里山
NHスペシャルで3回に渡って放送された同名のドキュメンタリー番組の映画版。人と自然が共存する里山の美しい四季を見つめた作品です。出演はテレビシリーズと同じく今森光彦。ハイビジョンカメラで撮影された非常に美しい映像と、どうやって撮影したのかと思わせるほどリアルな構図はそれだけで一見の価値あるまさに「映像詩」の名に恥じない作品です。
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人間だって特別じゃない…
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これといった盛り上がりがあるわけではなく、ひたすら映像力で勝負したドキュメンタリーですが、ハイビジョン撮影されたその映像力は素晴らしいと感じました。確かに「映像詩」を標榜するだけの力のある映像の数々、そして、ただ単に里山の四季を映し出しただけでなく、一体どうやって撮影したのかと思わせるほどの、手間をかけた丁寧な仕事に『剱岳 点の記』を観た時と同じプロフェッショナルの矜持を感じたのでした。うーん、さすがはNHKです。
ただし!最初にこんなことを書くのも何なのですが、虫系が苦手と言う方は観ない方がいいです。里山の自然と昆虫は切っても切り離せないもの。この作品にもミツバチ、スズメバチ、カブトムシの幼虫や成虫、クモ、そして昆虫ではないけれどヒキガエルなどが普通に登場し、しかもハイビジョン画質でスクリーンにどアップで映し出されます。特に私は苦手ではないですが、カブトムシの幼虫のどアップにはさすがに「うっ…」っとなりましたから。
しかし逆に言うとここまであからさまに観る機会というのもめったにありません。土の中のカブトムシのさなぎを様々な角度から映したり、樹液を巡って戦うカブトムシ、そして投げられたカブトムシのスーパースロー映像には驚きました。ミツバチが共同してスズメバチを攻撃したり、ヒキガエルが昆虫を捕食したり、こうした映像はは大人より子供が楽しいかもしれませんね。いずれにしろそのシチュエーションをしっかりと押さえなければならない訳で、撮影に携わった方々の苦労がうかがえます。個人的には子供に還ったようにワクワクしながら観ていましたけども。
さて、映像力の素晴らしさについて書いてきましたが、本作はそれだけではありません。映し出される里山の四季、そこで流れていく森の木々、野生動物や昆虫たちの日々の営みは全て繋がっていて、人間といえども例外ではないことをハッキリ見せてくれます。というより、里山に生活する人々は里山の中に自然に溶け込み、日々の生活を送っていると言ったほうが良いかもしれません。作中に登場する一本の老木、“やまおやじ”と呼ばれるこの老木は、森の木々の象徴でした。折に触れ、この“やまおやじ”は私たちに優しく説明をしながら映像は流れていきます。
森の木は伐採され椎茸栽培のためのホダ木になり、腐食が進んだホダ木は土に還り、カブトムシの幼虫たちのエサとなる。そのカブトムシの幼虫はイノシシたちの貴重なタンパク源。また、森の木のウロで冬を越すミツバチやカエルたち、そのミツバチが花粉を集める時に受粉して、トチの実やドングリやカキの実がなり、そこれは鳥たちやネズミ・リスのエサとなる。人間もそのカキから干し柿を作ったり。ことほど左様に里山では自然の営みの循環が実に巧みに行われていることがわかります。
“自然の恵み”という言葉がありますが、本作に登場する椎茸や干し柿そしてハチミツはまさにその象徴であり、そして同時に実に美味しそう。人間も自然の中で生かされているんだと実感できる作品でした。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:日本の原風景を見せられた気がします。
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