこそそのまま姿を消すことが出来たのではないか、そんな風に感じました。

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最初はエンゾが邪魔だったダミアンも次第に打ち解け、本当の親子のように暮らすようになります。エンゾがやっと手に入れた安住の地、森の中での生活は幼いエンゾにとって幸せでした。しかし、ダミアンが病に倒れた事を機に、エンゾの将来を案じた彼は森を出て実家に戻り働くことにするのでした。それはエンゾを学校にやったり人並みの子として育てるため。ところが、エンゾはダミアンに「小屋に帰りたい。」と言います。子供にとっての幸せとは一体何なのでしょうか?深く考えさせられるシーンです。

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子供は親を観ています。親が幸せでなければ、子供はそれを敏感に感じ取ります。無理をして街に戻り働いているダミアンの様子、実家の父親と上手く行っていないダミアンの様子、それらはエンゾの幼い目は見抜いていたはずです。そしてそんなエンゾの気持ちはダミアンにも解ります。このまま自分がここに留まることは、エンゾにとって良くないと思ったのでしょう、ダミアンは姿を消すのでした。しかしこれは完全に大人のエゴです。またしても親を失ったエンゾの気持ちはどうなんだと思わずにいられません。

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森で自由に暮らしていた時のダミアン、街で無理をしながらもエンゾの幸せのために働くダミアン、そしてエンゾのためを思えばこそ姿を消すダミアン、いずれのシーンもギョーム・ドパルデューの名演技が光ります。刻々と変化する心情はその仕草や表情で、そして街の生活に馴染めない様子は、仕事先で壁をハンマーで壊すといった他愛もないシーンを観ているだけでもしっかり伝わって来ました。またくりくりっとした大きな目がとても可愛らしいマックス・ベセット・ドゥ・マルグレーヴ。ダミアンの足にしがみつく彼を観ていると、子供はいつどんな状況だって親にしか頼れないんだ、そんな当たり前のことを思い出させてくれます。2度までも頼るべき親を失ったエンゾ、そのまま7年が過ぎた頃、彼の元に1通の手紙が届きます。

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それは消えた母からでした。ただし、この時点で母親が実は捨てっぱなしであったわけではなく、一応あの森に戻ってきたことをことを私たち観客はは知っています。抱き合う2人。その昔、森の中でダミアンは幼いエンゾに言いました。「母親が戻ったら、この小さい冒険の事を話してやれ。」と。エンゾがそれを覚えているか否か、それは個々人の想像にしかなりませんが、私はきっと話して聞かせるのだろうと思いたいです。

個人的オススメ度3.5
今日の一言:ギョーム・ドパルデューの冥福をお祈りします。

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