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2009年7月 6日 (月)

蟹工船

Photo_2 今再び脚光を浴びている小林多喜二のプロレタリア文学の名作を、『弾丸ライナー』のSABU監督がポップにアレンジし映画化。主演は『剱岳 点の記』の松田龍平。共演に『パッチギ』の西島秀俊、『フィッシュストーリー』の高良健吾、新井浩文、柄本時生らが名を連ねている。現実の労働環境悪化を背景に製作されたのこ作品、注目の一作です。
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本物がない作品は空虚だ。

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原作未読であり、1953年に映画化された作品も未見の私でしたが、想像していたのとは随分と違う作品でした。「蟹工船」というよりは「カニコウセン」という感じ。SABU監督の手により重く悲惨な物語がどこか現実離れしたおしゃれな物語に生まれ変わっています。それが今の若い人に受け入れ易いのかどうかは私には解りませんが、現代風であろうとおしゃれであろうと、そこに本物が描かれていない作品は中身のない空虚なものです。『剱岳 点の記』のごとく、本物はそれだけで圧倒的に人を引き付ける力をもっており、本作には決定的にそれが欠けていると感じました。

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物語はカムチャツカ沖で蟹を獲り、それを缶詰に加工する船・博光丸に乗り合わせた労働者たちの劣悪な労働環境を描いています。労働者の中の一人・新庄はひょんなことから海を漂流し、ロシア船に救助されますが、そこで労働者の権利に目覚め、博光丸に帰ってから他の労働者を煽動し、今で言うところの団体交渉を行うのでした。ちなみに主人公でリーダー役の新庄ですが、原作にはそういった主人公はいないそうです。

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さて、本作は大きく2つに別けられます。前半は蟹工船に働く労働者たちの劣悪な環境や、彼ら個々人が抱える貧困や不幸、そして蟹工船が何をしている船なのかを描いています。この前半部分は何故かコミカルですらありました。新庄(松田龍平)の意見で来世を目指して集団首吊り自殺を試みるも、船の揺れに合わせて全員が右にブラブラ、左にブラブラ…。来世を想像するシーンは何故か男3人でバレーボールをしていたり…。コミカルと書きましたがむしろアホっぽいといってもいいぐらい。流石に最初は「え?この映画ってこういう作品だったの?」と思ってしまった程です。

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貧困から抜け出すために働いている彼らですが、これが松田龍平を筆頭にどうみても貧乏には見えません。というよりむしろいいとこのボンボンにすら見えます。いくら顔を汚したところで、メイクで誤魔化したところで、本質的な血色の良さや育ちの良さは出てしまうもの。妙なコミカルさと相まって悲惨さなど微塵も感じられず…。コレはコレでありなのかもしれないとは思いましたが、実際に原作を読まれた方や、昔の映画を観た方の中には大きな違和感を感じる方もいるのではないでしょうか。少なくとも私は、公式サイトにある「現代的なアレンジ」が好きではありません。

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新庄がロシアの漁船に助けられ、パーティー会場にいると、そこに現れるのは怪しげな日本語をあやつる中国人。「~~アルヨ。」みたいなアレです。一体何なのでしょう?新庄が労働者の権利に目覚める大切なシーンだと思うのですが、どうしてこんな茶化した表現をとる必要があったのか、理解に苦しみます。この後、博光丸に戻った新庄を中心として、仲間が一致団結して資本家に戦いを挑む構図はワクワクさせてくれるものがありました。そして1人1人が、それぞれの権利というものに真に目覚めていくシーンは、悲惨で劣悪な労働環境から抜け出せる希望の光を見せてくれます。この普通に描かれた部分はストレートに心に響くものを感じました。

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総じて本作の随所に見られるアレンジがSABU監督のテイストだとするのならば、かの監督のセンスを疑います。独特の作風(公式サイトより)という言葉に逃げ道を求めるようなモノづくりは本物ではありません。独りよがりな演出に失望を禁じ得ませんでした。

個人的オススメ度2.0
今日の一言:原作の優秀さを素直に引き出せば良いのに。

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 今やすっかり過去のことになってしまったが、派遣切りや派遣村で世間が盛り上がって [続きを読む]

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受信: 2009年7月 6日 (月) 07時27分

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受信: 2009年7月 6日 (月) 08時25分

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受信: 2009年7月 7日 (火) 13時50分

» 蟹工船 [象のロケット]
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受信: 2009年7月 8日 (水) 23時25分

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受信: 2009年7月 9日 (木) 11時03分

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2009年:日本映画、小林多喜二原作、SABU監督&脚本、松田龍平、西島秀俊主演。 [続きを読む]

受信: 2009年7月 9日 (木) 23時05分

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受信: 2009年7月12日 (日) 12時14分

» 『蟹工船』(2009)/日本 [NiceOne!!]
監督・脚本:SABU原作:小林多喜二出演:松田龍平、西島秀俊、高良健吾、新井浩文、柄本時生、木下隆之、木本武宏、手塚とおる、皆川猿時公式サイトはこちら。<Story>カムチャッカ沖。蟹を缶詰に加工する蟹工船・博光丸の船内では、出稼ぎ労働者たちが安い賃金...... [続きを読む]

受信: 2009年7月18日 (土) 02時10分

» 「蟹工船(2009)」 イメージせよ、行動せよ [はらやんの映画徒然草]
昨年からワーキング・プアや派遣切りなどの社会的問題の影響によって、ベストセラーと [続きを読む]

受信: 2009年7月18日 (土) 19時02分

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反撃!!!!ーーーーーー! 上映最終日これまた滑り込みーーーーー。ようやく「蟹工船」鑑賞しました。今何故に?「蟹工船」がブレイクなのだろ?とよく考えたら、社会が抱える深刻な失業事情が、この作品を呼び起こしたわけだった。考えるともう何年も前からそんなに選ぶほど良い仕事はなかったように思う。そう思うのは私だけ?かな・・・・・。 そんな事情はじりじり迫っていたのだけれど、ここ数年で大きく落ち込んだように思う。昔のように1つの会社に就職したら、定年まで同じところでというのはもう夢の話なわけで。多分今の若... [続きを読む]

受信: 2009年7月20日 (月) 19時56分

» 蟹工船 [映画君の毎日]
●ストーリー●北海道の先、カムチャッカ沖でカニを捕り、船上で加工缶詰を作る蟹工船の博光丸。そこで働く労働者は、監督・浅川(西島秀俊)の暴力と酷使に耐えながら、低賃金で重労働についていていた。そんなある日、労働者たちは一斉蜂起するが、力及ばなかった。しかし、労... [続きを読む]

受信: 2009年7月22日 (水) 20時25分

» 蟹工船 [Diarydiary! ]
《蟹工船》 2009年 日本映画 カムチャッカ沖で蟹を取り船の中で缶詰加工する工 [続きを読む]

受信: 2009年8月24日 (月) 19時23分

» 「蟹工船」 [再出発日記]
「死ぬ話をするんじゃねえ、生きる話だ」監督・脚本:SABU原作:小林多喜二出演:松田龍平、西島秀俊、高良健吾、新井浩文、柄本時生、木下隆之、木本武宏、手塚とおる、皆川猿時カムチャッカ沖。蟹を缶詰に加工する蟹工船・博光丸の船内では、出稼ぎ労働者たちが安い...... [続きを読む]

受信: 2009年9月14日 (月) 18時38分

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受信: 2009年9月16日 (水) 20時41分

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「蟹工船」 感想 たまには日本映画のレビューもかかないと 今回観たのは「蟹工船」 小林多喜二の有名な小説を映画化した作品です。 ... [続きを読む]

受信: 2010年3月 1日 (月) 19時14分

» 『蟹工船』 [『映画な日々』 cinema-days]
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受信: 2010年7月22日 (木) 01時02分

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