ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢
ミュージカルの舞台裏を描いて大ヒットした名作「コーラスライン」。本作は2006年にその「コーラスライン」を再演するために、8ヶ月にも渡って行われたオーディションの模様に迫り、受験者に密着したドキュメンタリー作品。まさに「コーラスライン」そのものを見せてくれる。監督・製作は『アイム・ノット・ゼア』のジェームス・D・スターンとアダム・デル・デオ。
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とても見応えのあるドキュメンタリーで、人間のもつ熱が伝わってくる作品でした。トニー賞9部門獲得の伝説の名作「コーラスライン」。1975年の初演から数えること31年振りの再演が決まり、そのキャストオーディションを追ったのが本作です。簡単にオーディションといいますが、わずか19人の役に対して応募者はなんと3000人。8ヶ月にも渡って行われる厳しい戦い。『コーラスライン』に関わらずブロードウェイの舞台に立つには熾烈な競争に打ち勝たなければならないというのは今や誰でも知るところですが、中々その現実を見る機会はありません。映像は携わる多くの人間のリアルな感情を映し出していました。
審査委員長のボブ・エイヴィアンはオリジナル版の共同振り付けを担当しており、バイヨーク・リーはオリジナル版のコニー役だった人。必然的に伝説の名作のキャストと比較した上での選考となるのだからそりゃ厳しいことこの上ない訳です。ところで、元々『コーラスライン』は「コーラスライン」という舞台のオーディションに参加するダンサーたちを描いた作品で、それはまさに本作そのものでもあります。今までこのそのものずばりな設定がありそうでなかったのが不思議ですが、組合の力の強いアメリカでは、オーディションにカメラが入れること自体が稀なんだとか。ただカメラごときが気になるようでは到底合格はおぼつかないでしょうが…。
最初は集まってきた多くの受験者たちがまとめて踊り、バッサバッサと落とされていきます。というより、ちょっと気になった人意外は全落とし。そんな中で私がまず気になったのは日本人の受験者・高良結香。彼女に対する評価は当初あまり芳しくありません。そもそも元祖コニーのバイヨークが彼女のことを気に入っていませんでした。これはキツイ…。英語の発音にまで注文をつけられ、最終審査では親友と争うことになる彼女。お互いに「どっちが選ばれても幸せよ。」と口にはするものの、2人のダンスからは「私を選んで!」という強烈なメッセージが飛んできます。
ポール役に適任がいないと悩んでいた審査員の前に現れたのはジェイソン・タム。これがとてもオーディションとは思えない演技です。“女装で舞台に立つポール、その格好のまま両親に気付かれないようにすれ違ったつもりが母親は気付きます。どんな格好であろうと夢のために頑張る息子を気遣う両親…。”この話の筋はその時初めて彼の言葉で知っただけなのですが、不覚にも感動で泣いてしまいました。ところが、なんと審査員も泣いているじゃないですか。「この私が涙を流すなんて30年ぶりだ…。」確かにスクリーンを通しても親子の愛情が伝わってくる名演技でした。
シーラ役のラシェール・ラックは最終審査前のダンスでほぼ役を掴みかけていました。しかし最終審査のダンス、ボブに駄目だしをされてしまいます。曰く「去年の夏と違う。」もう一度だけ最後に踊るチャンスをもらったらシェールは去年のダンスを必死で思い出そうとするものの、当然そんなものを覚えているはずがありません。どうも「感傷的過ぎる。」と言うことらしいのですが、もはやこのレベルになると素人に違いなどサッパリ…。結局彼女は不合格になります。
ここで取り上げた3人以外にもそれぞれに同じようなドラマは展開されます。合格の喜びに泣き、不合格の悔しさに泣く。しかしどちらにしても彼らの夢はまだ始まったばかり。事実は小説より奇なりといいますが、事実と小説が同じなのが本作でした。この作品は現在公演中の『コーラスライン』の宣伝を兼ねて文化村ル・シネマでリバイバル上映されたのですが、本当に舞台が観たくなりました。こんな宣伝に乗せられるのは大歓迎です。実際に舞台を観て内容を知っている方はより楽しめるでしょう。
※文化村ル・シネマで8月30日まで特別上映中
個人的おススメ度4.0
今日の一言:本物は言葉に関わらず伝わるものがありますね。
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