The Harimaya Bridge はりまや橋
静かな訴えが心に響く
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物語は英語をベースに進んでいくものの舞台は日本、そして日本人が日本語で話すとそれに英語の字幕がつくという、あまり見掛けないパターンだなと思ったら、そもそも監督がアメリカ人、そして出演だけじゃなくて製作総指揮がダニー・グローヴァーでした。この人、決して派手なタイプではありませんが、実に味のある演技をする方で、本作も彼の人となりがよく表れているようなじっくりと見せる人間ドラマでした。


監督自身が1年間高知県で英語の教師をしていたというだけあって、いわゆる観光地としての高知ではなく、地元密着型の映像作りになっています。ちなみにこれは普通のフィルム撮影なんでしょうか?スクリーンに映し出される高知の山々や田園風景、田舎町、そこに暮らす人々、その全てが非常に美しいのです。技術的にいえば解像度が高いとでもいうのかもしれませんけど、それよりもウルフォーク監督と監督がプロフェッサーと敬愛する撮影監督の中堀さんの力で日本らしさを見事に切り取った映像でした。


そんな美しい高知の山の中の学校で英語の教師をしていたミッキー。彼が事故で亡くなったとの知らせがアメリカに届き、父親で写真家のダニエルがこの地を訪れるところから物語りは始まります。ダニエルは息子が描いた全ての絵を持って帰ると言うのでした。アテンド役・原結子(清水美沙)は英語がしゃべれるということでかいがいしく彼の世話をします。清水美沙は前作『レインフォール/雨の牙』でもゲイリー・オールドマンと英語での掛け合いシーンを見せてくれましたが、最近の彼女はそういう役回りなんでしょうか?


ミッキーが子供たちのために学校に寄贈した絵までも持ち去るダニエル。実はそれには理由があります。ダニエルの父親は第二次世界大戦で日本兵に殺されたのでした。つまりそもそも日本に対する悪感情があった上に、日本で最愛の息子を失ったことで、ますますその心を閉ざしてしまった訳です。しかし、息子ミッキーの愛する久保紀子がミッキーの子、すなわち自分の孫を生んでいたことを知ったあたりから彼の心は徐々にほぐれて行きました。


しかし本作はただ単に家族の情愛だけを訴えるだけではありません。戦争で死んだ日本兵の集団墓地にダニエルを連れて行ったり、久保の両親の家を訪れたり、原の過去をカミングアウトさせたりすることで、憎しみや差別からは何も生まれないのだということをも訴えかけています。そしてミッキーの、愛する自分の息子の夢が小さな美術館で実現されていることを知ったダニエルの顔からは、来日当初の険が取れていくのが見て取れました。それまでは玄関で乱暴に靴を脱ぎ散らかしていたのが、きちっと脱いで揃える様になったりと、心情の変化を表す細かい演出が巧みです。


はりまや橋の伝説を紀子がダニエルに話して聞かせるシーンでは、黒人と東洋人、アメリカ人と日本人という垣根を越えた結びつきを感じさせてくれます。きっと監督自身が日本に来て体験したこと、乗り越えてきたこと、そういう諸々の想いを込められたシーンだったのだと思います。ここまで日本を日本人以上に理解して、日本らしく描いてくれた外国人監督は初めてかもしれません。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:今風のよさこい踊りが中々いいです♪
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