ユキとニナ
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まさに天使のようなユキとニナ♪ |
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とにかくユキ(ノエ・サンピ)とニナ(アリエル・ムーテム)が可愛らしいことこの上ない!劇中の設定と同じくノエちゃんは日本人とフランス人のハーフ。諏訪監督がルノワールの絵から抜け出てきたようだと絶賛しただけあって、まだ9才ながらも名女優の雰囲気を漂わせます。物語はこの2人を中心に描かれていくのですが、諏訪監督の手法として脚本は一応あるものの基本的にはその場その場の即興演出、細かい演技やセリフの言い回しは現場で決まります。それだけに、日本人の子役が見せる変に仕込まれたような演技ではなく、リアルで繊細な少女の姿がそこにはありました。


ユキとニナは大の親友、2人はいつも一緒に遊んでいます。ニナの家族は両親が離婚し母親カミーユ(マリリン・カント)だけ。ところがある日、ユキにも同じ状況が。母ジュン(ツユ)と父フレデリック(イポリット・ジラルド)が離婚し、ユキはジュンと共に日本に行くように言われます。知らない土地への不安、両親が分かれて欲しくないという子供なら当然の想いからユキは日本行きを嫌がります。面白かったのがこのことについて話すときのユキとニナとカミーユのシーン。カミーユは自分の経験にてらして2人に、どうして離婚をしたのかを話します。


しかし、納得いかないニナは机をバンバン叩きながら、母親にお互いの間にある問題を解決しようとしたのかと問い詰めるのでした。もとより二ナに意見は子供の意見であり、どうにも手段がないから離婚したのは言うまでもありません。ですが、こんなところにも、フランス人が幼い頃からきっちりと自分の意見を主張するように育てられているのだと感じられました。もっとも怒るニナはそれはそれでまたとてもおませさんで可愛らしいのですけどね。そんなちょっと大人びたシーンを挟みながら次のシーンでは反対にとても子供らしいシーンを展開してくれるのが嬉しいところです。


ユキとニナはユキの両親の離婚を思い止まらせるために一思案…。愛の妖精から離婚しないように言ってもらおうと思い立ちます。もちろんそんなものが実在する訳はなく、ユキが愛の妖精の名前で手紙を書き、2人でそれに飾り付けをしてポストに投函するのですが、仲良く楽しそうにデコレーションしている様子は、当たり前ながら事の本質を理解し切っていない少女たちであり、その無邪気な心には思わず笑顔がこぼれてしまいました。ポストに拍手をするユキの姿には会場から笑い声が。数日後、その手紙をジュンが受け取るシーンは本作で一番切なく、しかし私が一番好きなシーンです。


当然ジュンには誰が出したのかは一目瞭然。子供部屋からジュンの様子をチラチラとのぞくユキの顔は子供らしい期待感でいっぱいの表情です。ユキをテーブルに呼び、ジュンが手紙を読みながら号泣してしまう場面はユキたちの無邪気な願いを知っている私も涙腺決壊。ただそんな場でもユキだけはちょっと驚いたような表情でニコニコしながら、どうしたらよいのか解らない表情を浮かべているのが印象的でした。このあたりは登場人物の自然で素直な心情が垣間見える即興演出の良いところだと思います。ユキの「悲しくなるのに別れるの?」という問いに「今のままだともっと悲しいの。」と諭すように答えるジュン。


結局とりあえずジュンは一人で帰国します。このあたりの描写はないので良く解りませんが、恐らく本格帰国の準備のための一時帰国なのでしょう。ジュンがいない間に父フレデリックがユキが日本に行くように説得するのはちょっと意外でした。日本だとどちらが親権をとるのかの争いになりそうですし。悩むユキは、ちょうど母とケンカをして家出してきたニナとともに自分も家出します。森の中で迷子になるシーンでは当初ユキが泣き出す予定にしてあったのが、ノエちゃんの「私は泣きたくない。」という強い希望でその後の展開を変更させたのだとか。


ちょっと不思議なこの森の中のシーンは、ある種ファンタジックでもあり賛否が別れるシーンだと思いますが、ユキに日本行きを決意させるファクターとなる重要なシーンでもあります。私は全く許容範囲ですけど。何故なら森を通して日本の原風景と繋がるところにこの作品が日仏合作であり、ユキが日本とフランスのハーフであり、両方の国の心を大切にしたい想いが感じられたから。子供らしい繊細で自然な感情や表情、仕草を丁寧に描写している作品だけに、見ている方はとにかく見守ってあげたいという気持ちにさせられるでしょう。爽やかな後味が残った作品でした。
個人的おススメ度4.0
今日の一言:ノエとアリエルの10年後が楽しみです。
総合評価:74点
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