ミーシャ/ホロコーストと白い狼
ミーシャ・デフォンスカのベストセラー小説、『少女ミーシャの旅』の映画化作品。主演はこれがデビュー作で弱冠11歳のマチルド・ゴファールちゃん。今までにも多くの作品のテーマとなってきたホロコースト、本作はその難を逃れた少女ミーシャが両親を探して過酷な旅をするというお話。ぱっと聞いただけだと『母を訪ねて三千里』を思い出してしまうのですが、さてどんな旅だったのでしょうか…。
>>『ミーシャ/ホロコーストと白い狼』公式サイト
旅と言うにはあまりに過酷−
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強制収容所にいれられてしまった両親を追いかけて3000マイル(4800km)もの過酷な旅をする少女を描いた作品です。当然というか「母を訪ねて三千里」を思い出す方が多いかとは思いますが、あんな生易しいものではありません。ただ、だからといって悲惨一辺倒かというとそうでもなく、主人公ミーシャ(マチルド・ゴファール)が時折見せる子供らしい笑顔や振る舞いに救われる、そんな作品でした。


舞台は1942年のブリュッセル。ただし最初は何処だか解りません。とても可愛らしい天子の笑顔がまぶしいミーシャは、優しい母とハンサムな父の3人で隠れながら暮らしています。両親の大きな愛に包まれて、ほかのその年頃の子がそうであるように、ちょっと我儘でおませな女の子でした。父が母と親しくすると「ママは私のもの!」と怒るミーシャに、母は「ママは2人のものよ。」と言って聞かせます。見るからに中睦まじいこの家族、しかしある日ミーシャが学校に言っている間に、ユダヤ人の両親はドイツ軍連行されてしまったのでした。


ミーシャは、一時はかねてから両親が手を打っていたベルギー人の一家に引き取られるますが、やがて両親のいる収容所が東にあることを知ると、一人東に向って旅立つのでした。しかし所詮子供、何の準備も無い彼女はすぐに飢えに襲われます。空腹の余りミミズまで口にするものの吐いてしまったり。それでも途中の民家で盗んだ食料で何とか凌ぎつつ旅を続けるのですが、そこにはもう甘ったれた少女の姿はなく、生きるためなら何でもするたくましい一人の人間の姿がありました。カバンから顔を覗かせている人形だけが唯一少女らしさの名残です。降り積もる雪の中を一生懸命歩き続けるミーシャの姿は観ていて切なくなりました。


旅の途中ミーシャは邦題にもある白い狼と出会います。実は彼女には動物とすぐに仲良くなれる才能がありました。独りぼっちの旅の仲でであった、唯一の友達。彼女は狼の獲って来たウサギを何の躊躇もなく生のまま齧り付くのでした。ここは思わずドキッっとさせられるシーンです。極限の飢えの状況、そしてむしろ子供だからこそ生存本能のままに動物と化する事が出来たのでしょう。この後にも狼の獲物(当然肉食なので他の動物)を生のまま口にするシーンが何度か出てきます。口の周りを血まみれにし、その血を狼が舐めている様子は完全に狼の群れの一員になったかのよう。つやつやだった肌も、がさがさで傷跡やできものができています。


ただ、余りにも過酷な彼女の旅は、一方でどこか映画的というか、現実離れした雰囲気を放っていたように感じました。あくまでも“どことなく”ですが。それはミーシャが8歳という設定(マチルド・ゴファールは11歳)だからでしょうか。普通に考えたら絶対不可能なことをしている訳です。本作は良い意味でフィクション小説の『少女ミーシャの旅』を映画化したもので、『ディファイアンス』や『シンドラーのリスト』といったホロコーストをテーマに描いた作品とはイメージが弱冠異なります。それにしても“ホロコーストと白い狼”という邦題はちょっと誤解を招くかもしれません。

さて、そうは言いつつもラストシーンではホロリと来ました。過酷な旅から解放されたミーシャを待っていたのは意外な結末です。3000マイルの旅はフィクションだとしても、ミーシャと同じ境遇の子供たちは確かに無数にいた筈。その子達全てがミーシャのようにそれぞれの“過酷な旅”から解放された訳ではないことを考えると、ミーシャはまだ幸せな方だったのかもしれません。
個人的オススメ度3.5
今日の一言:マチルドちゃん、中々将来が楽しみです♪
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