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2009年9月17日 (木)

長江哀歌(エレジー)

Photo 長江中流に建設途中の三峡ダムは、今年完成の予定。この一大プロジェクトでダムの底に沈むことになるのが古都・奉節(フォンジェ)。この街を舞台に、変わり行く中国で懸命に生きる一般の人々の暮らしをリアルに描く。監督は『四川のうた』、『青い稲妻』のジャ・ジャンクー。2006年のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞(グランプリ)を獲得した作品。

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淡々と静かに、しかし力強く―

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『四川のうた』を観て以来、何度か観ようと思っていたものの、ついつい新作に走って先送りしていましたがようやく鑑賞です。(ケーブルTV万歳!)『四川のうた』でもそうでしたが、変わり行く中国のなかで翻弄されつつも、バイタリティ豊かに生きる市井の人々が活き活きと描かれた作品でした。最近は中国都市部の映像を目にする機会は多く、そこに映し出される人々は殆ど日本と変わらない印象ですが、実はそうした人々は全体の一握りです。この作品に描かれていたのは、私が学生時代に訪中した時に見たのと変わらない人々であり、まさにこの人たちこそ“THE 中国人”なのだと言えるでしょう。

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舞台は完成すれば世界最大となる三峡ダムの建設が進められている奉節(フォンジェ)という街。ハン・サンミン(ハン・サンミン)は16年前に出て行った妻子を探しに山西省からやって来たのでした。ところが、妻の残した住所には既に何も残っていません。場末の宿に泊まりつつ妻を捜すことにします。そして見つけたのが妻の兄。ダム湖に沈むこの街で解体作業をして働いている義兄に妻に連絡を取ってもらい、その返事を待つことにします。この間様々な情景がスクリーンに映し出されますが、ちょっとした細かい演出がリアリティを感じさせてくれました。

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妻の住所に何も無いことを知っていてサンミンを運ぶバイクタクシー、中国人の思考ではこれは騙してないんですね。聞かれてないから答えないだけで。決して裕福ではないはずなのに、携帯電話で話をするところは、ともすれば昔の中国を見ている気分になりがちなところを、しっかりとこれが“今”なのだと再認識させてくれます。その一方で、重機ではなく労働者のハンマーでコツコツ建物を解体していく様は、今も昔も変わらないという、この辺りのごちゃまぜ感に現実の中国らしさが良く出ているのではないでしょうか。

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これまでで127万人もの人が、このダムの建設で強制的な移転を余儀なくされているそうですが、補償が十分でなく貧困に陥る住民も多く出ているといいます。しかし、そんな中でもサンミンの義兄を含めた解体作業員たちの漲る生命力には驚かされました。上半身裸で酒を酌み交わし、「乾杯!」を言い合う彼らから発するエネルギーは、生きることに対して貪欲な熱さが伝わってきます。そんな彼らの様子を描きつつ物語はもう一人の主人公、サンミンと同じく山西省からこの地にやってきたシェン・ホン(チャオ・タオ)の話へと移っていきます。

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シェン・ホンは2年前にこの地に出稼ぎに出たきり帰ってこない夫、グォ・ビンを捜しにやって来たのでした。サンミンのときとは違い、夫の居場所はその友人に聞いて簡単に判明します。何回かすれ違うものの無事夫と出会い、万々歳かと思いきやそうではありません。会社を興し社長に収まっていた彼は帰る気はサラサラなさそうでした。サンミンの義兄は解体作業員、ジェン・ホンの夫は社長、地元の人間と出稼ぎで来ている人間の間にある貧富の差、これもまた今の中国全体の縮図のようで印象的。

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地位と金を手にした夫はすでにシェン・ホンの知る夫ではなく、彼の自分に対する気持ちが元に戻ることがないと悟った彼女は夫との離婚を切り出します。遥々山西省から来て家族を取り戻そうとするサンミン、結果として家族と別れることになったシェン・ホン、対照的な2人でしたが結果は両者とも当初思い描いていた通りにはなりませんでした。しかし物語はそれを殊更特別なことのように描きはしません。淡々と、あるがままに観せるだけです。静かなしかし力強い映像は、まるでドキュメンタリーを見ているかのような説得力に溢れるものでした。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:中国の真実の一端が垣間見える

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