ビースティ・ボーイズ/비스티 보이즈
『僕らのバレエ教室』のユン・ゲサンと『チェイサー』、『ノーボーイズ、ノークライ』のハ・ジョンウがリアルなホスト役を演じるヒューマンドラマだ。監督は『許されざるもの』のユン・ジョンビン。共演には『オールドボーイ』のユン・ジンソが出演している。金・愛情・嫉妬・裏切り・嘘・憎しみ・暴力、SEX…男女間でおよそ思いつく全てのポイントを網羅したドロドロの愛憎劇と驚きのラストははっきり好みが分かれるだろう。
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韓フェス2009の3本目。「ビースティー・ボーイズ」は訳せば「小動物のような奴ら」という意味。そして主人公のジェヒョン(ハ・ジョンウ)とスンウ(ユン・ゲサン)はホストです。つまり女性に可愛がられることが仕事であるということを指していると思われるけれど、実際はそんなラブラブな雰囲気は全くありません。かといって日本のドラマ「夜王」のような華やかさもない…、簡単に言えば欲望最前線での男と女の駆け引きを描き出した作品でした。綺麗で美しいラブストーリーでベタベタな展開を見せてくれる韓流映画だけに、逆のパターンであるこの手の醜いラブストーリーは、これでもかとばかりに人間の醜い内面をさらけ出して来ます。良い方でも悪いほうでもストレートな人間性の表現が得意なんですね。
細かい話を省いて結論から言うとジェヒョンは最低のクソ野郎(byスンウ)ですが、ある意味ではプロのホスト、いや、徹底的に女を食い物にするプロのジゴロでした。そして対照的にスンウは女に取り入るのに必死で、むしろ彼が食い物にされていきます。ジェヒョンまで行かなくとも、女に金を貢がせるのが仕事なのに自分が貢いでどうするのかと。ジェヒョンはスンウが客のジウォン(ユン・ジンソ)を好きになったとき、そこまで見越していたのでしょう。ちゃんと警告しています。曰く「プロは客を好きになってはいけない。」と。もともとホストを本業にするつもりがないと公言するスンウはいわば普通の人間だったということで、要は本作は普通の人間スンウが異常な世界に身を置くが故に人として堕ちていく様を描いたともいえるかもしれません。
実はジェヒョンはスンウの実の姉でホステスのハンビョル(イ・スンミン)と同棲しています。しかし借金で首が回らなくなると彼女の金まで使い込むありさま。しかもそれも無くなると別のホステスのミソンと付き合い始める…。とにかくこのジェヒョン、口八丁手八丁とはよく言ったもので、女の前でサラリと普通に嘘を並べ立ててその場をしのぎながら泳いでいくというとんでもない男。時々破綻しているのだけれど、決してイケメンともいえないハ・ジョンウがお調子者で究極のジゴロっぷりを演じるのは観ている分には結構笑えます。しかもこれが結果的には見事に騙して金を引き出してしまうんですね。とても真似出来ませんがある意味感心します。
さて一方のスンウ。とにかくジウォンのことが気になって気になって仕方ない。そりゃそうです、自分の好きな女が自分以外の男と2人で出かけたり食事をしたりするのが平気な男なんかいる訳がない…。しかし、それは風俗嬢を好きになったら当然の帰結、だってそれが彼女の仕事だから。嫉妬に狂ったジウォンの行動が段々とエスカレートしていくのは観ていて怖さや不快感を覚えますが、男として気持ちは痛いほど良く解ります。まして字幕では「ヘルス嬢」と出ていましたけど、何とジウォンはいわゆる日本で言うところのソープ嬢だったと来た日には、好きな女が自分以外の男とSEXするなど耐えられるはずがないのは当たり前。
女性の側からすればお金を稼ぐためと割り切ってるのに、そこまで束縛する男がおかしいと思われるかもしれませんが、しかし金なら幾らでも貢ぐからそれだけは止めて欲しいと思うのが普通の男の感情です。故にスンウとジウォンの関係の帰結はある意味当然だし、ジウォンの悲劇的な結末は自業自得な部分すらあると思う、なんて書くと非難が来そうですが…。と、つまりここがジェヒョンとスンウが最も違うところなんですね。ジェヒョンなら間違いなく自分の利益のためならむしろ率先して客を取らせるだろうから。
金・愛情・嫉妬・裏切り・嘘・憎しみ・暴力、SEX…観ていて男女間のドロドロした汚い部分がおもいっきりクローズアップされる作品で、今書きながらも気が滅入ってきてしまうほど。これがそのまま終わったら鑑賞後感が最低になりそうなのだけれども、そこをジェヒョンのラストシーンが綺麗にクリアにしてくれるのが嬉しいところです。何と彼は借金取りから逃げ、歌舞伎町でホストをしていたのでした。(笑)最低最悪のクズ野郎のジェヒョンなんですが、そこはやはり“ビースティー”なんですね。ハ・ジョンウの愛嬌漂う演技に惹かれて、そう悪くない気分で劇場を後にしたのでした。
個人的おススメ度4.0
今日の一言:ハ・ジョンウは実に日本に縁がある俳優だなぁ。
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