すべては海になる
『時効警察』の脚本家・山田あかねが自身で脚本を書き、初監督を務めたヒューマンドラマだ。崩壊した家庭に暮らしながらも本を支えに生きてきた高校生と、かつて本に救われた女性書店員がひょんなことから知り合い、お互いの距離を縮めていく。主演は『秋深き』の佐藤江梨子と『戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH』の柳楽優弥。競演に要潤、松重豊が出演している。 |
訴えたいことが解らない。 |
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ブロガーの間でも評判の高い『時効警察』の脚本家、山田あかねの初監督作品ということで観てきました。本作には千野夏樹(佐藤江梨子)と大高光治(柳楽優弥)という2人の主人公が登場します。通常この手の物語は、この2人の主人公の最低でもどちらかには共感を抱く、あるいは反感を抱きつつ鑑賞するものですが、残念ながら私には彼ら2人の考え方が理解できず、それゆえに極めて傍観者的な観方に終始してしまったように思います。そのせいか、ストーリー自体も淡々とした起伏に乏しいものに感じてしまいました。
夏樹は高校時代に援交少女でした。この世代の少女にありがちな、自分の生き方を見失っていた状態です。そんな彼女が本に出会ったことで、そのまま本好きになり書店員に。彼女は「愛のわからないひとへ」というコーナーを担当していることからも解るように、一見すると愛に迷う弱い女性に見えますが、私の受けた印象はちょっと違っていました。夏樹の書くポップに惹かれて彼女を食事に誘う出版社の鹿島慶太(要潤)。夏樹は彼に誘われるがままに体を許します。特に好きな訳でもないのになぜ?その答えは彼女の生き方そのものであり、ある意味彼女は相当にしたたかだと思うのです。
そんな彼女の担当コーナーから1冊の本が万引きされる事件が起こり、その疑いをかけられたのが大高光治の母親。これがきっかけで、夏樹と光治に接点ができ、以後徐々にその距離感を縮めて行きます。光治は一見して本好きの大人しい学生で、案の定クラスでいじめの対象となってしまいます。ところが彼が普通のいじめられっ子と違うのは、いじめに対して反撃し、不登校になったりしないところ。本と共にそんな彼の支えになっていたのは夏樹でした。ここがいまひとつ理解しにくいのですが、光治は明らかに夏樹に好意を抱いていますが、それは恋愛感情とはまた違うように伝わってくるのです。
物語終盤、家庭にも学校にも逃げ場のない光治の苦しみは増し、それを癒すために、夏樹は彼をベッドに誘います。セックスで癒される事だってある…。彼女は昔からこうして生きてきたのでしょう。人間誰しも自分を必要としてくれる人が欲しいものです。夏樹にとってはそれがある時は鹿島であり、ある時は光治でもある。だからこそ彼女は好きでもないのに鹿島に求められるままに抱かれてきたのではないか…。故に先に書いた通り、私は彼女のことを実はしたたかで強い女性だと思うのです。もちろんそれが良いとか悪いではなく。
ちなみに劇中の佐藤江梨子は何度か要潤とのベッドシーンがありますが、毎度毎度キャミソールを着たままというのはどうも不自然。光治を誘うシーンではブラとパンティーのみという姿になり、素晴らしく美しいそのスタイルを披露してくれるのですから、それなら手抜きのようなベッドシーンでなく、綺麗に見えるようなベッドシーンにして欲しかったと思います。演技自体もわざと抑え目にしていたのでしょうか、決して下手だとは思いませんが、どうも彼女の感情が読み取りにくく、それもあってすべてに泰然自若としているような印象に映ります。
またもう一方の主人公役の柳楽優弥ですが、どうも滑舌が悪いというか…。普段の彼を知っているわけではないのですが、いつもあんな口調なのか…。表情や台詞の間の取り方、感情表現の仕方などは素晴らしく上手いので、むしろそのしゃべり方との違和感が最後までぬぐえませんでした。さて、総じて言うと、観終わって感じたのは「結局何だったんだろう?」ということ。作品が訴えたかったテーマが私には理解できなかったようです。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:何かすっきりしない…
総合評価:57点
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