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2009年11月27日 (金)

つむじ風食堂の夜

Photo “cinemusica”シリーズの第7弾。吉田篤弘原作の同名の小説を『真夏のオリオン』の篠原哲雄監督が演出した。主演は『HERO』、『秋深き』の八嶋智人。共演に『非女子図鑑』の月船さらら、下絛アトム、生瀬勝久、ミュージシャンのスネオヘアーらが出演している。北海道は函館にあるとある食堂に集うちょっと変わった人々の日常をノスタルジックな雰囲気と音楽に乗せて描いた、何か心温まる作品だ。
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味のある登場人物たちに惹かれる

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映像と音楽のコラボレーションムービー“cinemusica”シリーズの第7弾、との触れ込みだけれども残念ながらそんな存在は聞いたことすらないです。そもそも映画は基本的に映像と音楽(音)のコラボレーションであるべきで、今更声高に訴えるようなものではないんでは?…なんて思ったら何のことは無い、映画とシングル楽曲の相互プロモーションプロジェクトのことだったようで、今回はスネオヘアーの『エスプレ』が主題歌に選ばれたことが其れにあたるらしい…。が、残念ながら音楽シーンに無関心の私としてはスネオヘアーってなにそれ?なんですが。(苦笑)

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それはさて置きこの作品、ノスタルジックなセットとBGMが醸し出す不思議な雰囲気はまさに大人のファンタジーという感じで観ていて心が落ち着きます。だからといって、完全夢物語なのかというとそうではないんですね。舞台は北海道・函館。時代は現代。だから良く観ていると普通にタクシーも走っているし、パチンコ屋なんかが映り込んだりもしています。要は、登場人物たちが集う食堂と、主人公の雨降りの研究をしている先生(八嶋智人)と食堂の常連客である女優の奈々津さん(月船さらら)の住む“アパートメント”(アパートではない。)の近辺だけが、まるで昔のまま取り残されたような雰囲気なのです。

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物語冒頭、先生が食堂に入るとそこで演説をぶっているのが帽子屋の桜田さん(下絛アトム)。ちょっと昭和の初期を思わせるような対面式座席はまるで電車の座席を思い出させ、そこに流れるBGMと桜田さんの独特の語り口からは宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」を思い起こさせます。ちょっと驚いた面持ちで席に着く先生、差し出されたメニューに書かれた「クロケット」を注文しますが、そのメニュー表がまた味があり、これもまた宮澤賢治の「注文の多い料理店」を彷彿とさせるのでした。このシーンにはこの後も出てくる、哲学する果物屋(芹澤興人)や、古本屋の“デニーロの親方”(田中要次)といった風変わりなキャラクターが総登場します。

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実はこの作品、ストーリー上に何か大きな目的があったり、何かを成し遂げたりといったことはありません。この食堂の常連客と先生とのちょっと風変わりな日常を描き出し、かつ先生の亡くなった父親への郷愁とも言うべき回想シーンを見せてくれるだけです。例えば女優の奈々津さんは、主役が回ってこないことを悩み、先生が昔芝居の脚本を書いていたことを聞きつけると、彼に自分を主役にした脚本を書くように迫ったり。月船さららの強力な目ヂカラは眉間に皺を寄せていると怒りを倍増し笑うと可愛らしさを倍増して、奈々津さんの喜怒哀楽の激しさを上手く出していました。まさに“目は口ほどにモノを言う”を地で行く芝居です。

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先生の亡き父親(生瀬勝久)は手品師で、その父が行きつけの喫茶店でエスプレッソを頼むシーンでは「エスプレーソ。砂糖はいらない。」なんてセリフがあるのですが、これが文字で書くと味気ないけれど実際に映像で観ると特徴的かつ小気味良くて実に楽しかったり。このセリフは後で同じ喫茶店を訪れた先生のセリフと対になっていて、気弱で優柔不断な先生は「エスプレーソ。砂糖はいらない……です。」と丁寧語になってしまうんですね。細かい拘りが大切にされているのが嬉しいところです。このシーンにはスネオヘヤーもマスター役で登場しますが、二代目同士が父親の思い出を言葉少なに語り合う様子は、男性が父親に対して抱いている敬愛の情を上手く表現していました。

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事ほど左様にこの作品、モノの言い回しやネーミングに拘っています。先に書いた「アパートメント」という呼び方や「クロケット定食」「ステーク定食」なんていうメニュー、「二重空間移動装置」と名付けられた万歩計、「唐辛子千夜一夜奇譚」という奇妙な分厚い本……。これらのネーミングやガジェットと個性的な登場人物たちが合わさって、現代から独立したかのような本作の世界観を作り出しているのでした。あの「クロケット定食」是非食してみたいものです。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:のんびり雰囲気を楽しんで欲しい…

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