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2009年10月13日 (火)

パンドラの匣

Photo_2 太宰治の生誕100周年で公開される作品群の1つ。同じ太宰原作の『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』と同日公開。主演は『フレフレ少女』の染谷将太。共演に『乳と卵』で芥川賞を受賞した作家の川上未映子が出演して話題を呼んでいる。他に仲里依紗、窪塚洋介といった全体としては若い俳優が多く出演。監督・脚本は『パビリオン山椒魚』の冨永昌敬。

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『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』と続けての鑑賞になりましたが、私の中では前者がいかにも太宰といったイメージなのに対して、本作は実に明るく楽しい雰囲気に包まれており、この作品が太宰作品の中では極めて異質で、ポジティブだといわれるのが良く解る気がしました。登場するキャラクターたちのユニークな性格付けや、何やら巧妙なセリフ回しとその響きが心地よくユーモラスで、私のような純文学が苦手な人間でもとっつき易い作品でした。主演の染谷将太を始めとして、平均年齢が若い出演陣ですが、その演技は決して稚拙ではなく、逆にフレッシュさが作品全体のイメージを清新にしています。

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「やっとるか?」「やっとるぞ。」「頑張れよ。」「よしきた。」劇中盛んに登場するこのやり取りは、ひばり(染谷将太)が結核治療のために入った療養所“健康道場”での日常の挨拶。軽快なリズムで交わされるこの挨拶は、当時は不治の病といわれた結核の診療所に似つかわしくない挨拶で何やら愉快ですらあります。そもそもこの療養所、患者だけでなく看護師まで全員あだ名を決めて呼び合うという珍妙さ。“ひばり”はあだ名でした。ある日、ひばりと親しくしていたつくし(窪塚洋介)の結核が完治して退所し、入れ替わりに、新しい看護師の竹さん(川上未映子)がやって来るところから物語は動き始めます。

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これ以後、ひばりの心の内をつくしへの手紙と言う形で表現しながら物語りは進むのですが、そこでまずひばりは竹さんのことを「美人だが年増、それならマア坊(仲里依紗)のほうがまだ良い」と書き送ります。美人の年上お姉さんタイプの竹さんと可愛らしい同級生タイプのマア坊、どちらも魅力的な女性ですが、男の好みを大別するとおおよそこの2人のパターンのどちらかになるもの。ひばりぐらいの年代の青年からしたら、大抵は年上のお姉さんが好きで、事実ひばりはマア坊にはフランクなのに、竹さんの前では緊張している様子が見受けられます。ところが、つくしへの手紙では逆のことを書く…、なんとも初々しいこの世代の男子の心の内が新鮮でした。

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ひばりは終戦を迎えたのを期に新しい時代の「新しい男」になろうとしています。しかし彼が自称「新しい男」に成なろうと行動すればするほど、傍から見ると若々しい青年の背伸びした行動に見えてしまうのが面白いところ。例えばひばりと違って大人のつくしをライバル視し、負けまいとする挑戦的な手紙の内容は、一人相撲でちょっと滑稽ですらあります。さて、実はその問題の竹さんとマア坊。この2人はどうもひばりに好意を抱いているらしい。ひばりの前でのこの2人の描き方がまた実に対照的でした。

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夜、何かをこぼしたのか、床を雑巾で拭く竹さん。寝間着で四つんばいにんり床を拭く竹さんのお尻は何とも艶かしい…。そしてひばりに気付いた彼女は結核患者を前にしておもむろにタバコを吸い始めます。椅子に座らせたひばりの汚れた脚を優しく拭き、突如ひばりの眼前に魅力的なお尻を向けたかと思うと、自分の履物を脱ぐのでした。全ては薄暗い月明かりの中での出来事、しかしひばりは何もせず、履物を履いて立ち去ります。一方でマア坊はといえば、布団部屋にひばりを呼び出し、場に不釣合いな勢いでひばりに話しかけるのでした。「わたしとひばりは良い仲になってるって、皆が思ってる。」そういうマア坊を突き放すひばり。

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今風に言えば、大人の色気と若々しいエッチとでも言うべきこの2つのシーンで、ひばりの気持ちに成り代わって自らがちょっとドキドキしてしまったのでした。それにしても川上未映子は映画初出演とは思えない表現力。さすが一流の作家は役をきちんと押さえているということなのでしょうか。しかも美人ですし。仲里依紗は彼女は彼女で、元気で笑顔が可愛いマア坊にぴったり。結核という死が身近な青年の話は、本来ならモノクロ映画なイメージですが、本作は最新のデジタル映画の如く鮮やかで色彩豊かな人間描写を見せてくれる作品でした。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:セリフ劇の表現の巧みさに惹かれます

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