カイジ 人生逆転ゲーム

コミック累計１０００万部以上の売り上げを誇る、福本伸行の大ヒット漫画「カイジ」を実写映画化。主演は『DEATH NOTE　デスノート』の藤原竜也。共演は天海祐希、香川照之、松山ケンイチ、松尾スズキら人気俳優が揃った。監督は「ごくせん」シリーズの佐藤東弥、脚本に『プール』、『ヘブンズ・ドア』の大森美香が務める。フリーター・カイジが借金返済のため命を賭けた究極のゲームに挑む。
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非常にレベルの高いコミック実写化

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大ヒットした漫画は最初からずっと読んでいますし、現在連載中の「賭博堕天録カイジ～和也編～」も愛読している作品です。最初に予告編を観た時にはカイジと藤原達也の顔があまりにもイメージとかけ離れていたんで、若干の不安を抱きながらの鑑賞でしたが、原作の世界観を崩すことなく見事に実写化した作品でした。全体のストーリーは連載開始から３章分の内をつなぎ合わせて構成されていますが、登場するゲームは「限定ジャンケン」、「鉄骨渡り」、「Ｅカード」というコミックの人気を決定付けるエピソードを含んだ３つ。

それぞれがコミックでどういう話でどんな絵だったかも覚えている私にとっては当然結末も解っている訳です。しかしそれでも強烈に興奮しました。そもそもこのコミックは一般的にはありえない登場人物たちが続々登場します。その強烈なキャラクターが世界観を形造っているといっても過言ではないのですが、その意味で本作のキャストはメインの登場人物全員がほぼ完璧にそのキャラクターを演じきっていたように思いました。簡単に言えば、コミックを読んで想像していたイメージがスクリーンに投影された状態といえました。

冒頭、カイジをエスポワールに送り込む遠藤凛子（天海祐希）は原作では男性ですが、男勝りな女性という意味では天海祐希にうってつけの役であると同時に、原作と変わっていても違和感がないどころかむしろプラスに作用した感もあります。「限定ジャンケン」の説明で現れた利根川（香川照之）の惚れ惚れする切れっぷりが素晴らしい！「ここで負けるようなクズはもう知らん！」と超傲慢で超高飛車で嫌らしい利根川のイメージを、一見すると温厚な香川照之がここまで表現してきたことに感動すら覚えます。

一方で挑戦者カイジ。どうしようもなく自堕落だけれどギャンブル時はギリギリの閃きで勝ちを獲って行くのが彼の特徴。この二面性と同時に、時に発揮するリーダーシップや人に対する優しさは、正直顔は似ても似つかないものの藤原達也を観ていると頭の中のカイジの顔とダブってしまうから不思議です。演じることの本質は外見でないのは当然ですが、ここまで感じさせてくれるとは嬉しい誤算でした。「限定ジャンケン」の結果、地下の強制労働施設で働かされることになったカイジ。そこに登場するのが、笑顔の裏にその悪逆非道振りを隠す班長・大槻太郎。

この大槻と松尾スズキが普通に似てる！顔が笑って目が笑ってない大槻＝松尾スズキの演技は秀逸なのですが、ここには少し不満があります。この地下のエピソードは本来原作では「Ｅカード」のエピソードが終わった後に登場するのですが、映画では前に持ってきているため尺の関係上どうしても内容が薄くなっていたのでした。従って折角の松尾スズキの登場時間も短く、オリジナル紙幣「ペリカ」なんて設定も今ひとつ活かし切れていません。原作で描かれるこの班長・大槻とカイジがチンチロリンで勝負するエピソードがカットになっていたのは仕方ないけれども残念です。

この後、映画では「ブレイブロード」と名付けられていた「鉄骨渡り」のシーンは大体原作そのままで、石田のおっさんに扮した光石研のハマリっぷりはコミックの１ページを観ているような気になったほど。本当は声を出さないために口を押さえて落ちていく石田が描かれているんですけどね。更に松山ケンイチの佐原。彼とカイジが鉄骨を渡りきるシーンは、友情出演といいながらも、藤原達也を食うかという迫力ある演技を披露してくれます。実力派若手俳優２人のまさに競演は、映画のストーリーとはまた別に見応え十分。

「Ｅカード」によるカイジと利根川の闘いは、実は絵的には派手さは無いものの、２人の心の声に聞き入ってしまいました。ギャンブルが題材なだけに心の声が多用されているのがこの作品の特徴の一つなのですが、それと同時に決断しようとする際に、“何かが違う”という心のザラつきを原作のままに「ザワザワザワザワ」という音で表現してくれています。そんな細かい部分まで原作に忠実なのは驚きでした。非常に面白いコミックだけに、出来るだけ忠実にかつキャラクターを造り込めばここまで面白い作品が出来るのだと改めて感心させられた一作です。

カイジ　人生奪回ゲーム

個人的おススメ度4.0
今日の一言：続編希望！

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