ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 1 ノワール編
フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれたギャング・スター、ジャック・メスリーヌを描いたクライムストーリー。2部構成の第1部で、本作は軍を除隊したジャック・メスリーヌがギャングとしてのし上がる若かりし頃の話だ。主演は『イースタン・プロミス』のヴァンサン・カッセル。共演に『パリ、ジュテーム』では監督も務めてジェラール・ドパルデュー。監督はジャン=フランソワ・リシェ。 |
「パブリック・エネミー」ビギニング! |
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ジョニー・デップの『パブリック・エネミーズ』に先駆けて、フランス版「パブリック・エネミー」を観て来ました。ジョン・デリンジャーの時代から遅れること26年、本作の主人公はジャック・メスリーヌ(ヴァンサン・カッセル)。彼が軍を除隊し、世にパブリック・エネミーと呼ばれるようになるまでを描いたのが本作です。どちらかというとアメリカチックなクライムストーリーをフランスを舞台にフランス人俳優で制作したところに若干の違和感を感じたものの、実に見応えのある作品でした。
パート1と2の両方を見ると改めて感じるのですが、最初ころのジャックは後に“パブリック・エネミー”などと呼ばれるほどアナーキーではありません。アルジェリア駐在の軍隊時代は、情報を吐かせるために捕虜にした男の妻を殺すように上官に命令されるもそれが出来ず、逆に捕虜を撃ち殺したりしています。そうした女性に対する優しさが彼の特徴でもあり、この後もプレイボーイで華麗な女性遍歴を披露してくれるものの、それぞれの女性を全部愛しているという、フランス人なのかイタリア人なのか解らないような青年なのでした。ただし!付き合った女性全てが美人とは言いがたいんですけどね。(苦笑)
さて、そんな彼が除隊して、悪友ポール(ジル・ルルーシュ)と付き合ううちにギャングのボス・ギド(ジェラール・ドパルデュー)を紹介されるところから徐々に悪の道へと入り込んで行きます。馴染みのバーの女がアラブ人の客に酷い目に合わされたときに、彼をいたぶって殺すシーンは、彼の女性に対する偏愛と、切れたときの残虐性という二面性を如実に表現していました。この時「女に手をあげるカスがっ!」と怒鳴りつけていた彼が、のちのち同じことをするようになるとは、このときには想像もつきません。
この後、ポールとスペインに旅行した時に知り合ったソフィア(エレナ・アナヤ)と結婚し3人の子供を設けるものの、初めてポールと組まないでやった強盗が失敗し逮捕服役。出所後は堅気の職業に就職します。ところが、前科者に冷たいのは洋の東西、時代を問わず共通なようで、会社が傾いてくると、前科者のジャックは最初にクビになります。そこにギドやポールといった昔のギャング仲間たちがまた仕事(=犯罪)にさそってくるものだから大変。ソフィアは必死で止めるも、そんな彼女を突き飛ばし、挙句に銃を口に突っ込んで言った言葉が「仲間とお前なら仲間を選ぶ!」
彼自身が一番嫌っていた女性に対する、しかも自分の妻に対して暴力を爆発させてしまったジャック。思えばここが彼が“パブリック・エナミー”となる出発点だったのかもしれません。更にこの後、ジャンヌ・シュネデール(セシル・ド・フランス)と出会ってからのジャックは、アナーキー路線まっしぐら。何だかもう人生を捨てているというか、捨て身になっているというか、享楽的な生き方を突き進んでいきます。ソフィアの存在でかかっていたブレーキはもはや完全に壊れていました。というか個人的には3人の子供の存在が全くブレーキにならないのが不思議ですが…。かといって子供たちを無視しているわけではないんです。
あまりにやりすぎでフランスにいられなくなった2人はカナダに高飛び。定職を得るも、そこでも2人をクビにした雇い主を誘拐するという暴挙にでてしまう始末。ブレーキが壊れた車・ジャックのアクセルをジャンヌがベタ踏みとでも言うのでしょうか。とにかく堪えしょうがない2人には困ったもんです。結局あえなくカナダ当局に逮捕収監されるのですが、この監獄はUSC(特別懲罰刑務所)と呼ばれ強烈な拷問を平気で囚人に対して行っていました。ここでジャックが受けた屈辱がこの後の彼の人生に大きな影響をあたえます。
さて、パート1最大の見せ場はこの監獄からの脱獄シークエンス。ペンチを工房から盗み出しフェンスを切り脱出、さらにその後再び今度は武器を携えて刑務所襲撃――、この一連は息をつかせぬハイテンポ。フェンス破りの緊張感はかなりドキドキものです。観れば解りますが、ホントギリギリの脱獄なのでした。さて、襲撃終了まででパート1は終了と相成りますが、冷静に考えると流石に駆け足だった感は否めません。ですが、これだけ濃い内容てんこ盛りならそれも仕方ないというもの。上映開始とともにスクリーンに最初に映し出される文章に納得しました。
「全ての映画にはフィクションの要素があり、一人の男の人生を忠実に再現することは出来ない。」
>>ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男 Part 2 ルージュ
個人的おススメ度4.0
今日の一言:ジャックは精神的に子供っぽい気がする
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