あの日、欲望の大地で
ギジェルモ・アリアガは本作が監督デビュー作。元々は『21グラム』、『バベル』で知られる脚本家で、もちろん本作も脚本を務める。主演は『ハンコック』のシャーリーズ・セロンと『L.A.コンフィデンシャル』のキム・ベイシンガーというオスカー女優2人。共演のジェニファー・ローレンスは若干19歳ながらヴェネチア国際映画祭新人賞に輝いている。時代を超越した親子3世代の絆を描いたヒューマンドラマです。 >>公式サイト |
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主演の二人のオスカー女優とくにシャーリーズ・セロンの文字通り体当たりの演技が印象深い作品でした。彼女は登場する3世代の女性、即ちジーナ(キム・ベイシンガー)・シルヴィア(シャーリーズ・セロン)・マリア(テッサ・イア)の真ん中にあたりますが、ストーリーとしては子供時代のシルヴィア、別名マリアーナ(ジェニファー・ローレンス)を加えた3世代4人の女性が中心となって展開して行きます。何の前触れも無くいきなりカットが変わると過去や現在に時間が飛んでいたりするので、最初のうちは戸惑うかも知れませんが、観ているうちにすぐ慣れるでしょう。
設定そのものは複雑に見えますが、ストーリーは簡単で、まず解らなくなることはありません。具体的に言うと「母ジーナの浮気と死」それと「マリアーナとサンティアゴの恋」、「現在のシルヴィア」の3つに大別できますが、それぞれが微妙にクロスオーバーしつつパラレルに描かれます。冒頭まず始まるのは「現在のシルヴィア」から。高級レストランのマネージャーをしている彼女は、その立場に似合わず男をとっかえひっかえしているらしい…。何故彼女はそんな行為をするのか、彼女の抱える心の傷は何なのか―。そしてそんな彼女の前にカルロスというメキシコ人男性が現れます。様々な謎はクロスオーバーするエピソードの中で明らかになっていくのでした。
「母ジーナの浮気と死」のエピソードでは、シルヴィアの母ジーナが浮気に到った理由やその間の家族の様子、そして彼女の死ぬまでが描かれます。当時シルヴィアはマリアーナという名前でした。ばれないように嘘をつきながら浮気を重ねるジーナですが、子供といえども女性の勘は鋭いです。マリアーナはジーナが浮気をしている現場を目撃してしまうのでした。ジーナの死に関してはこの時点で犯人がバレバレになってしまうため、意外性という意味では物足りないかもしれません。結局、自分の母の情事までも目にしてしまった彼女。事情はあるにせよこれは思春期の女の子には相当なショックですよね。この2つの事実がマリアーナ、後のシルヴィアという女性を形作っています。
母の死後、「マリアーナとサンティアゴの恋」が始まります。このエピソードは浮気相手の娘と息子が恋に落ちるという道ならぬ恋の物語。特筆すべきストーリー性がある訳ではないですが、マリアーナ役のジェニファー・ローレンスの演技に見入ってしまいます。世間体や親バレを気にしつつも次第にサンティアゴに惹かれて行く思春期の女の子の気持ちがよく伝わってくる芝居でした。それにしても、この恋を知ったマリアーナの父の気持ちはあまりに切ないです。自分の妻を寝取られた上、その息子に娘まで奪われる…。幾ら恋愛が自由だとはいえあまりといえばあまりですよね。お互いの親に交際がばれ、更にはマリアーナが妊娠したこともあり、2人は町をでます。しかし、ある日彼女はサンティアゴと娘・マリアを残して姿を消すのでした。
そしてラストは再び「現在のシルヴィア」に話が立ち返ります。つまり本作は「現在のシルヴィア」を観ながら、私たち観客だけに彼女と彼女に関わった人々の過去を回想して見せてくれているのでした。シルヴィアだけでなくジーナやマリアーナのその時々の心情が丁寧に描かれているのは良いのですが、ちょっと丁寧すぎてこちらの想像力をかきたててくれる余地が全くないため、物語に深みがないのが残念なところです。結局何故シルヴィアが姿を消したのかも、観ていたら大体想像がつくにも関わらず、劇中セリフではっきりと理由を説明してしまいます。もう少し良い意味でのいい加減さが欲しいところでした。それでも106分間ダレずに観られたのは、登場する女優陣の演技力のおかげでしょう。
個人的おススメ度4.0
今日の一言:こぎれいにまとまりすぎな印象が。
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『愛の傷なら、いつか輝く。』
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2大オスカー女優が紡ぐ母娘の愛と再生の物語は、宿命を感じさせる暗いドラマだ。高級レストランのマネージャーとして働くシルヴィアは、仕事はできるが行きずりの情事を繰り返し、愛を拒絶するかのような孤独な日々を送っていた。ある時、彼女の前に、マリアという名の12歳....... [続きを読む]
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行きずりの情事を重ね自傷行為に走る謎めいたレストランマネージャー・シルビア。 ニューメキシコ州の国境の町で、互いに家庭を持つ身でありながら情事の最中に事故死したジーナとニック。 母の死に深く傷つきながらもニックの息子サンティアゴと恋に落ちるジーナの娘マリアーナ…。 時間と場所を交差させ、愛を渇望する女の宿命的な姿を描くヒューマン・ミステリー。... [続きを読む]
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『バベル』『21グラム』の天才脚本家ギジェルモ・アリアガの初監督作。愛ゆえに深い傷を抱える人が、もがき苦しみながらも再び愛によって希望... [続きを読む]
受信: 2009年10月 1日 (木) 04時15分
» あの日、欲望の大地で [だらだら無気力ブログ]
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受信: 2009年10月 2日 (金) 01時38分
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アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督と組んだこと数回、
『アモーレス・ぺロス』『バベル』『21グラム』『メルキアデス・エストラーダの三度の埋葬』の脚本家、
ギジェルモ・アリアガ初監督作!
ずいぶんとまた、古臭い邦題できました{/m_0006/}
どっかで聞いたことあるようなカンジ。
試写で先週観て来ました〜{... [続きを読む]
受信: 2009年10月 3日 (土) 00時00分
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現在公開中のアメリカ映画、「あの日、欲望の大地で」(監督:ギジェルモ・アリアガ・ホルダン)です。銀座テアトルシネマで鑑賞しました。
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2009年10月8日(木) 18:50~ 銀座テアトルシネマ 料金:0円(Club-Cテアトル会員ポイント利用) パンフレット:700円(買っていない) 『あの日、欲望の大地で』公式サイト 「21グラム」「バベル」の脚本家の監督デビュー作。 それらと同様、時間軸が弄られ、バラバラの登場人物が集結していく話だ。 上記の時間軸は、1ヶ月ほどのずれだったが、本作は12年ほどのずれがある。母娘そのまた娘三世代の話だ。 主人公は、二代目のシャリーズ・セロンで、彼女の再生がテーマであると思われる。 しかし... [続きを読む]
受信: 2009年10月 8日 (木) 23時47分
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THEBURNINGPLAIN愛の傷なら、いつか輝く。上映時間106分製作国アメリカ公開情報劇場公開(東北新社)初公開年月2009/09/26ジャンルドラマ映倫PG12【解説】「21グラム」「バベル」の脚本家ギジェルモ・アリアガが、2人のオスカー女優、シャーリーズ・セロンとキム・ベイシ...... [続きを読む]
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» 「あの日、欲望の大地で 」タイトルは大げさだけど見ごたえある傑作 [soramove]
「あの日、欲望の大地で 」★★★★オススメ
シャーリーズ・セロン、キム・ベイシンガー、ジェニファー・ローレンス主演
ギジェルモ・アリアガ・ホルダン監督、107分、2009年、2009-10-10公開
→ ★映画のブログ★
どんなブログが人気なのか知りたい←
「映画冒頭の燃えるトレーラーハウスの映像、
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でも燃える映像が頭から離れない、
そして... [続きを読む]
受信: 2009年10月30日 (金) 09時03分
» ある日、欲望の大地で◆THE BURNING PLAIN [銅版画制作の日々]
2008年第65回ヴェネチア国際映画祭 マルチェロ・マストロヤンニ賞受賞!
久しぶりに観た映画は、2大アカデミー賞女優が共演した「あの日、欲望の大地」。
冒頭はシルヴィア(シャーリーズ・セロン)が裸でベッドから身を起こし、窓際に立ち外の景色を見ながら煙草をふかすというシーン。もちろん窓の外を通る母子2組からは好奇心と非難に満ちた反応である。まもなく彼女が何者かは分かる。レストランのマネジャーとして働いている女性だ。何と行きずりの男性や妻子持ちのレストランのコック、ジョンと関係を持ち、また... [続きを読む]
受信: 2009年11月 1日 (日) 14時29分
» あの日、欲望の大地で [Diarydiary!]
《あの日、欲望の大地で》 2008年 アメリカ映画 - 原題 -THE BURN [続きを読む]
受信: 2009年11月 9日 (月) 19時13分
» あの日、欲望の大地で [迷宮映画館]
凄い、迫力!! [続きを読む]
受信: 2010年1月20日 (水) 08時39分
» あの日、欲望の大地で [C'est joli〜ここちいい毎日を〜]
あの日、欲望の大地で’08:米
◆原題:THE BURNING PLAIN◆監督:ギジェルモ・アリアガ「バベル(原案)」「21グラム(脚本)」◆出演:シャーリーズ・セロン、キム・ベイシンガー、ジェニファー・ローレンス、ブレット・カレン、テッサ・イア
◆STORY◆断崖にあるレスト...... [続きを読む]
受信: 2010年2月 4日 (木) 11時37分
» mini review 10446「あの日、欲望の大地で」★★★★★★☆☆☆☆ [サーカスな日々]
『21グラム』や『バベル』などの脚本家として知られるギジェルモ・アリアガが、監督として長編デビューを飾った壮大な愛の物語。愛を渇望する悲しい宿命を背負いながらも、一筋の光に導かれる3世代の女性たちの生き様を真摯(しんし)に描く。ミステリアスな主人公とその母親を演じるのは、シャーリーズ・セロンとキム・ベイシンガー。このオスカー女優二人が肉体をさらけ出し、ひたむきに熱演する女性たちの魂の叫びやその悲しみに圧倒される。[もっと詳しく]
火、風、水、土の四大要素(Element)を、勝手にキャラに当て嵌... [続きを読む]
受信: 2010年3月 7日 (日) 03時20分
» あの日、欲望の大地で [映画鑑賞★日記・・・]
【THE BURNING PLAIN】 2009/09/26公開 アメリカPG12 106分監督:ギジェルモ・アリアガ出演:シャーリーズ・セロン、キム・ベイシンガー、ジェニファー・ローレンス、ホセ・マリア・ヤスピク、ヨアキム・デ・アルメイダ、ジョン・コーベット、ダニー・ピノ、J・D・パル....... [続きを読む]
受信: 2010年3月29日 (月) 12時44分
» あの日、欲望の大地で [だって興味があったから 【映画と本と、日常日記】]
愛の傷なら、いつか輝く。
2008年 アメリカ 日本公開日2009/09/26
PG12指定
あの日、欲望の大地で [DVD]/シャーリーズ・セロン,キム・ベイシンガー,ジェニファー・ローレンス
監督 ギジェルモ・アリアガ
脚本 ギジェルモ・アリアガ
出演 シャーリーズ・セ... [続きを読む]
受信: 2010年9月 4日 (土) 00時37分
» 「あの日、欲望の大地で」「モンスター」感想 [ポコアポコヤ 映画倉庫]
両方とも、シャーリーズ・セロンが主演しています。
[続きを読む]
受信: 2010年11月 1日 (月) 19時55分
» あの日、欲望の大地で [えいがの感想文]
2008年/アメリカ
監督:ギジェルモ・アリアガ
出演:シャーリーズ・セロン
キム・ベイシンガー
ジェニファー・ローレンス
3つの時系が同時に進む手法。
自然に巧みに絡み合っていて秀逸…と後で知ったのが、
この監督、「21グラム」「バベル」の脚本を書いていた人物。
納得でした。
この母娘の立場になって、様々考えてしまう。
私から見ると、みんな理解に苦しむ行動に映るのでした。
何故母親の不倫相手はあの男?娘はその息子とできちゃったり?
恋... [続きを読む]
受信: 2011年5月13日 (金) 12時04分
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