群青 愛が沈んだ海の色
主演は佐々木蔵之介でしょう。 |
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正直に言うとちょっと脚本に丁寧さが足りないと感じました。しかし、それを補って余る出演者の演技力。特に涼子の父・龍二を演じる佐々木蔵之介さんの熱演が素晴らしい!なんと人間味溢れる芝居なのか…。長澤まさみファンには申し訳ないけれど、本作の主演は明らかに佐々木さんだったと思います。もちろん長澤まさみさんも素晴らしい演技ではありましたが、3章仕立ての2章分にしか出てこないことと脚本の問題で、ちょっと彼女の演じる涼子の想いが伝わりにくくなっていたのが残念です。


さて、舞台は沖縄の離島・南風原島。海岸に立つ涼子=長澤まさみという、何処となく『涙そうそう』が思い出されるようなシーンから物語は始まります。本作は3章仕立て。第1章は涼子の父・龍二と母・由起子の出会いから涼子が産まれ、同じ歳に島で産まれた2人の男の子・一也や大介とともに成長していく様子が描かれています。この章では、龍二が由起子に対する愛情の証として獲ってきたサンゴの欠片が登場しますが、これが後々悲劇の原因となるのでした。都会から来たピアニストの由起子がピアノを弾き、龍二が赤ちゃんの涼子をあやす…ほんの短いシーンでしたが、この家族がとっても幸せだったと言うことが良く伝わってきます。


第2章では涼子たち3人も高校生になり、それぞれが大人の道を歩き出します。大介は那覇の大学に進学しますが、送別会の席で一也に告白の歌を贈られた涼子は、島に残ることにし、彼との結婚を決めるのでした。一也は龍二に一人前の海人と認めてもらうため、サンゴを獲りに出かけ亡くなってしまうのでした。この章では龍二・一也・大介という涼子を中心とした3人の男性の心情が素直に描かれています。娘を想う父の気持ち、涼子を想う一也の気持ち、そして本当は自分も涼子を好きな大介の気持ち。


ただ残念なのは、このパートの涼子と一也の2人の描写がちょっと甘い。告白の歌一つで結婚まで考えてしまう女の子とは今時おおよそ現実的ではありません。仮に涼子がそういう女の子だとしても、この2人がそれほどまでに愛し合っているとことはスクリーンからは感じられないのです。それらしい描写も殆どありませんし。第3章では一也の死にショックを受けた涼子が立ち直るまでを描いていますが、一也の死で精神的に異常をきたしてしまうほど愛し合っていたようには見えないですし、少なくとも私にはそうは伝わってないです。


涼子のために島に戻ってきた大介、好きな女の子が振り向いてくれない、自分以外の男を愛している…。でもその子が辛い時、傍にいて欲しいと言われたらいますよね。大介の置かれた辛い立場は男なら誰でも心が痛むのではないでしょうか。切ないです…。結果的に涼子は大介の命がけの行為で少しだけ立ち直ることが出来るのですが、個人的に涼子にはちょっとイラつきました。大切な人を失う悲しみは誰でも同じなんです。それでも生きていかなきゃならないんです。全てを放棄して1年以上も一人殻に閉じこもるのは甘えです。キツイ言い方をすれば、病気だからで済まして良いはずがないんです。


この章でも佐々木さんの演技は光っていました。特に印象的だったのは、由起子の形見のピアノの弦を切ってしまうシーン。涼子は夜中に突然ピアノを弾き始めますが、曲になっていないそれは村中に騒音を撒き散らします。村人は気にするなと言ってくれますが、一也の死に責任を感じていた龍二は「そうするしかなかった。」と苦渋の決断をするのでした。不器用で口下手な海人、しかし単に無口ではなく言うべきとき言うべきことはしっかりと言う、頼りになる父であり、優しい父。しかしその優しさが涼子にとっては仇になったのかもしれません。ただいずれにしても、佐々木さんの人間味溢れる演技には魅せられました。
個人的オススメ度3.0
今日の一言:島の生活は昔の田舎の夏休みを思いだすなぁ
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