倫敦から来た男
2007年のハンガリー映画。『ヴェルクマイスター・ハーモニー』から7年ぶりにタル・ベーラ監督が送るサスペンスドラマだ。主演はミロスラヴ・クロボット。共演に最近では『バーン・アフター・リーディング』や『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』が記憶に新しいティルダ・スウィントン。偶然にも殺人を目撃し、大金を手にしたことで大きく運命が変わった鉄道員を描いている。タル・ベール監督の独特の手法に注目だ。
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殆ど催眠術?鑑賞には要注意。 |
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Googleの検索欄に“ハンガリー映画”と打ち込むと、『人生に乾杯』という選択肢が出てきます。そしてそれは私の頭の中のデータベースも同じで、そのぐらいしか思い浮かびません。何度か観た予告編によるとモノクロ映像で綴られるサスペンスドラマだとの触れ込み。ハンガリーのサスペンスドラマって?たったコレだけのフックで鑑賞してしまう私もどうかと思いますが、いやはや、タル・ベーラ監督が鬼才と呼ばれる理由の一端を垣間見た思いがしました。正直言ってサスペンス度は全然高くはありませんが、独特の演出法は観ている途中はもとより、鑑賞後に後を引くものでした。
そもそも冒頭からいきなりその特異な演出が発揮されます。スクリーンに広がるのは船着場とそこに隣接して停車している列車の様子。船からは数人の人が降りてきて何やら話している…。俯瞰の映像は数分間、ナレーションもセリフもないままにただひたすら映し出されています。何が何だか解りません。というか既にこの段階で眠気が襲ってきます。暫く観ているとようやくこれが主人公マロワン(ミロスラヴ・クロボット)の視線だったことに気が付いたのでした。まだ主人公が登場する前にその目線だけ何分も映し出す…、しかしこれが言わばマロワンの日常が非日常へと変わる入り口を意味するものだったのです。
このマロワンが偶然にもロンドンから来たブラウンという男の殺人現場を目撃してしまいます。殺された男は海に落ちますが、彼が持っていたトランクを海から拾い上げるとそこには大金が入っていたのでした。濡れたお札をストーブで乾かすと、マロワンはそれをコッソリと隠します。で、どこからがサスペンスなのかといえば、どこからもサスペンスにならない…。いや、そのお金を探している人間にとってはサスペンスなのかも知れないんですが。やがてロンドンからモリソン刑事が訪れブラウンとその妻を訪ねます。その目的はロンドンで盗まれた6万ポンドの金でした。
っとまあざっとにストーリーを書いてますが、観ている時はそんなに簡単じゃないんです。とにかくワンシーンの長いこと長いこと!言い換えるとそのシーンでメインとなる部分の前後に異様なほど長いのりしろが付いているとでも言うのでしょうか。例えば2ショットでの会話のシーンがあるとすると、会話が終わって片方が部屋を出て行っても尚残されたほうのアップを撮り続けるといった感じ。通常ならとっくに「カット」がかかっていても良いでしょうが、その間俳優はセリフも何もないままに表情だけでその心情を表現しなければなりません。しかもただ映しているだけでなく、超ゆっくりとズームインをしていたりするのだから参ります。
おかげでキャラクターの内面的な想いは十分すぎるほど伝わりますが、反面リズム感とかテンポの良さとかは皆無。故に自動的にオヤスミモード発動となりやすいです。実際私も数回落ちかけましたし。それでもモノクロ映像が織り成す光と影のコントラストは、それそのものが幻想的で魅力的だったりします。とにかく全体を通してもセリフは少なく、音楽と映像だけで見せるパートが非常に多い…というかそっちの方が多いかもしれません。もし鑑賞する方は、よく寝て食後2時間以上は経ってからでないとほぼ間違いなく船を漕ぐ羽目になると思います。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:色んな映画があるものです…
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