地下鉄のザジ(完全修復ニュープリント版)
1960年にフランスで公開された作品。今回は作品完成50周年を記念して完全修復ニュープリント版での公開です。レイモン・クノーの小説を名匠ルイ・マル監督が映画化。古き良きパリの町並みを堪能できるドタバタコメディ。主人公のザジを演じたカトリーヌ・ドモンジョは本作でデビューし一気に人気スターとなったもののわずか7年で引退。伝説の子役と呼ばれるようになった。
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コメディーの王道作品
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完全修復ニュープリント版との触れ込みだが当時のフィルムの味のある映像はそのままで、それだけでも現代のデジタル作品を見慣れた私にしてみると趣深いものがありました。作品の舞台は1960年のフランスはパリ。当時の情景が思ったより現代風なのにちょっと驚きです。ドタバタコメディとの触れ込みでしたが、それはザジ(カトリーヌ・ドモンジョ)が母親とともに駅に降り立った瞬間から始まっているのでした。


出迎えの叔父・ガブリエル(フィリップ・ノワレ)が両手を広げて妹、つまりザジの母とハグするのかと思いきや、母はガブリエルの後ろにいた恋人に抱かれて去っていくというベタなオチ。本作はこうして叔父に預けられたザジの2日間を描いた物語です。さて、実はザジがパリで一番楽しみにしていたのは地下鉄に乗ること。ところが地下鉄はスト中で運行していませんでした。しかしザジはまだストライキの意味が理解できません。そこで翌日、朝からザジはパリの街へと繰り出すのですが、やっぱり動いていない地下鉄。ザジが泣いているとそこに声をかけてきたのがペドロという紳士。ここからペドロに連れられてザジのパリ冒険が始まります。


これが実に愉快!ペドロにジーンズを買ってもらったザジがイタズラしつつパリじゅうを逃げ回るのですが、もちろん1960年の作品にCGやデジタルエフェクトなんてありません。しかし早送りであったり、カットの繋ぎ方を工夫したり、小道具、メイクなど今でも映画撮影で普通に使う手段で軽妙なテンポと笑いを生み出していました。ネタを言葉で説明しても恐らく面白くないので非常に書きづらいのですが、このシークエンスの笑いは全て12歳の少女ザジの悪気の無いイタズラが元となっているため、見ていて不愉快になることがありません。愛嬌一杯の子供らしい満面の笑みがとても可愛らしいです。


ペドロとザジの追いかけっこシークエンスが終わると、改めて叔父のガブリエルの家に戻りますが、ここからは今度は近所の靴屋のオヤジやら通りがかりの婦人、叔父の友人なども巻き込んだ大ドタバタ劇へと発展していきます。個人的にちょっと残念なのは、登場人物が多くなりザジが埋没気味になってしまったこと。大人と子供のドタバタコメディは観ている側もある意味見守るような、許容範囲の広さを保てますが、大人中心になってしまうと厳しい目線になってしまうのかもしれません。おかげでこのシークエンスでは飽きがきてちょっと眠くなったり。


この辺は笑いそのものに対する感性の時代による変化や、国民性も関わってくるのかもしれません。しかし、ふと画面を見ると劇中のザジも大人の喧騒をよそに飽きて眠っちゃっていたりするんですね。これはある意味凄い演出です。しかもこのドタバタは単に文字面の話ではなく、本当に店を破壊したりします。もはやそこまでして笑いになるのかもちょっと疑問ではありますが…。警察に追われてザジを抱いて逃げる叔父・ガブリエルと一行は地下鉄の線路を伝って逃げようとするのでした。


するとその瞬間、ストは終了し地下鉄の運行が始まるではありませんか!これ幸いと地下鉄に乗って帰途につく一行。しかしザジは寝っぱなし…。2日のパリ滞在が終わったとき、母親はザジに尋ねます。「地下鉄にのった?」ザジ「ううん。乗れなかったの。」正にコメディの王道たるオチでのラストですね。それでも無邪気なザジの笑顔はとてもキュートなのでした。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:1960年にこの作品が出来ていることが素晴らしい。
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