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2009年11月18日 (水)

THE WAVE/ウェイヴ

Photo_2 実際にアメリカの高校で起こった事件をベースにした作品。主演は『エーミールと探偵たち』のユルゲン・フォーゲル、監督は『エリート養成機関 ナポラ』のデニス・ガンゼル。独裁制の授業の実習を通じて、いつの間にかクラスが狂気の集団に変化していく様子を描いた問題作。ドイツの高校を舞台に独裁制を学ぼうとして、逆にそこの落ち込んでしまうのがあまりにブラックな作品と言える。
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人間なんてそんなに強くない

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人間とはこんなにも簡単に、かつ何の疑問も持たずに洗脳されてしまうものなのか。げに恐ろしきは教育だと思わずにいられない作品でした。そもそも短大しか出ていない二流の体育教師ライナー・ベンガーに故意にクラスをファシズム集団に導くつもりなどある訳もなく、あくまでも実習授業として行っていただけ。邪な考えがあるとしたら、実習の成果が出れば校長からの評価が上がるかもといった程度の極々可愛らしいもの程度。しかし、そんな軽い気持ちの実習がこれほどの自体に発展するとは正に神のみぞ知るといったところでしょうか。

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ドイツの極普通の高校で独裁制の授業を受け持ったライナーは、授業で簡単なルールを決めます。自分をベンガー様と呼ぶこと。発言は挙手してから立ち上がってすること。授業の時は白いシャツを着ること。そんな他愛もないルールで進められていく授業。この時点では生徒たちも一風変わった授業に興味津々といった状況です。当然中にはバカバカしいと教室を出て行く奴もいたりしますが…。結束することの大切さを教えるライナー、それ自体は間違いではないのですが、次第にクラスはそれそのものが生命を持ったかのように、彼の手を離れて動き出していくのでした。

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高校生ぐらいの若者たちは、とかく様々な悩みを抱え、社会の中で自分の居場所を探している時期です。そこに適度な強制力と同じ価値観の仲間という要因が加わったことで、彼らはクラスにいやその集団に自分の居場所を見つけてしまったのでした。全く世の中何が若者に受け入れられるのか解らないものです。やがてクラスを「ウェイヴ」と名付け、ロゴマークを作り、独特の敬礼をし始めた頃から彼らは狂信的な集団へと本格的に変貌を遂げて行きます。もっともこの時点では日本で言うところの暴走族やチーマーといった類とそう変わらないんですが。

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決定的におかしくなったのは、ウェイヴ以外の人間を排斥し認めなくなってきてから。簡単に言えば生徒たちが自分たちの行動や組織に酔い始めると、ウェイブは文字通り他の生徒たちをも飲み込み益々巨大化していくのでした。あるものは自らの意思で、あるものは強制的に、個人の意思と判断力が失われ、組織としての論理が最優先になって行きます。しかし、ここで一人の女子生徒が敢然とウェイヴに反旗を翻すのでした。最初は白いシャツを着るのが嫌だったからと言う理由で授業を欠席し、そのうちに“嫌だから嫌”などといういかにもヒステリックな女性的理由でウェイヴを拒む彼女。

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まあ個人的にはこの手の人間はイラつきを覚えるのですが、ただそんな理由だとしても其れを一切排除して認めないことは、正に本来この授業でライナーが伝えようとしていた独裁制そのものであり、その意味では皮肉にもライナーは素晴らしい授業をしてしまったことになるのかもしれません。また、政治的無関心は独裁制を生む要因の一つだと言われますが、今回の場合、親の子供に対する無関心が独裁的な狂信集団を生んでしまった一因でした。ウェイヴの主体をなす生徒の親たちは、この独裁制の授業に関して驚くほど寛容、いや無関心だったのです。

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流石に事が大きくなり、ライナーが気付いた時にはもはやウェイヴは制御不能。というより、ウェイヴの存在は生徒たちの精神に深く食い込んでいたと表現したほうが良いかもしれません。もちろん個人差はありますが。そこを考慮せずにいきなり解散を宣言することは、さながら内臓に深く浸潤したガンを無理矢理引き剥がすがごとく、ある意味犠牲者が出るのは当然だったのでした。集団心理を前にした人間の心のもろさが非常に恐ろしい作品でした。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:ドイツ映画と言うところに意味がある

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