モーニング・ライト
ドキュメンタリー映画ですが、ディズニーピクチャーズというちょっと珍しい作品。監督は『ペレを買った男 』のマーク・モンロー。製作総指揮にウォルトディズニーの甥のロイ・E・ディズニー。ヨットの大会に参加する青年たちを、オーディションの段階から追った記録であり、ドキュメンタリー。ヨットの大会といったらアメリカスカップ位しか知らない私ですが、ドキュメンタリー好きの血が騒ぎ観に行ってきたのでした。
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海が彼らに与えたもの
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ヨットの大会といったらアメリカスカップしか知りませんし、専門用語はまったく解りませんでしたが、そんな知識は不要なほど熱く引き込まれました。本作は製作総指揮のロイ・エドワード・ディズニーのプロジェクトで、彼のヨット「モーニング・ライト」のクルーを募集し、訓練→選抜の後“トランス・パシフィック・ヨット・レース(トランスパック)”に参加する一連をカメラで記録したものです。日本でいうとその昔放映していた『ガチンコ』的なノリかもしれません。が、そのために本物のヨットを用意するんですから、スケール感が全く違います。


最初に選ばれるのは15人、4ヶ月の訓練で大会に実際に参加できるのは11人です。18歳から23歳までの青年たちはプロ顔負けの経験者もいれば、2年という初級者も。厳しい訓練の様子、その中で語られる参加者のインタビュー、そしてコーチたちの回想インタビューという3つの要素で作品は進んで行きます。軽快なBGMが海中からの映像になるとくぐもった音になる演出は、作中度々使われていますが、コレが現実の出来事なのだと思い出させてくれるのでした。


ヨットでは艇長のことをスキッパーといい全てを統括するリーダーの役割なのですが、コレにメンバー全員一致で選ばれたのは通称トロールと呼ばれるジェレミー。彼は父親はプロのヨットマンで、兄も大会で何回も優勝経験を持つヨットマン一家。いわゆるサラブレッドというやつです。それでもちょっと驚いたのは、11人のメンバーを選ぶのがスキッパーのトロールだったこと。てっきり教えているコーチが選ぶのだと思っていたし、実際トロールの選び方に異議があったコーチもいたようです。


4ヶ月も厳しい訓練を共にした中から、断腸の思いで4人を控えに回したトロールの決断、スキッパーとしては必要な決断力なんでしょう…。さて、このトランスパックという大会、ロサンジェルスからハワイのホノルルを目指すヨットレースで、彼らはTP52というクラスのヨットで出場します。戦前の予想ではプロのヨットマンたちのチーム「サンバ」と「モーニング・ライト」の一騎打ち。これが本当に文字通り一騎打ちでした。4120キロにも及ぶ行程、それも太平洋の真ん中で「サンバ」と「モーニング・ライト」が僅か2挺身半の差で追走する様は緊張感で手に汗握ります。


抜きつ抜かれつの展開、デッキ上でスキッパーの指示に従いそれぞれの役割を全力で果たすクルー、天気図を睨みながら進むべき方向と風の強さを予測しライバルに少しでも差をつけようとする頭脳戦、手持ちカメラの映像や夜間のナイトスコープを使ったモノクロ映像はドキュメンタリーならではの迫力と緊張感を伝えてくれます。単なるレースの迫力に留まらず、密度の濃い12日間を過ごすことになった彼らの絆、特にトロールの言った「完璧じゃなくても、僕らのチームは最高だ!」ってセリフには感動しました。


エンドロールではクルーたちのその後が映し出されます。プロのヨットマンになった者、別の道を選んだ者、行き先は様々でしたが、二度と得がたい貴重な経験をした彼らは、この後どんなことでも乗り越えられる自信を得ていました。本作は東京と千葉の僅か2館での上映、しかも7月3日(金)までの3週間限定公開だとのこと。こんなに面白いのに何故だろう?是非見て熱くなって欲しいです。
個人的オススメ度3.5
今日の一言:ヨットに詳しい人はより楽しめるでしょう。
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