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2009年9月 1日 (火)

九月に降る風

Photo 本作が長編デビュー作となるトム・リン監督が自分の高校時代に重ね合わせて脚本を書いた青春群像劇。昨日の記事『女の子ものがたり』が女の子同士の友情と別れ、大人への成長を描いたものだとするならば、本作はその男の子版ともいえる。ジェシカ・アルバでリメイクされた『アイズ』のオリジナル『the EYE』の製作総指揮に加わったエリック・ツァンのプロデュース作品。
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まさに「青春時代」by 阿久悠

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登場するのは男子7人・女子2人の高校生。物語はこのうち男子の7人を中心にして描かれます。この7人、まさに悪友といった趣で、酒・タバコはもちろんのこと、夜中に学校のプールで裸で遊んだり、ビリヤードに出かけたり、プロ野球を観に行ったりと良いことも悪いこともいつも一緒。私も経験がありますが、グループでバカしてる時の高揚感は仲間同士の気持ちをすごく盛り上げてくれるし、周囲に対して優越感を感じたりするものです。何よりちょっとしたくだらないことでもメチャクチャ楽しい!序盤はそんな7人の姿が活き活きと描かれています。

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さて、7人の中でも2人を軸として物語は展開していきます。一人はグループのリーダー格・希彦(イェン:リディアン・ヴォーン)。陽気でイケメンの彼は、恋人の芸(ユン:ジェニファー・チュウ)がいるにもかかわらず大のナンパ好きで、遊びに行く先々で女の子に声をかけています。演じているリディアンはウェールズ人を父に持つハーフなため、メンバーの中では唯一西欧風の顔立ちなのですが、確かにこれが実にハンサム。そしてもう一人は、イェンの親友の湯(タン:チャン・チエ)。彼はイェンとは対照的にグループに居るのが不思議に思える程真面目な青年で、無理に悪ぶっているようにすら見えます。

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毎日のように学校をサボっては遊びまわっていた7人に転機が訪れたのは、イェンとタンのケンカから。原因はイェンの女グセの悪さでした。イェンがナンパした女の子の彼氏がタンのことを瓶で殴り怪我をさせたのです。あいにくその場にイェンは不在でした。タンは彼と自分が勘違いされていることに気付いていましたが彼を庇います。ところが翌日、イェンはあろうことかその怪我をからかったのでした。この一件以来、タンはグループから距離を置き始めます。ど同時にグループ内にも微妙な空気、意識のズレのようなものが見え始めるのでした。

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しかしいくらからかわれたからといって、そこまで怒るものなのか…。実はタンの怒りの本当の原因は他にありました。イェンの恋人ユンのことをタンは密かに想っていたのです。ユンの家で彼女に数学を教えながらつい彼女の唇や胸元に目が行ってしまうタン…、そんな彼の気持ちは男性ならば実感をもって感じられるのではないでしょうか。つまり元々自分の好きな人を悲しませる行為をしているイェンに対する苛立ちが根底にあったのですね。タンの中でかろうじて保っていた恋愛と友情のバランスがイェンのからかいの一言で崩れてしまったということなのでしょう。

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本当は仲直りしたくてもなかなか言い出せない2人…。この辺りは観ていて歯がゆいのですが、でもそれはそこにリアリティを感じるから。それだけにやっと仲直りした直後のイェンの事故はやるせない想いがします。事故を起こした原付を運転していたのはタンでした…。観ていれば恐らくイェンが植物状態になってしまうことは容易に推測が付き、そして実際にそうなってしまう事自体悲しいことではありますが、それ以上に悲しかった、いや寂しかったのは、それによって仲間がバラバラになってしまたこと。

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タンは自分には無理だと自覚しつつも、仲間をなんとかまとめようと、学校の集会を抜け出しイェンの見舞いに行こうと提案します。しかしその提案は受け入れられませんでした。タンはタンであってイェンじゃない、そんなことは解っていますが自分が原因である以上何かをせずにいられなかったタンの気持ちがなんとも切ない…。更に仲間の一人が警察に逮捕され、それが元で退学に。一旦崩れ始めた仲間の気持ちはもう既に修復不能、そしてそのまま卒業式の日を迎えるのでした。

14

楽しい思い出とホロ苦い思い出。台湾であれ日本であれ、友達同士でバカをやっているときと言うのは何にも代え難いほど楽しいものです。その行為自体で自分が大人に近づいたような気がするんですよね。しかしそういう楽しい時というのは、長い人生の中ではほんの一瞬。どんなに仲のいい友達でも、いつまでも子供のままではいられない、本当の大人にならなくてはならない別れの時はやってくるんです。今ではとても良い思い出になっている、そんな自分の青春時代にタイムスリップさせてくれる、とても切なくノスタルジックな作品でした。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:今の財力であの時代に戻りたい。(笑)

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コメント

こんばんは。
ほろ苦ノスタルジー感がすばらしかったですねー。
エドワード・ヤン、ホウ・シャオシェンの台湾は、今なおみずみずしい良質な青春映画を生み出してくれていて嬉しくなります。

『インファナル・アフェア』のエリック・ツァンではなく、ジェシカ・アルバでリメイクされた『アイズ』のオリジナル『the EYE』の製作総指揮に加わった という紹介のされ方が面白いなと思いました。

『海角七号 君想う、国境の南』も楽しみですー。

今夜のもう一言:今のKLYさんはそんなに財力をお持ちなのですか♪

投稿: かえる | 2009年9月 2日 (水) 00時09分

◆かえるさん

こんばんは!
実は彼らがやっていた様なことと、殆ど同じようなことを高校時代にやってました。日付の入っていない退学届けまで出したんです。だから余計に彼らの気持ちがダイレクトに感じられたように思います。今は私もそんなバカをやっていた友達たちとはほぼ音信不通。たった3年間の楽しい思い出です。^^

紹介はですね、単純にレビュー記事があるほうを優先したんです。^^;
それと財力なんかないですけど、流石に高校時代よりはお金持ってますから。(笑)

投稿: KLY | 2009年9月 2日 (水) 00時33分

ほろ苦さいっぱいでしたけど後味がとても良くて不思議と清々しくも感じられる作品でした。俳優さんたちの実年齢はわかりませんが、煙草やビールを口にする姿がどこかぎこちなくて大人ぶってる感じが逆に少年らしくて良かったです。

投稿: かのん | 2009年9月 2日 (水) 10時26分

コメありがとうございました

映画は観てませんのでコメ出来ませんが阿久悠
作品の瀬戸内少年野球団を思い出しますね♪何度観ても飽きない作品でした。

是非 観たいです

投稿: osumike | 2009年9月 2日 (水) 12時35分

◆かのんさん

ですよね。実際は恐らく結構幅はありそうですけど、実に初々しい感じを受けました。かのんさんの言うとおり「大人ぶってる」んですよね。タバコ吸うと急に大人になった気がしたものです…。


◆osumikeさん

こんにちは^^
素朴で、今の日本ではちょっと失われてしまった懐かしさを味わえる作品だと思います。まあその分、今の子達が観てもいま一つ伝わるものがあるのかが不安ではあるのですけど。^^;

投稿: KLY | 2009年9月 2日 (水) 13時41分

KLYさんこんにちは♪
最近、こんな甘酸っぱい映画を観てないなぁ…と思いながら読ませて頂きました。
やっぱり、高校時代が懐かしいですね~(〃∇〃)
「生協の白石さん」の本で、”青春の1ページというものがあったら、いつでも思い出せるようにしおりを挟んでおきたい”という言葉がありました。
しおりの代わりに、映画を観ることなら出来そうです(*^_^*)
この映画も観てみようかな、、、☆

投稿: まい | 2009年9月 2日 (水) 20時11分

◆まいさん

ホントに懐かしくて。酒、タバコ、夜遊びでビリヤード、夜中に学校に入って体育館を勝手につかって日付ナシの退学届けを書かされたり…と似たようなことを実際やってたんです。仲間と一緒だとそれだけで楽しいんですよね。
台湾の高校生も同じようなものだったってことが解っただけでも嬉しくて、何だかぐっと距離が縮まりました。^^

投稿: KLY | 2009年9月 2日 (水) 23時44分

こんにちは♪

>唇や胸元に目が行ってしまうタン…

この好きな女の子へのチラリズム視線は男じゃないと
中々理解しがたいところかも知れませんね。

彼らの持って行き場のない揺れ動く感情もさることな
がら、グループ内で一人が浮き始めて来たときに生じ
る距離、崩壊の描かれ方がホントにリアルで、何とも
言い難い痛みで胸がいっぱいになってしまいました。
本作は女性よっか男の方が入り込めるかもと思いました。

喫煙歴は14歳のときからですが、我ながらエラいと
思うのは学校内では一度も吸わなかったことですね♪ (゚▽゚)v

投稿: 風情♪ | 2009年9月 6日 (日) 14時55分

◆風情♪さん

ですです。好きな女の子と同じ部屋に2人でいて意識するなって方が無理でしょう。^^

>本作は女性よっか男の方が入り込めるかもと思いました。

これまさにそう思います。男同士のバカやってるときの楽しさって女の子には解らないんじゃないかなって。実際劇中の2人にも解らなかったしね。

この作品は『女の子ものがたり』の次に観たんですけど、『女の子ものがたり』は女性の方が解るだろうけど、この作品は反対だなって思ったんです。

学校内では私も、いや、勝手に夜体育館使った時は吸ってたかな…。(苦笑)

投稿: KLY | 2009年9月 6日 (日) 23時55分

こんばんは。
無邪気なところも不器用なところも、とてもリアルに感じられる作品でした。
私はあの鍵を閉めてしまう女の子に気持ちも分かるなあと思う反面、
良かれと思ったことが上手く行かないのが現実よねとしみじみ思ってしまいました。
出来たら、ずっとみんなで仲良く笑っていて欲しかったですね。

投稿: non_0101 | 2009年9月10日 (木) 01時22分

◆non_0101さん

鍵を閉めちゃう女の子の気持ち、今なら見ていても良くわかります。でもあのぐらいの年頃の男子の気持ちは女子には解らないだろうし、逆もまたしかり。それだけ大人になりきってないってことだけども、変な分別がない分一瞬のきらめきがとっても素敵だったりしますよね。^^

投稿: KLY | 2009年9月11日 (金) 00時03分

KLYさん、こんにちは(^^)
「縞模様・・」でコメさせてもらったルルママです♪

コチラで読ませてもらって観たくなり、昨日行ってきました。
私は女ですけど(笑)、
もう一度あの頃に戻ってみたくなっちゃいました。
あ、でも「今の脳みそ」そのままで、ですけどね(^^;
『縞模様・・』が観なければならない映画ならば、
『九降風』は観て欲しい映画ですね♪♪
(「色即・・」も~)

そうそう!
「キッチン」の予告がながれて、嬉しかったです。
(私も韓国ものには詳しくないのですが、
「チェイサー」にははまりました^^;
というわけでハ・ジョンウ氏繋がりで観た「H・I・T!」と、
ジフン氏の「魔王」は観て頂きたいです!
男の方のレビュー、読んでみたいです!!)

投稿: ルルママ | 2009年9月11日 (金) 14時07分

◆ルルママさん

こんにちは☆
カキコありがとうございます^^

おお、なんだか私の拙い記事でも多少はお役に立てたようで嬉しいなぁ。そう、観て欲しい作品です。あの甘酸っぱさや苦さって言うのは若さの特権だし、長い人生でもあの一瞬だけのことなんですよね。それを思い出させてくれるところが素敵で嬉しくて♪

『キッチン』やっとやってくれますね。『アンティーク』でジフンを知って、じゃあこっちもって思ったとたんの事件だったから…。韓国ドラマですね~。ドラマも見たいのが溜まってるんだよなぁ。時間がもっと欲しい…、このままだと『24』すら見れないし^^;

投稿: KLY | 2009年9月12日 (土) 03時08分

こんにちは。
まさにリアルにあの頃の高校時代を思い出させてくれる作品でした。
瑞々しい青春時代って、近い国だから文化も似通っている面はあるのだろうけど、台湾も日本もそんなに変わらないのですね。
このノスタルジー感は台湾映画独特のものかなーと思ったりします。香港のノリともちょっと違うし、日本映画だとここまでストレートなものって逆に成立しないような気がして。

投稿: まてぃ | 2009年9月12日 (土) 23時12分

◆まてぃさん

こんにちは^^
台湾映画って初めてかもしれません。確かに香港とかとはまた違いますよね。逆に邦画の場合はここまでリアルに等身大じゃないですよね。「キッズ・リターン」のような作品もありますけど、あれともまたちょっと違いますし。

投稿: KLY | 2009年9月13日 (日) 02時14分

KLYさん、こんばんは。
コメントありがとうございました。(*^-^*

『女の子ものがたり』が女子向けだとしたら
『九月に降る風』は男子向けなのでしょうね。

皆で一つである事が普通だった彼らが
ふとしたことで気持ちがすれ違っていくのがリアルでしたね。

投稿: BC | 2009年9月14日 (月) 20時42分

◆BCさん

そうなんです。凄くリアルなんです。仲が悪いんじゃなくて、結局みんなずっと高校生のままではいられないんですよね。大人になるタイミングには個人差があるし、そこから徐々にずれが生じる…。
切ないですけど、今なら彼らの気持ちがわかりつつ現実も踏まえて見られます。要は自分が歳をとったってことなんですが。^^;

投稿: KLY | 2009年9月14日 (月) 21時58分

KLYさん、こんばんは。

高校生の頃って、何でもない会話が楽しかったり大人から見れば下らなかったりする事も楽しかったりするんですよね。
この映画の中の彼らみたいに。

昔の自分を思い出しながらみてしまいました。

投稿: Hitomi | 2009年12月 8日 (火) 21時20分

◆Hitomiさん

そうそう。ガキだからって言ってしまえばそれまでなんですが、友達と一緒にそうして過ごすかけがえのない時間て大切ですよね。一生にあの時だけしか持ち得ないんだと思うんです。
堪らなくノスタルジックな気持ちになってしまいました。^^

投稿: KLY | 2009年12月 9日 (水) 00時30分

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