スモーク
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巧みな演出と魅せる脚本に惹かれる |
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とても気に入った『バグダッド・カフェ ニューディレクターズ・カット版』。そこでコメントを残してくださったブロガーさんがタイトルを挙げておられたのがこの『スモーク』。「バグダッド・カフェ」が相当気に入っただけにお正月休みに観ようと狙っていたのでした。う~ん、何ともいえないこの雰囲気が凄くいい!いや、大きな感動って程ではないのです。別に号泣できる訳でもないですし。ただ登場する男たちの人生模様が哀しくもあり格好良くもありで、特に主人公の一人であるタバコ屋・オーギー(ハーウェウィ・カイテル)と小説家・ポール(ウィリアム・ハート)の人間臭い芝居が一際気に入りました。


スモークはSMOKEで即ちタバコ。私は3年前にきっぱり禁煙したんですが、この作品は全てのシーンで誰かが必ずタバコすってるんじゃないかって位。これがまた旨そうに、そしてカッコ良く吸うんですよ。思わず心が揺さぶられました。(もちろん吸いませんでしたけど。)物語は4人の男たち、オーギー、ポール、ラシード(ハロルド・ペリノー・Jr)、サイラス(フォレスト・ウィッテカー)のそれぞれが抱えた問題と4人の人間関係が巧み交差しながら進んでいくんですね。中でもメインとなるのがオーギーとポール。ポールは7年前に事故で奥さんとお腹の中にいた子供を失ったショックから立ち直れずにいます。


見所の一つとしてあげたいのが、このポールにオーギーが写真を見せるシーン。実はオーギーは4000日間、毎日同じ時間に自分の店の前で写真を撮り続けていたのでした。延々と同じ構図が並ぶ写真をポールに見せるんですが、さらっと観ようとするポールにオーギーは言うんです。「ゆっくり観なきゃダメだ。」「どうして?」「ちゃんと写真を見てないだろ?」「でも、皆同じだ」「同じようで1枚1枚全部違う。」そう、確かに違うんです、そしてその写真の中にポールが見つけたのは、愛する妻エレンの姿でした。毎日毎日違う写真は、過ぎ去って行った日々の記録であり、時はゆっくりとしかし確実に流れていく。


オーギーならではの友への励ましを街角のモノクロ写真で見せるこのシーン、悲しみと優しさが入り混じった不思議な感覚が心を充たします。その甲斐あってか、ポールは再び小説を書き始めるのでした。物語はこの後、立ち直ったポールと黒人少年ラシードとの出会い、そしてラシードと父・サイラスとの邂逅、更にはオーギーとその娘との初顔合わせへと進んでいきます。悲嘆にくれた人生を送っていたポールが、ラシードのことを懸命に考え彼のために一肌脱ぐ様子は実は物語の最後に語られる「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」に繋がるものでした。


オーギーの語り始める、クリスマスの夜の心温まる話。スーパースローズームでオーギーにズームインしていく撮り方は、まさにオーギーの微妙な表情をそのまま見せてくれました。これは淡々と語り続ける中でハーヴェイ・カイテルがオーギーの心情を伝えてくれる名演技でありまたウェイン・ワン監督の名演出と言えるでしょう。やがて語るオーギーの口元のアップ、そして聞くポールの目のアップ。何と大胆なカット割り!この後、今オーギーによって語られた話をモノクロで見せてくれるのですが、モノクロ部分だけでなくこの一連のシークエンス全部がもう一つの見所なのは間違いありません。噂に違わぬ素晴らしい作品でした。
個人的おススメ度4.0
今日の一言:続編『ブルー・イン・ザ・フェイス』も観てみよう♪
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