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2009年6月25日 (木)

幼獣マメシバ

Photo 個人的には日本の俳優の中でも5本の指に入るほどの個性派だと思っている佐藤二朗の主演作品。共演に安達裕実、渡辺哲、藤田弓子、笹野高史、石野真子らも出演します。監督は『ネコナデ』の亀井亨。『ネコナデ』は薄い茶と白の混ざったとても愛らしい猫で癒されましたが、今回は柴犬の子犬、マメシバが登場します。猫派の私ですが、さすがにマメシバの愛らしさは反則ですね。
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二朗ちゃん面白すぎでござる!

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何度かこのブログでも書いていますが、私は子供の時のトラウマで犬を本能的に苦手としています。その私の足を劇場に向わせるとはマメシバ実に恐るべし!正確にはマメシバという品種は500頭位しかいないらしく、劇中でマメシバと呼んでいるのは、あくまでも柴犬の子供だそうです。しかしそんな能書きはあの愛らしさの前では全くどうでもいいことでした。二郎の布団にもぐりこんだりするマメシバ・一郎の愛らしさといったら!しかも本作はそのマメシバの愛らしさを堪能しつつストーリーもしっかり堪能できる作りになっています。

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とかく動物をタイトルに謳った作品で、その動物を全く活かせないか、或いは動物に偏りすぎてしまう作品が多い中本作は違いました。登場するマメシバの一郎は主人公・芝二郎(佐藤二朗)とその母親を繋ぐ存在であり二郎の唯一の友達で、過剰なフィーチャーも無いけれども、その存在感はきっちりと確保されていたのでした。物語は実にシンプル。家出した母親の作戦で一郎と出会ったのをキッカケに、二郎が母親を捜しに行く物語です。

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さて、一郎の愛らしさに負けていないのが二郎のキャラクター。35歳でヒキコモリ、でもこれが意外と他の人と会話はします。そしてその他人との会話が妙に噛み合っているのに、会話の中身は全く噛み合わないというのが実に面白い。二郎の言葉は時に辛らつですが本人にしてみると悪気はありません。しかも良く聞いていると意外に論理的だったりします。二郎の会話を聞くということ自体がこの作品の見所の一つでしょう。

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そもそも嫌なことは忘れればいい、人に嫌われたらヒキコモればいい、そう考えている彼にとって普通の人のように場の空気を読むことは意味の無いこと。しかしそうやって逃げ道を用意してひととの係わり合いを持つということは、逆に言えばそれは不安の裏返しでもあります。つまり二郎は人に自分がどう思われているのかが気になってしょうがない、良く言えば繊細な人間なのでした。実際劇中でも、赤の他人の心の声が聞こえて苦しむ二郎の姿が描かれています。

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ところでそんな彼と母を捜す旅に何故か一緒についてくるのが安達裕実扮する巻可蓮。私は今まで安達裕実といえば子役時代のイメージがどうしても抜けなかったのですが、本作で初めて美人だなぁと実感しました。と同時に、自分の立位置をしっかり把握した良い芝居が出来ていたように思います。最初は可蓮の手を借りて一郎を他人に譲ろうとしていた二郎でしたが、次第に一郎を大切にし始めます。自分の感情を表現するのが下手糞な二郎にとっては、一郎とは本能で付き合えるたった一人(一匹)の友達になっていくのでした。

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それだけに物語の途中で一郎を失ったときの二郎の落胆振りはそれは眼も当てられないほどであり、そこから再び一郎に出会う時のシーンは犬と人間との間に築かれた信頼関係が垣間見えて感動したのでした。自宅のヒキコモリからスタートし、何故か富士山に登るハメになり、ラストでは…。スケールは大きくなっていくものの、相変わらずな二郎。個性派俳優・佐藤二朗、彼の怪しげな雰囲気をそのまま活かした、予想以上に見応えのある作品でした。

個人的オススメ度3.5
今日の一言:脇役がこれまた実にいい味出してるって寸法。

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