未来の食卓
最近多い食に関する作品。フランスのバルジャック村が学校給食を全てオーガニック食品にするという試みを中心に、食と環境、健康の係わりを描いたドキュメンタリーフィルムです。監督のジャン=ポール・ジョーはいわゆる専業映画監督ではなく、元々はテレビ番組のディレクター。自身ががんをになったことがこの作品を製作するキッカケなんだそうです。農業大国フランスでのこの試みはどんなものなんでしょうか。
>>公式サイト
それじゃ日本では何が出来るの?
あらすじへ
←みなさんの応援クリックに感謝デス
「オーガニックとは?」と尋ねる老人に「自然のまま。」と答える無邪気な少年。そうか、そうなんだ…と目から鱗な気持ちで観ていた予告編。じゃあもうちょっとそのオーガニックに関して知りたいなと言うわけで鑑賞してきました。今までも食に関する映画はいくつもあり、いずれも一方的な啓蒙臭さが気に入らずどれもスルーだったのですが、予告編の見せ方によってはお客さんを引き込めるものなんですね。それはさておき、この作品はフランスのバルジャック村という小さな村で学校給食と老人への宅配給食を全てオーガニック食品にするという試みを1年間追いかけたドキュメンタリーフィルムです。
冒頭いきなりユネスコでの会議の様子から始まるのはちょっと意外でした。そこで発表されていたのは、がんや糖尿病などの病気の70%は生活習慣を含む環境に原因があるということ。しかしどうも私はこの手の欧米の調査結果が信用できないのです。先進的な結果であるものの、まず結果ありき、それも悪い結果ありきのような気がしてならないんですね。ともあれ、オーガニックと環境要因がどのように結びついていくのか、そこに関しては興味を抱いたのでした。
さて、調査結果に納得したかどうかはともかく、病気の原因に少なくとも農薬の影響ががあるということはバルジャック村でのとある映像を観てすぐに納得でした。作業車で散布する農薬、その運転手は宇宙服のようなスーツを着込んでいます。そんなに完全防備でなければ体に影響が出るような薬物を使って作った作物が体に良いはずがありません。しかもインタビューを受けた農家の女性は、夫が散布する農薬を調合するたびに鼻血を出したり、8日間排尿出来なくなる人もいると訴えます。そして当然ながらその影響はこの地域の子供たちにも及んでおり、娘ががんになった母親は、のインタビューでは、母親の悔やんでも悔やみきれない後悔の念が滲み出ていました。
そこでバルジャック村。給食全てをオーガニックに変えるだけでなく、子供たちに自分で野菜を作らせたり、その両親を招いたディスカッション、更には一般農家とオーガニックを取り入れている農家の意見交換会を開いたりと、様々な活動をしています。中心となっているのはショーレ村長。彼の願いはただ一つ「子供たちの未来を守ること。」でした。オーガニック作物は高価だという主張にたいして彼の理屈は明快です。それは「実は一般作物の方が高いのだ。」ということ。大量の農薬を使って作った作物の値段は本来ならば今の4~5倍はするはずだけれども、政府からの補助金で安くなっている、それは即ち税金を農家にばら撒いて危険な作物を作らせているのだと。
彼はその補助金を全国の給食のオーガニック化に使えば、オーガニック作物の需要も増えて価格も抑えられると主張します。究極的にはオーガニック作物を地産地消することで、運送時に発生するCO2の削減にも繋がるというところまで踏み込んだ発言もありますが、そこは農業大国フランスだから言えるのでしょう。振り返って日本の場合を考えると、まずは食料自給率を上げないことにはオーガニックも何もないのではないか…そんな風に思います。政治的な主張はさて置き、オーガニック給食を美味しそうに食べる子供たちの表情が活き活きとしており、更に豊かな自然の中でそれと調和して生きる村の人々を見ていると、人間らしい生活とはこういうことなのかなと考えさせられたのでした。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:映画と言うよりNHKあたりで放送して欲しい内容です
| 固定リンク
最近のコメント