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2009年12月29日 (火)

ずっとあなたを愛してる

Photo 2009年英国アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞作品。また今年のゴールデングローブ賞でも最優秀外国語映画賞にノミネートするとともに、主演のクリスティン・スコット・トーマスはも主演女優賞にノミネートされている。監督はフランスの人気小説家フィリップ・クローデルが初挑戦。とある理由から自分の息子を殺したことで15年の服役を終えた主人公が再生していく様子を描いたヒューマンドラマだ。
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それでも人は再生できる―

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2009年も押し迫った最後の最後にまた素晴らしい作品に巡り合いました。物語の主人公は6歳の息子を殺した罪で15年の服役を終えて出てきたジュリエット(クリスティン・スコット・トーマス)。彼女が妹レア(エルザ・ジルベルスタイン)に家に身を寄せて、再生の緒につくまでを描いた作品です。クリスティン・スコット・トーマスの素晴らしい演技と、これが監督初挑戦とは思えないフィリップ・クローデル監督のとても丁寧な演出で完全に物語に引き込まれてしまい、主人公の抱える大きく深い心の苦しみが痛いほどによく伝わってきて、気がつくと頬を涙が伝わっていました。

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クリスティンの女優としての力が素晴らしいのは『イングリッシュ・ペイシェント』の名演技を観れば十分解りますが、今回の主人公ジュリエットの微妙な心情の変化の表現はまた特に秀逸です。一番最初に空港でタバコを吸いながら見せる「絶望をたたえた無表情」から、最後の「希望を見出した笑顔」まで、本当に薄い皮を1枚1枚はぐように変わっていく様子が見事としか言いようがありません。何か一つの結果で180度その人間の心情が変わることも無い訳ではありませんが、普通は時間がかかるもの。その辺りのリアルかつ周囲の人間をも巻き込んだ丁寧な演出も絶妙です。

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それにしても罪を犯した人間が社会復帰する厳しさは万国共通ですね。ジュリエットは元々医学者というエリートであったにも関わらず中々職が決まりません。それどころか、どんな犯罪を犯したのかとの問いに正直に「息子を殺した」と答えた瞬間に「出て行け!」などと言われたりもします。しかし、そんな心無い言葉にも、それが自分の負うべき責めだと思っているジュリエット。一体どれだけ深い哀しみを心の底にに溜め込んでいるのか…。全てを諦めているかのような彼女の言動は、自分を支えてくれるレアにも向かいます。「私が希望して(妹の家に)来たんじゃない。(福祉事務所に)勝手に連絡されたの。」

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それでも物語を通して常にジュリエットに対して変わらぬ接し方をするのは彼女のみで、そこには肉親に対する無償の愛情を感じます。レアの娘たちが徐々にジュリエットおばさんになついていくに従って、最初は「いつまで居るんだ」と批判的だったレアの夫リュック(セルジュ・アザナヴィシウス)も彼女を家族と認めるようになるのですが、彼女がゆっくりと心を開いていくのと、家族がゆっくり彼女を受け入れる、この心の距離感の接近模様の描き方がまた絶妙なのでした。クローデル監督は本当に微妙な心の変化を決してあせらず端折らず丁寧に描いています。

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レアの同僚であるミシェル(ロラン・グレヴィル)は友人たちの中で唯一彼女の気持ちを理解している人でした。そして、2週間に一度の報告で会うフォレ警部(フレデリック・ピエロ)もまた、警官という立場でありながら同じく彼女の良き理解者です。表向きは彼らや家族との間には笑顔も生まれ、順調に社会復帰を果たしているかに見えますが、彼女の心が抱える深い哀しみ、誰にも言えない心の闇は相変わらずで、その哀しみや闇は折に触れて彼女の精神を蝕むのでした。彼女はミシェルに言います「出所の日が告げられてから、その日までが一番辛かった。」と。彼女にとっては刑務所にいたほうが楽だったのでそう。彼女をこれほどまでに苦しめるものは一体何なのか…。それはひょんなことから判明するのでした。

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(ここからネタバレ含む)
ショックでした。この作品、単に息子を殺してしまった母親の再生を描いた物語ではなかったのでした。実は彼女の息子は病気で死を待つのみだったのです。それは具体的には語られませんが、彼女の表情からは、相当な苦しみが息子を襲っていたと想像できます。手の打ちようが無い状況で、息子をこの苦しみから解放する方法は唯一つしかありませんでした。そしてそれは実の母親である彼女にしか出来ないこと………即ち安楽死です。母親にとってあまりにも惨い選択。結局彼女は、自分が責めを負っても、息子をこのまま苦しませ続けて死なせることは出来なかった……真相はそういうことなのでした。

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何でそれを言わなかったの?というレアの問いに「釈明は口実よ。そして死に口実はないわ。」そう答えるジュリエット。形はどうあれ、そこにどんな理由があれ、息子を殺したのが自分であるという事実は変わらない、それこそが彼女が心の奥底に溜め込んでいた深い哀しみであり、心の闇の正体でした。あまりにやりきれなく切ない事実に呆然とし、ただ涙が流れるのみです…。救いだったのは彼女が最後にきちんと自分の居場所を見出してくれたこと。「私はここにいるわ。」最後にそう言った彼女の笑顔は、これまでで見せたどんな表情より素敵な笑顔でした。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:クリスティんの圧倒的な演技に魅せられます

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6歳の息子を殺害した理由を裁判でも語らないまま15年の刑期を終えたジュリエットは、歳の離れた妹・レアの家に身を寄せる。 フランスのナンシーで暮らすレアは結婚していたが実子はなく、ベトナムから2人の養女を迎えていた。 孤独の中に閉じこもりながらも少しずつ自分の居場所を見出してゆくジュリエット。 彼女はなぜ愛する息子を手にかけたのか…? 愛と再生のヒューマンドラマ。... [続きを読む]

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世界各国で高い評価を受けた人間ドラマです。 ある事件を起こした女性を主人公に、主人公の負った心の傷の大きさと、 彼女を包むように愛する妹の愛情の深さに胸が打たれました。 [続きを読む]

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» ずっとあなたを愛してる /IL Y A LONGTEMPS QUE JE T'AIME [我想一個人映画美的女人blog]
{/hikari_blue/}{/heratss_blue/}ランキングクリックしてね{/heratss_blue/}{/hikari_blue/} ←please click 2009年最後の劇場鑑賞はこちら。 と思ったけど最後にマイケル「THIS Is IT」(3度目)で締めにしちゃった 数々の賞を受賞しているので、期待が大き過ぎたかも。 初めから最後まで淡々としていてストーリーはゆっくりと丁寧に、、、。 息子を殺した罪で15年の刑期を終えた母。 このタイトルからもサスペンスではないっ... [続きを読む]

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受信: 2010年2月17日 (水) 17時58分

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赦されるための告白ではなかった。 わが子を手にかけた真の理由を明かす時、姉妹は家族としての深い絆を知る。 支えあう人がいることの幸せと、それを愛する安らかな気持ちを。 『ずっとあなたを愛してる』 Il y a longtemps que je t'aime 2008年/フランス・ドイツ/1... [続きを読む]

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» ずっとあなたを愛してる◆IL Y A LONGTEMPS QUE JE T'AIME [銅版画制作の日々]
 私は、ここにいる。 15年の刑期を終えたジュリエット。悲しみに沈む彼女の過去に犯した罪と罰、そして赦し。人間の心の深淵に迫る、愛と再生の物語。 京都シネマにて鑑賞。数々の賞を受賞した作品です。かなり気になっていたのですが、上手く時間が合わず。。。。遅まきながらようやく鑑賞して来ました。う〜ん。何か微妙ですね。どうもこの作品の流れに今一つ乗れない。テンポも私にはどうも合わない感じです。ジュリエットのキャラも私的には好感のもてるものではありませんでした。 途中zzzz状態になってしまい(汗)この... [続きを読む]

受信: 2010年3月28日 (日) 22時49分

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受信: 2010年4月 6日 (火) 23時03分

» ずっとあなたを愛している■謎から謎へと見事な展開 [映画と出会う・世界が変わる]
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受信: 2010年4月10日 (土) 00時22分

» ずっとあなたを愛してる [『映画評価”お前、僕に釣られてみる?”』七海見理オフィシャルブログ Powered by Ameba]
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【IL Y A LONGTEMPS QUE JE T'AIME/I'VE LOVED YOU SO LONG】2009/12/26公開 フランス 117分監督:フィリップ・クローデル出演:クリスティン・スコット・トーマス、エルザ・ジルベルスタイン、セルジュ・アザナヴィシウス、ロラン・グレヴィル、フレデリック・ピエロ、リズ....... [続きを読む]

受信: 2010年9月28日 (火) 12時47分

» ずっとあなたを愛してる [こんな映画見ました〜]
『ずっとあなたを愛してる』---IL Y A LONGTEMPS QUE JE TAIME  IVE LOVED YOU SO LONG---2008年(フランス)監督:フィリップ・クローデル出演: クリスティン・スコット・トーマス、エルザ・ジルベルスタイン、セルジュ・アザナヴィシウス 、ロ...... [続きを読む]

受信: 2011年1月15日 (土) 23時43分

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受信: 2011年3月21日 (月) 10時42分

» 映画評「ずっとあなたを愛してる」 [プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]]
☆☆☆☆(8点/10点満点中) 2008年フランス映画 監督フィリップ・クローデル ネタバレあり [続きを読む]

受信: 2011年6月22日 (水) 10時58分

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