孫文-100年先を見た男-/The Road to the Dawn
辛亥革命で有名な孫文、彼が革命を成功させる直前、マレーシアでの様子を描いた作品。主演は『宗家の三姉妹』でも孫文役を務めたウィンストン・チャオ。共演に『THE EYE』の主演を務めたアンジェリカ・リー、チェン・ツイフェンが出演している。監督はアンディ・ラウ、イーソン・チェンが主演した「兄弟」のデレク・チウ。久しぶりの中国映画です。
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もう1人の主人公チェン・ツイフェン
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辛亥革命(1911年)の前年、そこまでに9度の革命失敗で中国大陸を追われた孫文がマレーシアはペナンに亡命している間の様子を描いた作品です。といっても孫文の伝記的な色合いは少なく、どちらかと言うと孫文を支えた人々を含めて彼のカリスマ性を表現した作品といったほうが良いかもしれません。また同時に、医師である彼を支え続けてきた看護師のチェン・ツイフェン(ウー・ユエ)とのラブロマンスの一面も描いています。
中国大陸を追われた孫文はマレーシアのペナンに亡命し、虎視眈々と10回目の革命に挑戦するための力を蓄えていたのでした。そんな彼のカリスマ性を見せ付ける最初のシーン、港湾労働者の団体交渉役として徐家との交渉にあたり、賃金アップと労働環境の改善の約束をとりつけます。ウィンストン・チャオ扮する孫文が、理路整然と理想と現実の刷り合わせを説く様は、確かに見ていて惹かれるものがありました。毅然とした口調だけれどもそこに愛情を、またきびきびとした歩き方や姿勢で精神的な強さを感じさせてくれるのですが、この演技は中々口で言うのは簡単でも実行するのは難しいもの。『宋家の三姉妹』で孫文役を演じているだけあって、2回目の今回はよりこなれているのかもしれません。
私が革命家で思い出されるのがチェ・ゲバラなんですが、ゲバラも孫文も成功する革命家は必ず庶民から絶大な支持を受けますね。キューバ革命と違って面白いのは、中国人は華僑の存在があるところです。同じく国を飛び出て異国の地で大成功している華僑の力、ありていに言えばその資金力を孫文は当てにしていた訳です。とはいえ、9回も失敗している革命家に金を出す資産家などおらず、序盤は物語の大半は金欠で生活の金にも困っている孫文の様子が描かれていました。挙句に清国の暗殺者が彼の命を付け狙い、その暗殺者のうちの1人は孫文も良く知った人物だったりします。
遅々として進まない資金調達。苛立つ孫文を支えたのは2人の女性でした。その内の1人が港湾労働者の団体交渉の相手だった徐家の娘でダンロン。さてここでいきなり余談ですが、一応彼女は学生という設定でした。ただいくらアンジェリカ・リーが可愛らしいタイプとはいえ30代で制服はちと厳しかったりします。富豪の娘役なのでつとめて子供っぽいワガママなお嬢様を演じてはいましたが、さすがにちょっと違和感が消えませんでした。身を挺して暗殺者の銃弾から孫文を守り、彼の元で療養をするうちに、彼女もまた孫文に心酔していきます。
そして、彼女の助力を得た孫文は辛亥革命の資金調達のための集会を徐家で開催してもらうことに成功するのでした。言って見れば、実利的に支えたのがこのシュー・ダンロンだったと言えます。一方で、不遇を囲っている孫文を常に励まし続けたのがチェン・ツイフェン。何処となく加藤かずこに似ている彼女は孫文を愛しています。しかし悲しいかな、彼女曰く「私はあなたを愛している。でもあなは革命を愛してしまった。」なのでした。しかし孫文は彼女の前でだけは自分をさらけ出しています。格好悪い、カリスマ革命家でもなんでもない1人の人間・孫文を。
全てが終わったら家庭を持とうと孫文は言います。しかし革命が成功すると彼女はペナンに帰り二度と孫文とは会わなかったのだそうです。総統夫人に学の無い自分は相応しくない、孫文に恥をかかせたくない、だから本当は革命は失敗してほしい…。孫文の成功の影に隠れた彼女の決断が切ないのでした。
個人的オススメ度3.5
今日の一言:相変わらず下手糞な邦題だと思ふ
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