ラッシュライフ
難解さが段々クセになってきた…
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実は今『重力ピエロ』の原作を読んでいます。そろそろ伊坂作品の1つぐらい読んでおこうという軽い気持ちからなのですが。そんな訳で、もちろん本作の原作は未読。しかし映画作品はここのところブームでもあり、、本作も観ておこうというある種ミーハーな鑑賞理由だったりします。あとは堺雅人さんが出演しているからかな。劇場は新宿バルト9、コレが私が観た時点で次回まで完全満席。それもそのはずで、全国で公開しているのはここのみという完全単館上映なのです。東京芸術大学映像研究科の学生たちが企画プロデュース、制作、配給まで行っている関係上全国ロードショーは無理なんでしょう。余談ですが公式サイトも東京芸術大学のドメイン直下にあったりします。


この作品は一見すると4つのストーリーのオムニバス仕立てですが、実は4つで1つの長編にもなっています。それぞれの話が必ず他の3つと絡み合っているという、ちょっと『フィッシュストーリー』を思わせる構成でした。ただし4つのストーリーが最終的に一点に集約はしません。その代わり、絡み合い交錯することで各ストーリーの主人公たちは何らかの結果を得ることになります。4人の主人公とは河原崎(柄本佑)・黒澤(堺雅人)・京子(寺島しのぶ)・豊田(板尾創路)。そしてこの4つのストーリーが合わさって出来る長編ストーリーの最初と最後に戸田(団時朗)とソナ(MINJI)の2人が登場します。


さて、ここまでで既に十分複雑ですよね。河原崎は神に憧れる青年で、彼がとんでもない事件に巻き込まれるところから「河原崎編」はスタートします。感想を一言だけ。結構グロいです。ある程度の覚悟をしておいてください。宗教団体が舞台になっているせいか、人間の狂気や心の闇がひたすら描かれます。正直もう結構と思いかけたその時、颯爽とした姿の堺雅人がスクリーンに登場すると、心に立ち込めた重い霧を吹き払ってくれるような、ある種の快感を覚えました。堺雅人…なんてハンサムなんだ!ほかにもギミックはありますが、ここは敢えて書きません。


堺雅人の登場とともに「黒澤編」は始まります。黒澤は独自の美学をもった泥棒でした。というか「黒澤編」は堺雅人がもつ独特の雰囲気が全開になっているパートです。多分4つのストーリー中一番楽しく観られるパートと言って差し支えないかと。ある日黒澤が泥棒に入った先でばったりと出遭ったのは、なんと別の泥棒。と思いきや学生時代の友人だったのでした。お金に困っている友人。その原因は彼の妻との不仲だったのです。妻は京子という女でした。という訳でおもむろに「京子編」はスタートします。


京子は不倫相手の男の妻を殺そうと彼の別荘に向っています。3パート目となるこの辺りから、過去に見てきたパートと絡み合いが複雑になるとともに、今度は同じパートの中でも時系列を飛び越えた絡みまで出てきます。京子を演じる寺島しのぶの勝気な演技は最初は良いものの、何度も繰り返されるとイラつきました。さて、ここまではパートの終わりが次の人物へのアクセスになっていましたが、4つ目の「豊田編」は違います。まあ「京子編」をしっかり観ていれば何となく想像はつくのですが…。


家族も仕事も失って街を彷徨う豊田の元に1匹の犬がコインロッカーの鍵を咥えてやってきます。ロッカーの中から出てきたのはなんと拳銃。豊田はそれを持って自分をクビにした上司を殺しに出かけるのでした。こういうシュールな役は板尾さんにはピッタリです。ある種の凄みを感じさせる演技、そしてそのまとっている狂気は…そう「河原崎編」で感じたものと同じでした。ぐるっとまわって頭に戻る?しかしそれだけではありません。他のパートでの伏線がここにきて活き始め、しかしそれは偶然の産物として豊田の前に出現するのです。豊田の結末はこの「豊田編」の結末であるとともに「ラッシュライフ」の結末でもありました。
「ラッシュライフ」の意味するところは「Lush Life=豊かな人生」という意味です。4つのパートの主人公は豊かな人生を送れるようになったのか。私には微妙に感じられました。
個人的オススメ度3.0
今日の一言:さすがに『重力ピエロ』には敵わないかなぁ…
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