ノーボーイズ、ノークライ
『ザ・マジックアワー』、『感染列島』の妻夫木聡と『チェイサー』のハ・ジョンウが共演。監督が『ドント・ルック・バック』のキム・ヨンナム、脚本が『ジョゼと虎と魚たち』の渡辺あやという日韓の豪華な俳優とスタッフが終結した合作映画。韓国からの密輸をしているヒョングと、それを受け取る組織の構成員・亨はとある事から同じ運命のレールを辿ることになるのだった…。 >>公式サイト |
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あの衝撃の問題作『チェイサー』で恐ろしいほどの人間の心の闇を見せ付けてくれたハ・ジョンウの最新作です。もう随分前に前売券を購入して心待ちにしていた作品。今回は日本が舞台で、ヒョング(ハ・ジョンウ)は密輸の運び屋ではあるものの、ごく普通の青年。それでもやっぱり好演を見せてくれました。彼の演技を見ていると、飾らない人間臭さや、表には見えない心の内を表現するのが非常に長けていると感じます。一方の妻夫木くん、今回は殆どが韓国語でのセリフでしたが、何でも猛特訓をしたそうで、素人の私からしたらかなり自然な韓国語で演じていました。
本作に搭乗する2人、享(妻夫木聡)とヒョングは対照的な男として描かれています。享の妹は組織のボス・ボギョンの息子・隆司(柄本佑)の妻。その関係で享は組織の下っ端として働いていました。そして妹・奈美が生んだ3人の子供(内一人は重病)とボケた母親、それに奈美本人の6人で狭い家に住んでいます。一方のヒョングは幼い頃に母親が弟を連れて出て行ってしまい、ボギョンに拾われた身。ボギョンはそんな彼に、実の息子・隆司とヒョングは兄弟だと思っていると言いますが、そもそも本人たちはそう思っていません。つまり享には守るべき家族がいて、ヒョングにはそれがないのです。
人一倍家族の絆を大切にする韓国人に家族がおらず、家族の形が崩壊しつつある日本人に大家族がいる…。持たざる者はヒョングだけ。これは観ていてかなり皮肉でした。しかし、大家族を養い、病気の子供に治療を受けさせたい亨にはそれはそれで悩みは尽きません。堤防の上でヒョングと話すシーン、「(家族なんか)みんな死んでしまえばいいのに。」という亨の言葉がとても印象的でした…。ある日、亨はヒョングが韓国から荷物として運んできた女性チスを自宅に匿まうことになります。
金のために組織を裏切りチスの父親を探すことにした亨。ヒョングもある弱みを亨に握られ、渋々ながらそれを手伝うことに。ところが当初は気乗りしないヒョングが、享の家で享の家族と生活するうちに、その温もりに触れ次第に心を開いていきます。赤ん坊を抱っこして浜辺に座るヒョングの表情はとても優しいものでした。最初はちょっとギスギスしていた享とヒョングも次第に兄弟のように仲良くなります。象徴的だったのが町のカラオケ大会のシーン。やることなすこと思うように運ばない苛立ちを歌にぶつける享でしたが、そこにヒョングは飛び入り参加、2人は実に楽しそうにパフィーを熱唱するのでした。
実はこれには伏線があります。物語の冒頭でカラオケを熱唱するヒョングは、隆司に一緒に歌おうと誘うのですがまるで他人のように無視されます。兄弟のはずの人間とは歌えず、他人のはずの享とはこんなにも楽しく歌える。この時ヒョングは、ボギョンには親に捨てられた自分を拾ってくれた恩はあるけれど、そこにいるのは家族ではなかったとハッキリ気付いたのでしょう。ところで実際に試写会の挨拶で妻夫木くんは、ハ・ジョンウの事を「良いアニキが出来た。」と言ってますし、ジョンウも妻夫木くんのことを「大切な親友が出来た。」と言っています。まさしくこのシーンの2人は心が通じ合っていました。
全てが上手く回り始めようとした矢先に突然訪れるこのラストには正直驚きます。何も持たざるヒョングが唯一手にした享との絆、しかし享を守るためにそれをも捨てたヒョングに残されたのは自らの生命のみ。あまりにも不条理な現実が切ない…。一方で家族の絆、友情を描きつつ、他方では容赦ない現実を見せるこの描き方は賛否が分かれるのではないかと思います。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:この終わり方は韓流?渡辺流?
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» 〜『ノーボーイズ,ノークライ −泣かない男なんていない−』〜 ※ネタバレ有 [〜青いそよ風が吹く街角〜]
2009年:日本+韓国合作映画、キム・ヨンナム監督、渡辺あや脚本、妻夫木聡、ハ・ジョンウ主演。 [続きを読む]
受信: 2009年8月25日 (火) 22時13分
» ノーボーイズ、ノークライ [映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP]
孤独、絶望、怒り。何もかもがグチャグチャに混ざって出口さえ見えない。だが、どうしようもない状況の中にも必ず希望はあると、この不思議な手触りのドラマは教えてくれる。韓国人ヒョングは古いボートで海を渡る違法の運び屋。ヤバそうな荷物を海岸で受け取る日本人青年の....... [続きを読む]
受信: 2009年8月26日 (水) 00時00分
» ノーボーイズ,ノークライ [そーれりぽーと]
『チェイサー』で演じた犯人役ではその底知れない演技力を見せつけてくれたハ・ジョンウと、妻夫木聡が共演。
脚本は渡辺あや、監督はキム・ヨンナム、資本は韓国、舞台は日本と、あらゆる意味で日韓共作なミックス感が楽しみな『ノーボーイズ,ノークライ』に大注目して観てきました。
★★★★
日本と韓国をまたぐ闇社会をベースにして、見事に二つの国の距離感を埋めた脚本の発想に感心しっきりで観ていました。
日本語とハングルのミックス感以上に、韓国映画と邦画の全く違う空気が巧く溶け合っているところもイイ!
わざとらし... [続きを読む]
受信: 2009年8月26日 (水) 00時19分
» 映画「ノーボーイズ、ノークライ」@一ツ橋ホール [masalaの辛口映画館]
試写会場は9割くらいの客入りだ。 映画の話 密輸組織の頭・ボギョンに可愛がられ、麻薬の密輸と知らずに運び屋をしていたヒョング。ボギョンに命じられ日本でヒョングの面倒をみる徹。荷物の取扱ミスをしたふたりは、組織から追われる身となる。 映画の感想 日本...... [続きを読む]
受信: 2009年8月26日 (水) 00時50分
» 『ノーボーイズ、ノークライ』 (2009)/日本・韓国 [NiceOne!!]
原題:THEBOAT監督:キム・ヨンナム脚本:渡辺あや出演:妻夫木聡、ハ・ジョンウ、チャ・スヨン、徳永えり、イ・デヨン、貫地谷しほり試写会場 : 一ツ橋ホール公式サイトはこちら。<Story>韓国から来た男は、背中を丸め必死に“何か”を抱え込んでいた。岸辺で...... [続きを読む]
受信: 2009年8月26日 (水) 13時07分
» ノーボーイズ,ノークライ (試写会) [風に吹かれて]
目の前に妻夫木くんが~~~! 公式サイト http://www.noboysnocry.com8月2 [続きを読む]
受信: 2009年8月26日 (水) 13時43分
» 「ノーボーイズ・ノークライ」家族の愛情と友情を深めて知った守りたい人 [オールマイティにコメンテート]
「ノーボーイズ・ノークライ」は裏世界の韓国人運び屋と日本人運び屋の2人が巡り合い、ある運びでやばい物を運んでいる事を韓国人運び屋が知り、ある運びをしたキッカケで逃亡し、それを日本人運び屋が匿い一緒にいるうちに友情が芽生えていくストーリーである。日韓共作で...... [続きを読む]
受信: 2009年8月26日 (水) 21時49分
» 「ノーボーイズ、ノークライ」:北砂三丁目バス停付近の会話 [【映画がはねたら、都バスに乗って】]
{/hiyo_en2/}ここは、小名木川貨物駅の跡地。
{/kaeru_en4/}じゃあ、キムチとかも運ばれていたのかな。
{/hiyo_en2/}キムチを運ぶのは船でしょう。
{/kaeru_en4/}「ノーボーイズ、ノークライ」のボートみたいにか?
{/hiyo_en2/}そう。「ノーボーイズ、ノークライ」は、韓国に暮らすうらぶれた青年が、オンボロボートに乗って、日本に住む叔父さんに手作りキムチの壺を届けにやってくるところから始まる。日本で受け取るのが、妻夫木聡演じる、やくざな青年。ちゃんとし... [続きを読む]
受信: 2009年8月26日 (水) 22時09分
» ノーボーイズ、ノークライ(試写会) [まてぃの徒然映画+雑記]
あの『チェイサー』に殺人鬼として出ていたハ・ジョンウが妻夫木聡と共演、監督はキム・ヨンナム、脚本は渡辺あや、と日韓合作映画。チンピラのヒョング(ハ・ジョンウ)は、ヤクザの親分であるボギョンおじさんの仕事を手伝っている。それは偽ブランド品とおばさんのキム...... [続きを読む]
受信: 2009年8月26日 (水) 23時10分
» ノーボーイズ,ノークライ [象のロケット]
ヒョングは韓国からひとりボートに乗り、日本で成功したボギョンおじさんに「荷物」とキムチを届けている。 おじさんの息子の嫁を妹に持つ享がいつも出迎える係だった。 「荷物」が麻薬であることを知った後、次に運ばされたのは韓国人の少女チス。 チスはヒョングと亨に「パパを見つけてくれたら5000万円ずつあげる」と持ちかける。 享は大金を必要としていた…。 青春サスペンス。... [続きを読む]
受信: 2009年8月27日 (木) 00時37分
» ノ―ボーイズ,ノ―クライ(2009)THE BOAT NO BOYS, NO CRY [銅版画制作の日々]
二つの孤独な魂が触れ合ったとき、運命が動きだす。
「チェイサー」での演技がいまだに戦慄に記憶に残っている、韓国の注目若手俳優、ハ・ジョンウが今度は、日本の売れっこ若手俳優、妻夫木聡と共演した話題作。
「扉をたたく人」と同じく、8月22日から京都シネマで上映開始となりました。何と妻夫木聡君が全編に渡って韓国語のセリフに挑戦しています。時々日本語でのセリフもありますが・・・。また挑戦という意味では、今までの妻夫木君のイメージではない役柄ですね。う〜ん何かギャップを感じるところもありますが。だってあの... [続きを読む]
受信: 2009年8月27日 (木) 10時21分
» 映画 【ノーボーイズ、ノークライ】 [ミチの雑記帳]
映画館にて「ノーボーイズ、ノークライ」
脚本・渡辺あや、監督キム・ヨンナムの日韓合作映画。
おはなし: 古いボートで海を渡り荷物を運ぶ韓国人のヒョング(ハ・ジョンウ)と、海岸で荷物を受け取る亨(妻夫木聡)。ある日、いつもと違い、少女を運ぶ依頼を受けた二人は、彼女の父親探しに巻き込まれてしまう・・・。
ヒョングは、日本と韓国をボートで渡って荷物を運ぶ違法な仕事に心から満足しているわけではないけれど、「自分の人生こんなもん」と思っている節があります。
亨はヒョングの親分の日本側の子分で、登場シー... [続きを読む]
受信: 2009年8月27日 (木) 23時50分
» ノーボーイズ,ノークライ/妻夫木聡、ハ・ジョンウ [カノンな日々]
我らが直江兼続、じゃなくてツマブッキーが『チェイサー』のハ・ジョンウとの共演で話題の日韓合作映画です。監督のキム・ヨンナムさんの力量はわからないんですけど、脚本が『ジョゼと虎と魚たち』の渡辺あやさんということで作品的にもかなり期待してます。
出演はその....... [続きを読む]
受信: 2009年8月30日 (日) 23時11分
» 「ノーボーイズ ノークライ」 [てんびんthe LIFE]
「ノーボーイズ ノークライ」試写会 一ツ橋ホールで鑑賞
原題は「ボート」邦題の「ノーボーイズ ノークライ」は副題です。
春に韓国では公開になっていましたが「보트」(ボート)上映されました。
この方がわかりやすいと思いますけど。
渡辺あやの脚本もさながら、ハ・ジョンウの演技に注目。
日本と釜山を小さなボートで運びやをする青年を熱演。
何しろ「チェイサー」で世にも恐ろしき殺人鬼を演じたハ・ジョンウ。
妻夫木くんとの共演も面白いけれど、どうしても目がハ・ジョンウに行ってしまうのは仕方がな... [続きを読む]
受信: 2009年8月31日 (月) 22時17分
» ノーボイズノークライ [Art- Mill]
http://www.noboysnocry.com/index.html
「ノーボーイズノークライ」(原題「THE BOAT」)
地理的には狭い海峡一つがあるだけなのに、この海には強いボーダーがあることを感じました。単なる国 [続きを読む]
受信: 2009年9月 4日 (金) 23時13分
» 「ノーボーイズ,ノークライ」 [みんなシネマいいのに!]
韓国から日本へと荷物を運ぶヒョングと彼を出迎える男・亨は、ある日、襲撃を受けて [続きを読む]
受信: 2009年9月 9日 (水) 22時18分
» オチは泣き虫マーメイド?~「ノーボーイズ、ノークライ」~ [ペパーミントの魔術師]
み~んなは「どろろ」は駄作や~っていうんだけど。 ワタシはあれで完全にコロッと「ブッキー~~~!!」に なってしまったクチなので(外見かよ) そのくせ「天地人」は見てないくせに(おいおい) コレは見に行ってしまった。(コラコラ) 今年はホントに韓流スターにお..... [続きを読む]
受信: 2009年9月13日 (日) 14時46分
» ノーボーイズ,ノークライ [シネマDVD・映画情報館]
裏稼業で知り合った日本と韓国の二人の青年が、孤独や絶望の中で人間の温もりを知り、静かにきずなを深め合う過程を描く人間ドラマ。『ジョゼと虎と魚たち』をはじめ繊細(せんさい)なストーリーを編み出す渡辺あやが脚本を担当し、韓国の新鋭・キム・ヨンナムがメガホンを取る。キャストには家族への複雑な感情を抱える青年に妻夫木聡、孤独だが純粋な運び屋に『チェイサー』のハ・ジョンウがふんする。美しく切ないタッチでつづられた若者たちの心の軌跡を前に、深い余韻が胸に迫る。
予告編
ワーナー・マ... [続きを読む]
受信: 2009年9月23日 (水) 20時54分
» 【ノーボーイズ,ノークライ】 [日々のつぶやき]
監督:キム・ヨンナム
出演:ハ・ジョンウ、妻夫木聡、貫地谷しほり、徳永えり、柄本佑
-泣かない男なんていない-
「韓国から日本に住む叔父ボギョンの密輸の仕事を手伝っているヒョング。日本ではボギョンの息子の嫁の兄トオルがいつも連絡係として待って... [続きを読む]
受信: 2009年9月30日 (水) 12時31分
» ノーボーイズ・ノークライ [迷宮映画館]
男の子はつらいよ・・・かな。 [続きを読む]
受信: 2009年10月17日 (土) 21時42分
» 「ノーボーイズ、ノークライ」感想 [ポコアポコヤ 映画倉庫]
う〜〜ん・・・いまひとつだったかな・・・。
[続きを読む]
受信: 2010年5月 9日 (日) 17時44分
» mini review 10476「ノーボーイズ,ノークライ」★★★★★★☆☆☆☆ [サーカスな日々]
裏稼業で知り合った日本と韓国の二人の青年が、孤独や絶望の中で人間の温もりを知り、静かにきずなを深め合う過程を描く人間ドラマ。『ジョゼと虎と魚たち』をはじめ繊細(せんさい)なストーリーを編み出す渡辺あやが脚本を担当し、韓国の新鋭・キム・ヨンナムがメガホンを取る。キャストには家族への複雑な感情を抱える青年に妻夫木聡、孤独だが純粋な運び屋に『チェイサー』のハ・ジョンウがふんする。美しく切ないタッチでつづられた若者たちの心の軌跡を前に、深い余韻が胸に迫る。[もっと詳しく]
日韓合作映画の未来のひとつの方... [続きを読む]
受信: 2010年8月 1日 (日) 01時55分
» 「ノーボーイズ・ノークライ」不幸な日韓合... [再出発日記]
日本映画専門チャンネルで見た。2009年作品だから去年の作品なのだけど、全然知らなかった。日韓合作映画である。チェイサーのハ・ジョンウが主演。さすがにいい味を出している。し... [続きを読む]
受信: 2010年9月20日 (月) 07時25分
» 『ノーボーイズ,ノークライ』 [『映画な日々』 cinema-days]
ノーボーイズ、ノークライ
韓国プサン港と日本の山口の間を
夜な夜なボートで密輸し稼いでいる男と
彼を罠にハメ、大金をせしめようとする青年
【個人評価:★★ (2.0P)】 (自宅鑑賞)
原題:The Boat No Boys,No Cry
... [続きを読む]
受信: 2011年2月12日 (土) 18時33分
» 映画評「ノーボーイズ、ノークライ」 [プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]]
☆☆☆(6点/10点満点中)
2009年韓国=日本映画 監督キム・ヨンナム
ネタバレあり [続きを読む]
受信: 2011年2月13日 (日) 14時12分
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