アンナと過ごした4日間
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純情一途な中年男の決断 |
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監督のイエジー・スコリモフスキはポーランドの巨匠とのことだけれど、私は聞いたことがない監督でした。で、ちょっと調べてみたら、なんとヴィゴ・モーテンセン主演の『イースタン・プロミス』にロシア語の解る叔父の役で出演しているじゃないですか。顔を見たらハッキリ思い出しました。おかげで一気に身近に感じるようになったものの、彼の過去の作品は観たこともないし、とりあえず今のところ興味もない。よって、専門的な論評は解る方にお任せして、感じたままに書いてみたいと思います。


実に不可思議な作品でした。始まり方も終わり方も唐突に感じるし、主に登場するのは冴えない中年男レオン(アルトゥール・ステランコ)とそのレオンの憧れの君アンナ(キンガ・プレイス)の2人。他にはレオンが勤める病院の院長(イエジー・フェドロヴィチ)ぐらいでしょうか。レオンの年老いた母親も登場するけれど、殆どその存在に意味があるのか解らないぐらい。大体この作品、セリフが極端に少ない。レオンは無口な中年男故に殆ど必要なことしかしゃべらないし、アンナはしゃべるのだろうけどそのシーン自体がない。


夜になると窓からアンナの住む看護師寮の部屋を覗き見するのがレオンの日課。といいつつも、実はお隣さんと呼べるほど家同士が近い訳じゃなく結構離れていたりします。レオンの目線がスクリーンに映し出されている訳ですが、あの距離でこの見え方は不思議。というか無理でしょう。やがて双眼鏡を手に入れた彼は、それでまたせっせと覗きに精を出す訳ですが、これこのままだと単なるストーカーじゃないか?なんて思ったり。ところが、レオンの過去が明らかになるに従い見方が変わってきます。


実はレオンはアンナがレイプされている現場に居合わせ、濡れ衣を着せられて逮捕されたという過去があるのでした。釈放後、レオンは彼女を見守っていたのですが、それは即ち彼女に対する愛情の発露にほかなりません。見守るだけだった彼はやがて大胆な行動を起こします。なんと彼女の家の砂糖に睡眠薬を細かく砕いたものを混ぜ、彼女が寝入ってから家に忍び込むのでした。言ってしまうとそんな行為を4日間続けたことがタイトルの『アンナと過ごした4日間』の意味だったのです。


もちろん人によっては「キモイ」だとか「変態」だとか観る方もいると思うのですが、私はこのレオンの行動が解る気がします。本当に愛していたんですね。方法はともかく、愛する人のことは常に見ていたいし、側にいたいもの。実際彼女の家で彼がしたことと言えばボタンのほつれを直したり、床掃除をしたり、寝ている彼女の足にペデュキアを塗ったり、病院をリストラされた退職金で買ったダイヤの指輪をはめてあげたり…。普通に考えたら「何しに行ってるんだ?」というようなことばかり。


要は一連の行為から感じられるのは、レオンのアンナにたいする、純粋な愛情なのです。実際、寝ている彼女の乳房が露になり、触ろうと手を伸ばすものの、すんでのところで止めたことからも解るように、レオンはプラトニックでした。愛した女性の乳房はそりゃ男なら触りたいです。しかし愛しているからこそ触れないということもあるのが男の一面でもあります。言っていることが矛盾するとは思いますが事実そうなんだから仕方ない…。究極の片想い映画というキャッチがぴったり来るような、冴えない中年男の一途な愛をある種ユーモラスに表現している作品だったと思います。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:こうするしかなかったんだろうなと思う…
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