プール
人気漫画家・桜沢エリカの原作を映画化。と言うよりも元々映画化を前提に書き下ろされた作品なのだそうだ。監督は『ネコナデ』(監督)、『デトロイト・メタル・シティ』(脚本)の大森美香。タイのチェンマイにあるゲストハウスを舞台に、日本から母を訪ねてきた娘が帰国するまでを描く。主演は『かもめ食堂』の小林聡美。共演に『重力ピエロ』の加瀬亮、これが映画デビューの伽奈、『ネコナデ』のもたいまさこが出演。
>>公式サイト
他人の犠牲の上で好きに生きるの?
あらすじへ 
←みなさんの応援クリックに感謝デス

※相当辛口です。この作品が気に入った方は読まないほうが良いかもしれません。
初めて予告編を観たときから、そのロハスな雰囲気に惹かれ、更には出演者が小林聡美×もたいまさこのコンビときては観ない訳に行かないと楽しみにしていた作品でした。劇中プールサイドで小林聡美が主題歌「タイヨウ」を実際にギターを弾きつつ歌うシーンは私も含め劇場中が聞き入っている様子。今でも思わず口ずさんでしまう位お気に入りで、しかし、にも関わらず鑑賞後は腹立たしさしか残らなかった…。実に残念な作品でした。
原因は簡単です。物語終盤の京子(小林聡美)があり得ないことを言うから。それは後回しにしてまずはサラッとストーリーを説明すると…。舞台はタイ・チェンマイにあるプール付きのゲストハウス。京子はここで働いています。近くに住み仕事を手伝ってくれている市尾(加瀬亮)、余命宣告を受けたオーナー・菊子(もたいまさこ)、母親のいないタイ人の少年ビーとともに生活していた京子。ある日そこに娘のさよ(伽奈)が日本から遥々訪れます。本作ではさよが帰国するまでの6日間が淡々と綴られていました。
さよは母の元でビーが一緒に暮らしているのを観て、来て早々自室に閉じこもってしまいます。この母娘には何かあるらしい…。そう思ったものの、まさかその原因がここまで不快だとは思いもせず観ていたのでした。京子の作る食事は美味しそうで、特にバナナのフライをサクサクと食べている様子にお腹が空いて…。どことなく『ホノカアボーイ』っぽさも感じつつ観ていましたが、本作は『ホノカアボーイ』ほど登場人物に個性はありません。というより、登場人物についての説明は必要最低限しかないので、個々の印象は限りなく透明に感じたのでした。
その透明さが良いという方もいるのでしょうが、私には全く魅力的に映らず…。ひたすら淡々とこの4人の交流を描いている様子はちと退屈ですらあります。雰囲気だけで96分は苦しいところ。終盤ようやくビーの母親が見つかったりして動きが出始めるのですが、ここで初めて母・京子と娘・さよの2人が話し合うシーンが出てきます。さて、私がこの作品を決定的に認めたくないのがここでの京子のセリフがあるから。何故京子がさよを祖父母に預けて自分だけここに来たのかを語る、恐らく本作で一番重要なシーンです。
京子いわく「仕方がないじゃない。そうしたかったんだから。」。聞いた瞬間「は?何言ってるの?」でした。要は“人間好きなように生きなきゃ損だ、一緒に居ることが必ずしも良いとは限らない”ということらしいのですが、子供置き去りでその言葉は論外です。私は、子供のために親の人生を犠牲にするのかと問われたら、「当然でしょ。」と答えるでしょう。それが嫌なら子供など作らないことです。舞台挨拶で小林聡美が「私が演じた京子は、娘と離れて暮らす自分勝手な母親に見られがちですが、他人のことを思う優しさを持ち合わせた女性です。」と語っているけれど言ってることに矛盾を感じないのか…。
どんな理由をつけようが、どんなに他人に優しくしようが、自分がそうしたいから自分の意思で自分のためだけに子供と離れて暮らす道を選んだ人間が自分勝手じゃなくてなんだというのでしょうか。一緒に暮らしたくても暮らせない人たちだって沢山いるんです。素敵な雰囲気、素敵な音楽、美味しそうな食事、その部分は多少退屈であっても好みだったけれども、そんな雰囲気で誤魔化し、自由を履き違えていることを肯定するかのようなストーリーは到底認めがたいです。
個人的おススメ度
1.5
今日の一言:やたら犬猫を拾って自分が死んだらどうするの?

↑いつも応援して頂き感謝です!
今後ともポチッとご協力頂けると嬉しいです♪
| 固定リンク
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: プール:
» プール [象のロケット]
さよは大学の卒業旅行を兼ねてタイ・チェンマイを訪れる。 母・京子が小さなプールのあるゲストハウスで働いているのだ。 久々に会った母が、自分の知らない人たちと現地で楽しそうに暮らしている姿を見て戸惑い、反発するさよ。 さよは自分を置いて突然海外へ働きに出て行ってしまった母の気持ちが全く理解できないでいた…。 素朴で静かな心の交流を描く人間ドラマ。... [続きを読む]
受信: 2009年9月16日 (水) 02時34分
» プール [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。桜沢エリカ原作、大森美香監督、小林聡美、もたいまさこ、加瀬亮、伽奈、シッティチャイ・コンピラ。眠っているのは菊子(もたいまさこ)だけではない。映画そのものが睡眠薬のようで、眠気を誘い、登場人物も、風景も皆嘘っぽく、嘘の自然の中で嘘の睡眠で憩って....... [続きを読む]
受信: 2009年9月17日 (木) 23時18分
» プール◇◆POOL [銅版画制作の日々]
かもめ食堂、めがね、そして今度はプール・・・・。
前回の“めがね”のメンバー、小林聡美、もたいまさこ、加瀬亮が登場。そして今回初登場のモデルの伽奈は映画初出演だそうです。そしてそしてタイの男の子も登場しちゃいます。19日の土曜日に舞台挨拶があるそうですが、応募しても当たらず・・・。といことで早々に鑑賞してきました。
フィランドから日本、そして今回はタイのチェンマイに舞台は飛びます。どちらかと言えば、めがねに近い雰囲気でしょうか。お話も特に大事件が起こるでもなく、いつもようにのんびりまったりとした... [続きを読む]
受信: 2009年9月18日 (金) 17時28分
» プール [映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP]
気持ちはいいが中身がない。それって映画としてどうなのか?!と問いかけたくなる作品だ。大学生のさよは、タイの古都チェンマイのゲストハウスで働く母の京子を訪ねる。自分や家族を置いてタイに渡った母は、ゲストハウスのオーナーやタイ人の少年、ハウスを手伝う青年らと....... [続きを読む]
受信: 2009年9月19日 (土) 00時20分
» プール [メルブロ]
プール 281本目 2009-41
上映時間 1時間36分
監督 大森美香
出演 小林聡美 加瀬亮 伽奈 もたいまさこ シッティチャイ・コンピラ
会場 吉祥寺バウスシタター
評価 6点(10点満点)
漫画家桜沢エリカ先生が原作の映画。タイのチェンマイ郊外にあるゲストハウ....... [続きを読む]
受信: 2009年9月28日 (月) 00時22分
» 『プール』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「プール」□監督・脚本 大森美香 □原作 桜沢エリカ □キャスト 小林聡美、加瀬亮、伽奈、もたいまさこ、シッティチャイ・コンピラ■鑑賞日 9月12日(土)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5) チェンマイのプール付きのゲストハウスで働く京子(小林聡美)の周りには、不思議に人が集まってくる。 プールを中心にして、その場所が気持ちいいのか、京子やオーナーの菊子(もたいまさこ)、庭の手入れを手伝っている(加瀬亮)、そしてタイ人の少年(シッティチャイ... [続きを読む]
受信: 2009年9月29日 (火) 12時15分
» プール [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
漫画家の桜沢エリカが映画用に書き下ろした原作を、『ネコナデ』の大森美香監督が映画化したほのぼのとした癒し系人間ドラマ。
タイの古都、チェンマイを舞台に、それぞれの事情を抱えた5人の男女の6日間の人間模様をさらりと映し出す。
出演者も独特の空気感をまとう小...... [続きを読む]
受信: 2009年10月 1日 (木) 03時16分
» 【映画】プール [新!やさぐれ日記]
▼動機
かもめ食堂が面白かったから
▼感想
なんてことのない映画
▼満足度
★★★☆☆☆☆ あんまり
▼あらすじ
さよ(伽奈)はタイ北部、チェンマイのゲストハウスで働く母(小林聡美)を訪ねる。4年前、祖母にさよを預けて旅立った母は小さなプールのある場所で、オーナーの菊子(もたいまさこ)や手伝いの市尾(加瀬亮)らと楽しそうに過ごしている。そこにはタイ人の少年(シッティチャイ・コンピラ)も同居していた。
▼コメント
なんて事ない話を、
なんて事ない手法で、
なんて事なく撮った、... [続きを読む]
受信: 2009年10月 7日 (水) 21時55分
» 映画「プール」 [Andre's Review]
プール 2009 日本 2009年9月公開 劇場鑑賞 『かもめ食堂』も『めがね』も劇場鑑賞しているので、やっぱり気になるこのシリーズ(?)。今回は監督・脚本が違うのでちょっと不安ではあったのですが、もうすぐ公開も終了しそうな中、滑り込みで観にいってきました。 京子(小林聡美)はタイのチャンマイでゲストハウスを営み、近所に住む、市尾くん(加瀬亮)や菊子(もたいまさこ)、そして、母親を探しているタイ人の少年ビーらとおだやかな日々を過ごしていた。あるとき、さよ(伽奈)が日本からやってきて・・・。 ... [続きを読む]
受信: 2009年10月15日 (木) 11時11分
» プール [Art- Mill]
http://pool-movie.com/
プール
映画館でただただボーと過ごすヒーリング映像でした。
こんなに「何もない」映画も珍しいと思いながら、時々、猫の登場に心が騒ぐ。猫のしっぽがぴーん [続きを読む]
受信: 2009年10月16日 (金) 23時45分
» プール [C'est joli〜ここちいい毎日を〜]
プール’09:日本
◆監督:大森美香◆出演:小林聡美、加瀬亮、伽奈、シッティチャイ・コンピラ、もたいまさこ
◆STORY◆大学生のさよは卒業を控え、タイ北部・チェンマイのゲストハウスで働く母・京子のもとを訪ねる。迎えに現れたのは母の仕事を手伝う市尾だった....... [続きを読む]
受信: 2009年11月20日 (金) 16時14分
» ■映画『プール』 [Viva La Vida! <ライターCheese の映画やもろもろ>]
映画『プール』を観て来ました。
もたいまさこ、小林聡美、加瀬亮出演というキャスト情報だけしか知らずに観に行ったので、意外なオチにびっくり!
そうなんだ…、これ、荻上直子監督作じゃないんだ…。
<STORY>
さよは、卒業旅行に一人でタイのゲストハウスを訪れ... [続きを読む]
受信: 2010年7月15日 (木) 02時37分
» 「プール」「おとうと」う〜〜ん・・・ [ポコアポコヤ 映画倉庫]
両方とも脇役に加瀬君が出演している家族の物語。
[続きを読む]
受信: 2010年9月 7日 (火) 15時58分
» mini review 10489「プール」★★★★★☆☆☆☆☆ [サーカスな日々]
漫画家の桜沢エリカが映画用に書き下ろした原作を、『ネコナデ』の大森美香監督が映画化したほのぼのとした癒し系人間ドラマ。タイの古都、チェンマイを舞台に、それぞれの事情を抱えた5人の男女の6日間の人間模様をさらりと映し出す。出演者も独特の空気感をまとう小林聡美やもたいまさこらベテラン勢に加え、若手実力派の加瀬亮や、新人の伽奈が見事なアンサンブルをみせる。自然体で生きる個性的な人々のシンプルライフが心地いい。[もっと詳しく]
大凡作なのか、あるいは「黄泉の国」の視線を繰り込んだ「傑作」なのか。
小林... [続きを読む]
受信: 2010年9月25日 (土) 04時44分
» プール [いやいやえん]
かもめ食堂の流れの作品のひとつ。
娘である自分を置いて、小さなプールがあるゲストハウスで楽しそうに暮らしている母の姿をどうしても素直に受け入れることができず、戸惑いを感じるのは当然。
チェンマイのどこかゆったりとした気質はこの世界感にあっているものの、肝心の母子の絆がどうしても感じ取れなかった。
「いい距離感ですよね」って台詞は母親と娘の関係を指しているのだけど、京子の姿は傲慢で自己中心的に見えますが、人としての生き方としては羨ましいところもあると思う。人と人との距離は難しいもので、愛... [続きを読む]
受信: 2011年11月27日 (日) 10時07分
最近のコメント