浪漫者たち
『能楽師』、『みやび 三島由紀夫』といったドキュメンタリーフィルムを手がけてきた田中千世子監督作品。今回は、主演に劇団燐光群の伊勢谷能宣を起用したセミドキュメンタリーとなっています。ちなみに伊勢谷能宣は映画デビュー作。共演に演技派俳優・佐野史郎も出演とあって、何とはなしに興味をそそられたのでした。どんな作品なんだろう?
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古き良き日本を感じる-
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全てを完全に理解するには私の文学的素養が足りなかったです。そもそも“浪漫”と聞いてまず思い浮かぶのが「浪漫飛行」なレベルなので…。(苦笑)それでも登場する三輪の大神神社(おおみわじんじゃ)や付近の風景、伊勢谷さんが梅若靖記(うめわかやすのり)さんに能の稽古を付けて貰う風景、中村洋子さんにお茶を点ててもらう風景、そういった日本的、伝統的な風景に古き良き日本を感じられました。
この作品のキーワードは「日本浪漫派」。文学的な用語ではありますが、調べてみると要は「日本の伝統への回帰」を礼賛した文学思想(wikipedia)で、その機関紙の名前でもある、ということらしい。しかし何で「日本浪漫派」なんだろう?観ている最中には解らなかったのですが、今よくよく思い起こしてみると、実は主人公である伊勢谷さんが自然と「日本浪漫派」的行動を取っていたことに気付いたのでした。
物語は主人公・伊勢谷さんの芝居の稽古風景から始まります。「前夜」というタイトルのこの芝居、私はいかにも学生が芸術してます風のこの手の作品は大の苦手…。それはさて置き、そこで物語はいきなり一年前に遡るのでした。伊勢谷さんは演技の勉強のために能を習い始めます。ちなみに能って普通に習えるんですね、初めて知りました。また、更にその後、誘われてお茶を習い始めたり、「日本浪漫派」の中心人物である保田與重郎の小説を読んだりと、伊勢谷くんの行動は明らかに“伝統へと回帰”しています。
そして能の師匠である梅若靖記さんの仕舞う「三輪」に魅せられた彼は実際に舞台となっている三輪の大神神社に向かうのでした。そこで佐野史郎扮する謎の紳士と出会います。この紳士が実に面白いというか、変わったキャラクター。蛇皮の靴にウクレレ?を抱いた怪しさ満点の紳士に、伊勢谷さんはあからさまに不快感を示します。しかし、意外にも紳士の古典文学の知識はとても豊富。何も知らない伊勢谷さんの「(授業で)古文とってなかったんで。」と言い訳に対して「ゆとり世代かぁ?」とからかう始末。この辺り佐野史郎“らしさ”が光る怪演でした。
実は伊勢谷さんのことは本作で初めて知ったのですが、さすが演劇が本職の人だけあって、表情が非常に豊かな演技でした。もっとも若干オーバーに過ぎる感じもしなくは無いですけども。前記した不快感やからかわれた苛立ち・悔しさ、後で出てくるとある女性に絡んだ嫉妬など、その時々の感情が観ていてすぐ判ります。大学生役を自然にこなしていましたが、既に30代だということで、ちょっと驚き。今後はもっと他の映画作品で観て見たい人です。
タイトルの『浪漫者たち』というのは、この伊勢谷さんを含め、「日本浪漫派」に惹かれた人が多く登場するからなのでしょう。本当の意味で本作を理解したとは思っていませんが、それでもたまには忘れていた日本を思い出させてくれる様な作品も良いものです。
個人的オススメ度3.0
今日の一言:私のような素人は雰囲気重視で♪
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