牛の鈴音/워낭소리
韓国での累計観客動員が300万人を突破し、自主制作映画にも拘らず興行成績第1位を獲得。当然ながら歴代最高収益率となったドキュメンタリー映画だ。監督はデビュー作となるイ・チュンニョル。韓国の田舎で頑なに昔ながらの方法で農業を営む老夫婦と牛見つめ続ける。コレといった盛り上がりがある訳ではないが、都会暮らしで失ってしまった人間の自然の営みをそこに再発見できる作品だろう。
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何とも不思議な作品でした。特筆すべき何があるわけでもありません。わっと盛り上がる場面も、政治的な主張も、美しい人間愛も、そしてもちろんエンタテインメント性も。「それじゃ何もないじゃん。」と言われると返す言葉もないのですが、あるとしたらチェじいさんとイばあさんの夫婦の絆、チェじいさんと老牛との絆、そしてイばあさんのボヤキぐらいのものでしょうか。カメラはただただ静かに韓国の片田舎で頑固に昔ながらの農業を続ける老夫婦と老牛の生活を映し出すのみなのです。故に今日はあまり書くことがありません。(笑)
ちなみに老牛は40歳、本来の牛の寿命は20歳程度らしいですから、人間の寿命を80歳とすると160歳位ということになるのでしょうか。ちなみにチェじいさんは79歳、イばあさんは76歳。とにかくチェじいさんの老牛中心の生活は徹底しています。人工飼料はやらず、朝暗いうちから起き出してエサを作るところから一日が始まるのでした。そもそも農薬を一切使わないのも、牛の食べる草が毒になるから。おかげで雑草は生え放題、コメは虫に食われ放題でイばあさんはひたすらボヤキます。そのボヤキを黙って無視するチェじいさん。
それに対してもイばあさんは「何とかいったらどうなのさっ!」とボヤキますが、怒りながらもそれはそれでコミュニケーションなのかなと感じました。というより、こんな感じのじいちゃんばあちゃんは、昔の日本では良く見かけたような気がします。「ウチの宿六は~」とか、「ウチのろくでなしは~」とか良く聞いたものでした。そういう意味では何だか懐かしい気持ちにもさせられます。チェじいさんは子供の頃に針治療に失敗したとかで、左足が不自由。ただ、それを抜きにしても2人は腰も曲がり、手は節くれだって、これまでの苦労が想われます。
ただ淡々と流れていく画面と時間。牛車の速度はとてつもなくスローで、恐らく足が悪いとは言え歩いたほうが早いほど。しかし田畑を撫でる風が牛の鈴を鳴らし、聞こえてくる鳥の鳴き声や、木々のざわめき、そしてラジオから流れる歌、これらが合わさった何とも言えず牧歌的な風情は、日頃都会の喧騒の中に生きる私たちを癒してくれるでしょう。さて、老夫婦には9人の子供がいました。お盆に実家に戻ってきた娘は「牛を売って、もう楽に暮らして欲しい。」とじいさんを説得します。渋々市場に売りに行くことにするものの、死ぬ寸前の老牛だけにタダ同然の値しかつきません。じいさんは結局売らないことに…。
「牛車で居眠りをした時に、起きたら家の前だったんだ!」と如何にこの牛が優秀なのかを飲み仲間に自慢するチェじいさん。客観的に見たら酔っ払ったじいさんのたわ言なのですが、作品を通してじいさんを見てきた私たちには、その気持ちが良く解ります。若い牛にエサを取られる老牛の姿は、近代化から取り残されたじいさんたちの姿と重なるのでした。老牛の寿命が尽きる時、チェじいさんはずっとつけてきた鈴を外します。地面に落ちて鳴らなくなった鈴と息を引き取る老牛…2つのシーンのシンクロが何とも言えず印象的でした。
個人的おススメ度
3.5
今日の一言:清清しい気分になれる良作です。

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» ◎『牛の鈴音』◎ ※ネタバレ有 [〜青いそよ風が吹く街角〜]
2008年:韓国映画、イ・チュンニョル監督&脚本&編集、チェ・ウォンギュン、イ・サムスン出演。 [続きを読む]
受信: 2009年12月31日 (木) 19時31分
» 『牛の鈴音』 [cinema!cinema! ミーハー映画・DVDレビュー]
昨日の昼間は韓国映画『牛の鈴音』のブロガー試写会で、京橋の映画美学校試写室に行ってきました~。
ドキュメンタリー映画はもともとそんなには観ないけれど、試写会の当選する確率は意外と高くて。。。
今年はよくドキュメンタリー映画を観たなーと。
韓国で大ヒットした要... [続きを読む]
受信: 2010年1月 1日 (金) 00時33分
» ■映画『牛の鈴音』 [Viva La Vida!]
韓国で異例の大ヒットとなったドキュメンタリー映画『牛の鈴音』。
韓国の田舎の自然の中、自然と対峙しながら懸命に生きる老人の姿に、“現代人が忘れていた何か”を思い出させてくれます。
無口なお爺さんと、文句ばっかり言っているおばあさん、ヨロヨロしながら文句も言... [続きを読む]
受信: 2010年1月 3日 (日) 04時53分
» 牛の鈴音(2008)OLD PARTNER [銅版画制作の日々]
その老いぼれ牛は、お爺さんと一緒に30年も働き続けた。
京都シネマにて鑑賞。「牛の鈴症候群」と呼ばれる社会現象を起こしたドキュメンタリーだということもまったく知りませんでした。おそらく一昔前なら、ここまでブレイクしなかったのではないかと思うのです。殺伐とした時代だから、きっと皆が温かさを求めている。そんなものがこの作品にはあるからだろうと思いました。
それと映像のショットもそれぞれ印象深いです。年老いた牛さんのあの目の表情も何か訴えかけているように感じました。お爺さんの片腕となって頑張ってきた牛... [続きを読む]
受信: 2010年1月10日 (日) 21時39分
» 牛の鈴音 [とりあえず、コメントです]
牛と共に農業を営む老夫婦の生活を映し出した韓国のドキュメンタリーです。 信頼で結ばれた年老いた牛と共に、身体が痛んでも働き続ける頑固なおじいさんと そんなおじいさんに文句を言いつつも心配して一緒に働くおばあさんの姿に 長年連れ添った夫婦の強さと暖かさを感じる作品でした。 ... [続きを読む]
受信: 2010年1月11日 (月) 00時01分
» 土に生きる〜『牛の鈴音』 [真紅のthinkingdays]
OLD PARTNER
韓国の農村。70歳を過ぎた老夫婦と共に農作業に従事する、40歳になる
雌牛がいた。老いて骨と皮になった牛は、余命一年と... [続きを読む]
受信: 2010年1月11日 (月) 21時29分
» 牛の鈴音 [cochi の blog]
先日観た映画でふと思い出しました。
日本では農耕用として、西日本から中部地方までは牛が使われています。田を耕す牛の絵でしたら、ほぼ西日本方面の絵にまちがいありません。 [続きを読む]
受信: 2010年2月 1日 (月) 08時58分
» 「牛の鈴音」 [再出発日記]
原題ウォナンソリ韓国の片田舎、老い耄れの牛と一緒に暮らす老い耄れの夫婦の一年と少しを追うドキュメンタリー。監督・脚本・編集:イ・チュンニョル出演:チェ・ウォンギュン、イ・サムスン対象が動きの無いものであるためか、カット割が非常に凝っている。それだけでは...... [続きを読む]
受信: 2010年3月 4日 (木) 23時12分
» 「牛の鈴音」 [みんなシネマいいのに!]
年老いた牛と老人の強い絆を描くドキュメンタリー。 とにかく映画に出てくる爺さん [続きを読む]
受信: 2010年3月 7日 (日) 23時14分
» 牛の鈴音 [映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP]
牛と老人の絆を不思議な温かさと哀しみで包む良質ドキュメンタリー。79歳のチェじいさんは昔ながらの農法にこだわり、来る日も来る日も40歳の老牛を使って畑を耕している。牛の寿命は15年が平均だというからこの牛は人間なら100歳以上だ。若い牛も飼っているが使い物にならな...... [続きを読む]
受信: 2010年3月10日 (水) 23時52分
» 『牛の鈴音』 [シネマな時間に考察を。]
鈴音ひとつで解り合える。同じ速度で歩いてく。
老いぼれ牛と爺さんの、奇跡のような“生きる絆”
誰も彼らを引き離すことなんてできなかった。
かけがえのない、人生のパートナーだったから。
『牛の鈴音』
?2008年/韓国/78min
監督・脚本・編集:イ・チュンニョル... [続きを読む]
受信: 2010年4月 1日 (木) 11時23分
» ウルフの鈴音 [Akira's VOICE]
「ウルフマン」
「牛の鈴音」 [続きを読む]
受信: 2010年9月22日 (水) 16時54分
» 試写会「牛の鈴音」 [ITニュース、ほか何でもあり。by KGR]
2009/11/25、四谷にある韓国文化院、ハンマダンホールでの開催。
この場所は初めてだが、とても良いホールだった。
ホールについては別掲するが、3百余席の会場は半分も入っていなかった。
非常にもったいない。
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韓国映画。ドキュメンタリー。
韓国の片田舎に住み、老いた牛とともに農業を営む老夫婦のドキュメンタリー。
韓国では、300万人を動員する大ヒットとなったそうだ。
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冒頭は2007年1月。
どこか韓国の有名らしい寺院を参る老夫婦。
夫人が「牛が死んで哀しいか」と聞くと、
夫は... [続きを読む]
受信: 2010年9月24日 (金) 11時58分
» mini review 10495「牛の鈴音」★★★★★★★★★☆ [サーカスな日々]
韓国で観客動員数累計300万人という大ヒットを飛ばし、インディペンデント映画初の興行成績第1位、歴代最高収益率を誇る感動のドキュメンタリー。農業の機械化が進む中、牛とともに働き、農薬も使用...... [続きを読む]
受信: 2010年10月29日 (金) 17時21分
» 映画評「牛の鈴音」 [プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]]
☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
2008年韓国映画 監督イ・チュンニョル
ネタバレあり [続きを読む]
受信: 2011年3月19日 (土) 21時19分
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