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2009年12月25日 (金)

誰がため

Photo デンマーク・アカデミー賞で5部門受賞、国民の8分の1を動員した大ヒット作品です。主演はトゥーレ・リントハートとマッツ・ミケルセン。監督はオーレ・クリスチャン・マセン。ナチスドイツ占領下のデンマークを舞台に、レジスタンス組織“ホルガ・ダンスケ”の一員として戦うフラメンとシトロンの2人の男を描いた実話ベースのドラマだ。


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彼らもまた紛れもなく戦争犠牲者だった

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デンマークの映画は初めてです。国民の8分の1を動員したといいますから、約70万人弱でしょうか。彼の国で大ヒットを収めた作品ということになりますね。第二次大戦中のナチス占領下のレジスタンス組織“ホルガ・ダンスケ”の一員として戦うフラメン(トゥーレ・リントハート)とシトロン(マッツ・ミケルセン)の2人の男を描いた実話ベースの物語だということですが、実際問題としてデンマークと言う国自体、名前は知っていてもあまり馴染みのある日本人は少ないのではないでしょうか。いきなり観ると多少戸惑いを覚えるかもしれませんし、実際私は途中で人間関係、事実関係にちょっと混乱してしまいました。

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フラメンとシトロンはナチス占領下にあって、ナチス側に付いた売国奴を暗殺するという作戦を展開しています。リーダーのヴィンター(ピーター・ミュウギン)は打倒ナチスをもくろむ英国の指揮下でこの組織を動かしているのですが、この辺り日本人的にはもうちょっと説明が欲しかったかなと思いました。盛んに「英国は~~」とか「英国の命令で~~」というセリフがあるものの、何故そこに英国が絡んでくるのかがいま一つピンと来なかったので。もっとも本国では当たり前の事実なので今更説明不要なのでしょう。更にここにデンマーク自由評議会とやらが絡んでくるのですが、同じナチスに対抗するにしてもそのやり方の違いによって弱冠の諍いがあるということが解ります。

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ともあれ、政治的な大枠は独立の志に燃えるフラメンたち現場の戦士には関係ない…。けれどもフラメンがケティ(スティーネ・スティーンゲーゼ)に出会ってしまったことから話がややこしくなります。ヴィクターが私利私欲のために、自分に都合の悪い人間を殺させていると聞いたフラメンたちは、己の信じてきた「正義」に確信が持てなくなるのでした。2人とも純粋に国を想うが故に、「俺たちのやってきたことは間違いだったのか?」と考えた時の混乱振りは激しく、必死にアイデンティティを保とうとする様子には一兵士の悲哀が見て取れます。特に印象的だったのはフラメンよりシトロンの方。元々警官だったフラメンと異なり、シトロンは人を殺した経験がありませんでした。

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それでもレジスタンスに身を投じた挙句、愛する妻や子は自分の下を去っていきます。自己崩壊寸前のところで辛うじて耐えている彼の表情はもはや狂気の相を帯びていました。そんな彼の「戦争に正義などない。ただ標的を倒すだけだ。」という言葉が非常に重く私たちの心にのしかかってきます。しかし彼ら2人の追い詰められていく様相とは反対に、ナチスの占領下にありながらも、どこかのんびりした雰囲気、例えば先日の『カティンの森』のポーランドの町が持つ殺伐とした戦時を思わせる雰囲気とは異なるのが不思議でした。……と思ったら後で調べたらデンマーク人はドイツと同じ主にゲルマン人で構成された国だったのですね。

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民族的に同胞だという意識があったのか解りませんが、フラメンたちの敵であるゲシュタポのホフマン大佐(クリスチャン・ベルケル)も根っからの悪人としてではなく、彼らフラメンたちの愛国心を理解はするように描かれているのは、この手の戦争映画には珍しいことでした。もちろんだからと言って追跡の手が緩まるわけもなく、最終的にフラメンは服毒自殺、シトロンは隠れ家を急襲されて撃ち殺されます。デンマーク、ドイツ、イギリスを始めとした第二次世界大戦という大きな戦争の流れの中で、2人の存在や苦悩など実にちっぽけなもの。しかし、個人の側からの戦争を、事実に基づいて描いた本作からは生々しい感情がダイレクトに伝わって来るのでした。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:ストックホルムが近いのがデンマークらしい

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