蘇りの血
『空中庭園』の豊田利晃監督が4年ぶりに送る最新作。主演は人気ミュージシャンで『涙そうそう』などにも出演した中村達也。共演は草刈正雄の娘・草刈麻有。他にも『フィッシュストーリー』の渋川清彦、『クヒオ大佐』の新井浩文、『空気人形』の板尾創路と、個性的な役者が揃っている。監督が小栗判官の説話にインスピレーションを受けた「蘇り」の物語だ。
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実に不思議でシュールな映像劇だったと思います。もともと豊田監督が旅をしていた最中に出会った「蘇生の湯」と呼ばれるつぼ湯で、小栗判官の説話を聞いてそれを映画化したということだそうな。最初にこう書いてしまうと何だけれども、正直言って雰囲気だけの映画です。中身は何もありません。簡単に言ってしまうと、そのとき監督が受けたインスピレーションをそのまま映像化した感じ。つまり小栗判官の説話や「蘇生の湯」に関しての知識を持つ人間が見れば解りますが、それらの予備知識がないと何を言いたいのかサッパリでしょう。


登場する役者はみなとても個性的でかつ現代的。しゃべる言葉も今風です。しかし格好は何となく古の時代風。といっても具体的には何も解りません。縄文・弥生時代ぐらいなのか、要は日本という国の概念があまりなさそうな時代な気がします。どうも見ていて舞台演劇にこのようなちょっと前衛的な作品が散見されるような気がするのですが。そこで大王(渋川清彦)に呼ばれた按摩のオグリ(中村達也)が大王の不興を買って殺されてしまい、天国と地獄の分岐点で現世に蘇らせてもらうというのが序盤の話。


この分岐点にいる門番が板尾創路。なぜか関西弁でしゃべる地獄の門番というのが面白くも異彩を放っていました。「現世はつらいでぇ。」という言葉を振り切って蘇ったオグリですが、手も足も聞かない餓鬼阿弥となってしまいます。が、ここが観ているほうとしては全く解りません。いきなり餓鬼阿弥といわれても何が何だか…。小栗判官の説話によると目も見えず口も利けず、手足も動かない状態で蘇った小栗判官をイザリ車に乗せて熊野にある湯の峰の壷湯に浸らせたら、再び壮健な姿に戻ったということらしい。


これはあまりにも不親切です。大王の下を逃げ出したテルテ(草刈麻有)がオグリを「蘇生の湯」へと連れて行く役目を負うのですが、そもそも最初にテルテをマッサージしてあげただけの関係でしかないのに、何故そうなってしまうのか。薄い人間関係の中に重要な役割を持たせても、観ているほうとしては釈然としないです。草刈麻有自身はとても美しい女優さんでした。まだ16歳ですが、お父さん譲りの鼻筋の通った顔立ちはまさにサラブレッドといって良いでしょう。今回はあまり台詞もなかったですが、今後が楽しみです。


個人的には中村達也、渋川清彦だとか新井浩文、板尾創路といった渋い面々が揃っていて、彼らの個性的な演技力にずいぶん助けられていると感じます。彼らの力がなかったらとてもじゃないけれど最後まで観れたかどうか…。頭の中のイメージを映像化して人に解らせるのは難しいことではありますし、あまり説明的になっても面白くないのは解ります。しかし最低限ストーリーを理解出来るようにしてくれないと。もったいない作品でした。
個人的オススメ度2.5
今日の一言:板尾創路は『脱獄王』に期待です
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