私の頭の中の消しゴム/내 머리 속의 지우개
若年性アルツハイマー病に冒され徐々に記憶を失っていく妻と、それを支える夫の愛情溢れる、そして切ないラブストーリーだ。主演は最新作『グッド・バッド・ウィアード』がヒットしたチョン・ウソン。ヒロインには『妻が結婚した』が日本公開されたばかりのソン・イェジン。監督・脚本・撮影の一人三役をこなすのは、来年、辻仁成原作・中山美穂主演で公開予定の『サヨナライツカ』の監督・脚本を務めるイ・ジェハン。
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心の絆こそ生きている証
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『妻が結婚した』はストーリーとしては嫌いな作品でしたが、初めて見た主演のソン・イェジンの笑顔の可愛らしさに一目惚れ状態に。そこで、彼女の出世作ともいえる本作の鑑賞になった訳です。韓流喰わず嫌いだった私としてはもう一人の主演がチョン・ウソンなのも魅力。彼の作品も『グッド・バッド・ウィアード』に続いて二作品目で、これまたどんな姿を見せてくれるのかと期待値大といった感じです。予備知識として若年性アルツハイマー病のヒロインであることは知っていましたが、心から愛しあう2人の内の片方の“心が死んでいく”様子はあまりに切なくやるせない作品でした。
この作品、チョルス(チョン・ウソン)とスジン(ソン・イェジン)の出会いのシーンが印象的。不倫相手に裏切られたスジンと建築現場の監督のチョルス、2人が出会ったのは街のコンビニでした。決して気持ちの良い出会いではありませんが、ちょっとした誤解が生んだこの2人の小さな出会いは、物語全体の伏線として重要なシーンです。それにしても、厚い化粧が涙でグシャグシャのスジンは清楚なソン・イェジンのイメージとはかけ離れていて、この作品でははこんな役なの?と軽くショックだったり。もっとも、次のシーンからは、いつものイメージ通り、笑顔がとてもチャーミングで私の好きなソン・イェジンに戻ってくれたのでほっとしましたけど。
チョン・ウソンはもっとスマートなイメージなのですが、チョルスが建設現場の人間という設定だけあって汗臭いワイルドないでたち。でもまたこれがカッコイイ。というか個人的には『グッド・バッド・ウィアード』よりこっちの方が魅力的に映りました。さて、再会した2人は恋に落ち、結婚する訳ですが、2人の幸せな描写は観ているこっちまで嬉しくなるほどです。この先に待ち受ける運命は当然解っているはずなのに、それを忘れて見入ってしまう程の熱々ぶりは、もしかして自分の理想をスクリーンに投射して観ていたのかも…。って、別に私は不幸じゃないですけど。
結婚と同時にチョルスの母親問題がクローズアップされますが、物語本線とは関係ない上、母に捨てられたチョルスの心の傷の大きさはわかっても、一体何があったのかがいま一つ良く解らないのがちょっと残念。もっともアルツハイマー病は家族はもとより、自分の人間関係全てを失っていくというものです。ここで敢えてチョルスと母親の関係を描いたのは、病気でもないのに親との関係を捨てようとするチョルスを通して、当たり前の親との関係が如何に大切なものなのかを訴えようとしているのではないでしょうか。この辺りはいかにも韓国らしいところです。
アルツハイマー病であることを告知されたスジンは、この幸せ絶頂のうちに別れようとチョルスに提案するのですが、先の幸せ振りが目に焼きついているだけに、スジンの覚悟があまりに痛々しく切ない…。対するチョルスは「俺が君の記憶で、君の心なんだ。」と悲壮な決意をあらわにします。しかし、やがてチョルスのことも忘れてしまったスジンが、彼を見ながら「ヨンミンさん、愛してるわ。」とかつての不倫の相手の男の名前を呼ぶに到ってはあまりに残酷。この病気は本人の心を殺し、周りの人間の心をも殺そうとするのか…。観ているのがあまりに辛いシーンです。
家族の申し出を断り、何が何でも彼女の世話をすると決めたチョルス。しかし、一瞬記憶が戻ったスジンは、あまりに彼の心を傷つけていたことに気付き、姿を消します。時が経ち、彼がスジンを見つけたのは介護施設でした。もう全く彼のことを思い出せない彼女に、彼は一言だけ言いたいことがあったのです。それは今まで一度も彼女に対して口にしたことがなかった言葉。海辺を走る車を運転しながら彼は言います。「愛してるよ。」と。それに対して嬉しそうな笑顔でチョルスにキスするスジンの記憶が戻っていたのかは解りません。
しかし仮に戻っていなくても、そのときの彼女の笑顔は、あの幸せ一杯のときの彼女のものでした。最初はソン・イェジン目当てで観始め、彼女の笑顔の可愛らしさに魅了されていましたが、いつしか物語に引き込まれ、そして最後には彼女の可愛い笑顔を見ながら泣いていました。やるせなく悲しいけれど、どこか救われたラストで良かった…心からそう思います。
個人的おススメ度4.5
今日の一言:食わず嫌いしてると名作を見逃すネ。
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