ちゃんと伝える
『愛のむきだし』の園子温監督作品。父が癌に倒れて初めて父と向き合った息子、しかしその息子の体も癌に侵されていた…。父子の心の絆、両親やフィアンセに病を隠す息子の心の葛藤を描いたヒューマンドラマ。吹越満の「史郎さん、あなたが癌です。」というセリフが頭に残ります。主演は『山形スクリーム』のAKIRA(EXILE)。共演に奥田瑛二、伊藤歩、高橋惠子。
>>公式サイト
今この時に伝えたい想い。
あらすじへ
←みなさんの応援クリックに感謝デス
『山形スクリーム』と違い、ヒゲもそって好青年を演じるAKIRAは経験が浅い割には中々に好演していたと思うけども、周囲を専業俳優に囲まれるとちょっとつらいものがあったのも事実。そう観えてしまうほどに、父親役の奥田瑛二、母親役の高橋恵子、恋人役の伊東歩らの演技が良かったです。父ががんに倒れたことで初めて父と正面から向き合うことが出来た息子・史郎。しかしそんな史郎の体もがんに侵されていた、それも父よりも状態は良くない…。本作は、残された短い時間の中で真実を隠し続ける史郎の葛藤と、父親に対する想いを描いた物語です。
史郎の父親(奥田瑛二)は、高校の体育教師でサッカー部の鬼コーチ。同じ学校のサッカー部に史郎を入部させ、徹底的にしごきぬきます。ちょっと強面の奥田瑛二はこの役にぴったり。そんな父が今では弱々しくベッドの上で寝ている…。病に倒れた父に接し、史郎が父親孝行しようと考えるのは極自然の想いでしょう。そして父は史郎と病気が治ったら一緒に釣りに行こうと約束をします。あんなに厳しかった父親の存在が今はとても身近に感じられる…、親子と言うよりは男同士の付き合い。父親はいつかその日が来るのを夢見て息子を育てるのではないでしょうか。
死期を悟った父が妻を自分の横に寝かせて「いい男になったなぁ…。」と呟くシーンは涙を誘われました。父は息子にこのことを“ちゃんと伝えたかった”んだと思うのです。父親から息子への最大のほめ言葉…。史郎にしてみたら、自分を一人前の男と認めてくれたこの言葉は、何ものにも代え難い喜びだったに違いありません。恐らく父は釣りにいってそれを史郎に伝えたかったのでしょう。ただ、2人の会話を聞いていると、恐らく史郎は父からその言葉を直接聞かずとも、その気持ちは伝わっていたように見受けられました。
それだけに史郎が自分ががんに侵されたことを誰にも言えない気持ちが切ないです。史郎の葛藤は、自分ががんで死ぬことへのやりきれなさからくる葛藤ではなく、ようやく親父と正面から付き合える時が来たと思ったのに、それが出来ない、父が息子と夢見ていたことを実現させて上げられないという心の叫びでした。「親父、先に死んでくれないかな。」という史郎のふとした想いはあまりに悲しすぎます。しかし、あまりに残酷な仕打ちに神様も一片の情をかけたのか、突如として父は亡くなるのでした。
父の死の悲しみ、しかしこうでなくては恐らく父に今自分が感じているであろう以上の悲しみをもたらすことになってしまう…。史郎の表情は何ともいいようがないものでした。父との約束を果たすために、父の遺体と共に湖を訪れ、共に釣りをするシーンは、父との最初で最後の約束、そして父が自分に“ちゃんと伝えたかった”こと、解ってはいるけれどそれをしっかり受け止めるための大切な儀式だったんだと思います。それと同時に、史郎は自分も父に自分の気持ちをちゃんと伝えていなかったことに気付いたのでした。
相手に“ちゃんと伝える”こと、それは良いことや楽しいことや悲しいこと全てを含むものです。今この時に伝えなければ永遠に伝えられなくなることもあるのだと、本作は私たちに教えてくれています。エンドロールで監督は自分の父親にこの作品を捧げていました。それは監督自らが、亡き父に“ちゃんと伝えられなかった”ことをこの作品で伝えたいということなのではないでしょうか。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:親父が怖くなくなった時、息子は男になる。
↑いつも応援して頂き感謝です!
今後ともポチッとご協力頂けると嬉しいです♪
| 固定リンク
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: ちゃんと伝える:
» ちゃんと伝える/AKIRA、伊藤歩 [カノンな日々]
劇場予告編を観ていて驚いたのはこれが園子温監督の作品だったということ。『愛のむきだし』を観てまだ間もない頃にこの映画を知ったこともあってあの監督がこんな正統派っぽいタッチで作るったんだと思ったをですよね。この映画もタイトル通り『ちゃんと伝える』のかも?
...... [続きを読む]
受信: 2009年8月27日 (木) 07時40分
» 「ちゃんと伝える」:西大島駅前バス停付近の会話 [【映画がはねたら、都バスに乗って】]
{/hiyo_en2/}何て書いてあるのかしら。
{/kaeru_en4/}「青少年に愛の手を」。
{/hiyo_en2/}ずいぶんストレートなメッセージね。ちゃんと伝わるかしら。
{/kaeru_en4/}だいじょうぶ。ストレートなメッセージはちゃんと伝わるさ。
{/hiyo_en2/}あら、たいした自信ね。その自信はどこから来るの?
{/kaeru_en4/}園子温の新作「ちゃんと伝える」を観たからさ。
{/hiyo_en2/}園子温っていえば、「紀子の食卓」とか「愛のむきだし」とか、ストレー... [続きを読む]
受信: 2009年8月27日 (木) 20時43分
» ちゃんと伝える [あーうぃ だにぇっと]
監督・脚本: 園子温
キャスト
北史郎☆AKIRA(EXILE)
伊藤歩
北徹二☆奥田瑛二
高橋惠子
吹越満
綾田俊樹
諏訪太朗
佐藤二朗
田中☆でんでん
高岡蒼甫
満島ひかり
他
【ストーリー】
毎日1時間だけ父親が入院している病院へ通う史郎(AKIRA)だったが、ある日、自らの体も病に冒されていたことを知ってしまう。
父親より病状は悪く、父親より余命が短い可能性が高いという不測の事態に襲われた史郎は、家族や恋人のことを思うばかりに...... [続きを読む]
受信: 2009年8月29日 (土) 07時43分
» ちゃんと伝える [象のロケット]
地方都市のタウン誌編集部に勤める27歳の史郎は、仕事を抜け出してでも毎日必ず入院中の父を見舞う。 ずっと打ち解けられなかった厳格な父と初めて向き合い、「退院したら一緒に湖へ釣りに行こう。」そんな話も出るようになった。 しかし父の主治医に勧められ軽い気持ちで胃の検査を受けた史郎は、父と同じ病名を告げられる…。 ヒューマンドラマ。 ≪オヤジ、先に逝ってくれ。≫... [続きを読む]
受信: 2009年8月29日 (土) 14時08分
» 「ちゃんと伝える」 [みんなシネマいいのに!]
父親が病に倒れ余命あと少しと知り、父親と向き合う決心をした息子だが、実は彼自身 [続きを読む]
受信: 2009年8月30日 (日) 09時03分
» 「ちゃんと伝える」伝えるって、難しいね。 [シネマ親父の“日々是妄言”]
EXILEのAKIRA映画初主演作、「ちゃんと伝える」(ギャガ・コミュニケーションズ)。最初タイトルを聞いたとき、『何の映画なのかな?どんな映画なのかな?』と思ってしまいましたが、映画を観るとその意味が“ちゃんと”伝わってきましたよ。
地方のタウン誌編集部に勤める史郎(AKIRA)は、或る日父(奥田瑛二)が倒れたと言う知らせを受け、病院へ駆けつける。容態は安定するも、父の身体はガンに蝕まれていて、余命わずかという診断だった。高校教師で、サッカー部の鬼コーチとして鳴らした父。そのサ... [続きを読む]
受信: 2009年8月30日 (日) 15時46分
» 園子温監督インタビュー:映画『ちゃんと伝える』について [INTRO]
「ちゃんと伝える」は園子温監督が余命をテーマに描いた秀作である。余命を扱った日本映画は多いが、園監督らしいテイストもありながら、今までの作品である意味で一番開かれた作品ともいえる出来なので是非多くの人に観てほしい。8月22日(土)より、シネカノン有楽町1丁目ほか全国公開中 取材:わたなべりんたろう... [続きを読む]
受信: 2009年9月 1日 (火) 09時59分
» ちゃんと伝える [映画通の部屋]
「ちゃんと伝える」製作:2009年、日本 108分 監督、脚本:園子温 出演:A [続きを読む]
受信: 2009年9月 4日 (金) 18時57分
» 『ちゃんと伝える』 微かなやりすぎ [Days of Books, Films]
すべてが過剰でやりすぎだった『愛のむきだし』の園子温(その・しおん)監督の新作『 [続きを読む]
受信: 2009年9月 6日 (日) 14時50分
» ちゃんと伝える [七海見理オフィシャルブログ『映画評価”お前、僕に釣られてみる?”』Powered by Ameba]
「オヤジ、先に逝ってくれ。」
父よりも短い余命宣告を受けた息子。
究極の家族愛に、心、震える。
「紀子の食卓」「愛のむきだし」の園子温監督が、亡... [続きを読む]
受信: 2009年9月 9日 (水) 00時56分
» ちゃんと伝える [★試写会中毒★]
満 足 度:★★★★★☆☆☆☆☆
(★×10=満点)
試写 にて鑑賞
2009年8月22日公開
監 督:園子温
キャスト:AKIRA
伊藤歩
高岡蒼甫
高橋惠子、他
■内容■
毎日1時間だけ父親... [続きを読む]
受信: 2009年10月12日 (月) 09時48分
» いけちゃんと [Akira's VOICE]
「いけちゃんとぼく」
「ちゃんと伝える」 [続きを読む]
受信: 2009年12月29日 (火) 14時07分
» ちゃんと伝える [映画君の毎日]
ちゃんと伝える スペシャル・エディション [DVD]/AKIRA,伊藤歩,高橋惠子
¥4,935
Amazon.co.jp
<ストーリー>人気グループ・EXILEのAKIRAが主演を務めたヒューマンドラマ。タウン誌の編集者として働く史朗の下へ、父が倒れたとの報せが届く。父の命が長くないことを知った彼... [続きを読む]
受信: 2010年1月24日 (日) 02時41分
» ちゃんと伝える(2009) [佐藤秀の徒然幻視録]
ちゃんと伝えられないのが人生
園子温監督、AKIRA、伊藤歩、高岡蒼甫、高橋惠子、奥田瑛二、吹越満、綾田俊樹、諏訪太朗、佐藤二朗、でんでん、満島ひかり。園子温監督の出身地愛知 ... [続きを読む]
受信: 2011年7月 9日 (土) 16時09分
最近のコメント